第85話 武器慣らし
ジパング国の首都の冒険者ギルド。
その広さは聖都のギルドよりも広く、大勢の人々が溢れていた。
「ジパング国って別名『素材の国』とも言ってね。冒険者に一番人気のある国なんだ。以前なら人族も多かったけど、いないみたいだね」
戦争中なのはみんなが知っているので、白昼堂々人族が歩けないのも頷ける。
「あっ! 英雄殿だ!」
受付嬢が僕を指差して大声をあげると、ギルド中の人々が僕に注目する。
あはは……嬉しいけど、こういう視線にはまだ慣れないね。
受付嬢のところに向かう。
「こんにちは。ユウマといいます。冒険者として暫く仕事をもらいたいんです」
「いらっしゃいませ。噂はかねがね聞いております。これから当店をよろしくお願いします」
「はい」
プレートを渡して登録を済ませる。この街でプレートを使えば勝手に登録になるのだが、こうして足を運ぶことで、この街でやっていくという証明にもなる。
挨拶も終わったので依頼書が掲げられている掲示板から受けたい依頼を探す。
プリムさんはセーラちゃんと共にテーブルに座って飲み物を飲みながら周囲を見回して楽しんでいる。
「アリサさん。どういう依頼がいいかな?」
「私は弓を使いたいし、セーラちゃんも大剣を試したいだろうから、大きな魔物がいいかな~これとかいいんじゃない?」
「どれどれ…………え!? Bランク魔物!?」
「グランドベア。Bランク魔物では最弱だからね。大丈夫だと思う」
アリサさんがそう言うなら……いいのかな?
まだCランク冒険者の僕が受けられるかは分からないけど、メンバーが強いのを説明すれば何とかなりそうだ。
それにしてもアリサさんもセーラちゃんもどうして冒険者にならないのだろうか?
依頼書を持って登録を終わらせる。
受付嬢は何も言わず通してくれた。
ギルドで飲み物を堪能しながら賑わいを眺める。
向かう場所を話し合ったり、臨時パーティーの相談の声だったり、普段聞けない会話がたくさん聞こえてくるので聞いているだけで楽しい。
聖都のギルドは冷静な冒険者が多かったけど、ここは熱血冒険者が多い雰囲気だ。
ちょいちょい挨拶してくれる冒険者さんもいて、距離感もとても近く感じた。
プリムさんをお城に送った後、僕達は再度街に戻り、馬車乗り場から馬車に乗って次に向かう馬車に乗り込んだ。
途中でブライガン森の近くを通るんだけど、本日の目的地がここになっている。
馬車の途中で降りて森に向かった。
「ここの奥にグランドベアが生息しているのね」
Bランク魔物といえば、僕が村を後にして一番最初に倒した鹿角牛の魔物と同じランクだ。
いつでも〖炎帝〗を使えるようにしておこう。
木々は歩きやすい間隔で生えていて、歩くのもそう大変ではない。
周りからは魔物の気配が多い。きっと生息している魔物が多いんだろう。
「魔物多いわね」
矢のない弓の弦を引っ張ると魔法の矢が現れる。
アリサさんが引っ張った弦を離すと、矢が木々の間を通り抜けていく。
視界では捉えられないくらい遠くに飛んでいく。
次々矢を色んな場所に放ち続けたアリサさんは嬉しそうに弓を眺める。
「この弓、本当に凄いわね。エルフの里の弓よりも遥かに性能がよくて、魔法も馴染みやすい……これか商人の国の最高峰の弓なのね」
「アリサちゃん~魔物が遠くて素材が取れないよ?」
「うっ! そ、それもそうね。今後は気を付けるわ」
「ふふっ。でも飛距離は伸びた感じなのね?」
「そうね。以前使っていた弓よりは二倍くらいかな?」
元々遠くの的を狙えるアリサさんの飛距離がさらに増えるなら凄い。
「次はセーラちゃんの番だね」
「私もワクワクする~!」
背中に掛けられている大剣が見える。今までの長剣なら腰に掛けているけど、それよりも刀身が長い大剣は腰では掛けられないからね。
深部に向かって歩いていくと、また魔物の気配がして視界に鋭い牙を持つ狼が見えた。
「今度は私の番~!」
背中の大剣を器用に抜いたセーラちゃんから今まで以上の迫力を感じる。
威嚇した狼魔物がこちらに向かって猛スピードで走ってくる。
周囲には木々があって大剣を満足に振り回すことは難しそうなのに、セーラちゃんは流れるように縦による剣戟が煌めく。
一瞬で狼魔物が半分になって倒れた。
「ユウくん~収納をお願い~」
「わかった」
狼魔物を倒しながら森の奥に進んでいく。
少しずつ強くなっていく魔物は、DランクからCランク魔物がそれなりに多かった。
そして――――俺達の前に巨大な気配を持つ魔物、グランドベアが姿を現した。
「Bランク魔物というだけあって凄まじいわね……!」
「相手に取って不足なし!」
「みんな、油断はしないようにね!」
「「うん!」」
アリサさんとセーラちゃんがグランドベアと対峙した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます