第86話 対グランドベア

 体長は三メートル程だけど、立ち上がったその姿はより数倍にも大きく感じるくらいに迫力がある。


 セーラちゃんが先に飛び出し、グランドベアの注意を引く。


 近づいて来たセーラちゃんに向かって前脚を叩きつけるが、彼女の素早い動きに空を斬り地面を叩きつけて大きな音がなる。


 音の重さからグランドベアの一撃がどれくらい重いのかがわかる。


 セーラちゃんが横からの攻撃を開始し、アリサさんが矢を放ち始める。


 グランドベアは雄たけびを上げながら一心不乱に周りのセーラちゃんと矢を払うかのように暴れはじめる。



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 個体名:グランドベア

 種 族:Bランク魔物

 弱 点:火


 体 力HP:B


 筋力:A+ 耐久:A

 速度:C  耐性:C-


 スキル:

〖帝王の一撃〗〖筋力上昇・上級〗

〖耐久上昇・上級〗〖怯み耐性〗

〖毒耐性〗〖麻痺耐性〗〖気絶耐性〗

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「みんな! 強力な攻撃スキルを持っていそう! 気を付けて!」


「「了解!」」


 暴れ回るグランドベアを器用に避けながら攻撃を続けるセーラちゃんとアリサさん。


 セーラちゃんは慣れないはずの大剣を自由自在に使い、どんどん傷を増やしていく。


 今まで速度による戦闘が得意だと思っていたセーラちゃんだったけど、彼女の得意は器用さなのかもしれないと思えるくらい大剣を自由自在に操る。


 周りの木々に阻まれることなく、まるで体の一部かのように大剣を振り回す。


 彼女の剣戟の合間をついてアリサさんの矢による攻撃が的確に命中してグランドベアの集中をかき乱す。


 次の瞬間、グランドベアの両手に禍々しい気があふれ始める。


 着地と同時にセーラちゃんは持っていた大剣を船のかいのようにして反動で後方に大きく飛び上がった。


 グランドベアの両手から溢れた禍々しい気と共に地面を叩き込む。


 先に強烈な風圧が周囲に広がり爆発が周囲を飲み込んだ。


 爆発が落ち着く頃、アリサさんが弓を構える。


 周りの風がゆっくりとアリサさんに集まり始める。


「――――風神の矢!」


 鮮やかな翡翠色の魔法の矢が現れる。


 アリサさんが矢を放つと同時に、周囲の風を引っ張るかのように放たれた矢は爆発ごと貫いていく。


 真っ赤な爆発の間に空洞ができ、貫いた先にはグランドベアの腹にも大きな空洞ができていた。


 爆風が静まり、その場には胸に大きな穴が空いたグランドベアの亡骸が倒れていた。


 グランドベアを異空間収納で回収して、二人と勝利の余韻に浸る直前、森の奥からまた強力な気配がして、もう一体のグランドベアが現れた。


「今度は僕が相手するよ!」


 すぐに炎帝モードになり、グランドベアと対峙する。


 先に立ち上がっている後ろ脚を全力で蹴り飛ばす。


 炎帝モードがより強くなったようで、グランドベアが一切反応できずに僕の蹴りを喰らうと、骨が折れる音と共にその場に倒れ込んだ。


 続いて余裕を与えないように炎の剣を作りグランドベアの首を落とす。


 意外なことに、一撃で倒せることができた。


「それが新しい炎帝モードというものなの?」


「うん。昔は一日一度しか使えなかったけど、今は解除しても再発動できるし、三十分も使えるようになったよ」


 レジェンドスキル『火竜の心臓』のおかげで炎帝を使える時間を気にしなくてもよくなったのはありがたい。


「それにしても全身が炎になるなんて最初見た時はびっくりしたな~」


「あはは……あの時は咄嗟とっさに体が動いてしまったね」


「あの時は助けてくれてありがとうね。ユウくん」


 学園にいた頃からそう時間は経っていないけど、聖都襲撃事件から色んなことがあり過ぎて懐かしくも感じる。


「それにしてもグランドベアを二頭も討伐できるとはね」


「もっと倒していく? ここら辺だと、あと二十頭はいるみたいだけど」


「そうね。セーラちゃんがいけるならもう少し倒そうかな?」


 アリサさんとセーラちゃんもまだまだ戦い足りないようで、グランドベアをもう数体倒すことになった。


 日が変わる前に狩りを終えて森を後にして首都に戻っていった。

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