第83話 英雄

「誰か近づいてくる」


 僕の〖探索〗でこちらの部屋に向かってくる複数の兵士さんが見える。その中に殿下と一緒にいたセレナティア将軍がいる。


「中に女性将軍さんもいるよ。でも敵意は持っていないみたい」


 僕の言葉にみんな安堵の息を吐いた。


「セーラちゃんたちは先生をお願い」


「うん!」


 扉にノックの音が聞こえて「どうぞ」と答えると扉が開いてセレナティア将軍が入ってきた。


「お待たせして大変申し訳ありません」


 入ってすぐに頭を下げて謝罪する。


 まさかの出来事にポカーンとする僕たちを見て苦笑いを浮かべた。


「警戒されていても仕方ありません。正直に言いましょう。私達は貴方達を警戒しておりました。ですからこういう物々しい雰囲気になったことお詫びいたします」


「い、いえ。その……どうしてか聞いても?」


「詳しくはこれから向かう陛下のところで説明しますが、簡潔に話すと現在ジパング国は――――人族と戦争状態になっております」


「「「戦争状態!?」」」


「ええ。詳しくは向こうで」


「ユウ。私、ここ、残る」


「ステラさん。わかった。フェン先生をお願いね」


 ステラさんが親指を立てる。魔法以外は興味ないからだと思うけど、フェン先生を見守ってくれると安心だ。


 僕とアリサさん、セーラちゃんと共に王様が待っている執務室に向かった。




 ◆




「初めまして。セーラと申します」


「ユウマです」


「アリサと申します」


 王様にそれぞれ挨拶をする。


 豪華な机の向こうに座っているのは、僕が知っているドワーフそのもので身長は小さいが筋肉ムキムキで威厳のある顔と髭が立派だ。


「ようこそ。ジパング国へ。儂はジパング国の国王エラメス・ドゥ・ジパングという。亜人を代表して教皇様を救ってくれたことを感謝する」


 プリムさんもエルフ族だから亜人族だ。亜人族同士の絆を感じる。


「セレナティア将軍から簡潔に聞いたのですが、現状を教えて頂けませんか?」


「それに関しては俺が話そう」


 ラインハルト殿下が声をあげた。


 それにしても王様と王太子殿下が随分と似てないのが気になる。


 王様はドワーフらしいドワーフだし、王太子殿下はどちらかというと人族に似ている。


「勇者パーティーがユグランドを攻めたのは知っているな? あれで帝国とユグランドが戦争になったのだが、その理由は聖剣を渡さないエルフ族は女神に反したから攻めるという理由だった。だが、その一番の理由はユグランドの追放された王子を仲間にしていたから身柄を交換する交渉が決裂したからだ」


 ユグランドの追放された王子というのは、アリサさんのお兄さんだ。


「そこで我々ジパング国としては勇者パーティーに正義がないとし、ユグランド側に付くことにしたのだ。現在も我々連合軍と帝国が戦争を繰り広げている。そこで現れたのが其方たちだ。現在我が国では人族に対する敵対心が深まっている。だから申し訳ないが事情を聞くまで警戒してもらった。この場を借りて首都を守ってくれた恩人にすべきことではなかった。謝罪させてもらいたい。すまなかった」


 王太子様と共に王様までもが頭を下げる。


 お二人とも高い身分なのに、僕なんかに頭を下げるのは最大の謝罪なことくらい僕でも知っている。


「頭を上げてください! 誤解が解けたのならそれでいいです!」


「ありがとう。首都を守ってくれた褒美は最大限支払うと約束しよう」


 報酬が欲しくてやった訳ではないけど、プリムさんが笑顔で首を縦に振ったので「謹んでお受けいたします」と応えた。


 それからの動きは非常に早く、僕達はそれぞれ部屋を与えられ首都への滞在も許可された。


 本来なら迷惑にかかるかも知れないので街に降りたかったけど、人族が首都でウロウロすると何をされるか分からないので王城で過ごすように言われた。


 ジパング国の王城はとても綺麗で、広い庭園もあって散歩しがいのある場所も多かった。


 出される料理はどれも初めて味わう料理だけど、どれも美味しくて僕はとても好きだった。けど、アリスさんには少し辛かったようで、顔を真っ赤に染めているところが可愛かった。


 暫く王城に滞在している間、王様が首都中に僕達のことを触れ回ってくれたらしく、数日後には首都内を歩けるようになった。


 ようやく首都の街を歩けるようになったので、僕達は早速街に出ることにした。


 王城から続く大通りを歩いてアリスさんとセーラちゃん、プリムさんと四人で歩いてとある場所に向かう。


 その時、僕達を見つけた住民たちから「ありがとう~!」と声を掛けられる。


 広がっていた家々から僕達を覗く人々がいて、みんな口を揃えて「ありがとう!」と声をあげてくれる。


 中には花びらを投げてくれた人達もいて、とても嬉しい気持ちになった

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