第79話 首都エンハーレスの前にて
大通りを荷馬車で堂々と進む。
二日間荷馬車を走らせると、ジパング国の聖国側の街に辿り着いた。
この街は貿易街ので商業国ジパングと聖国を結ぶ最大級の街だ。
街の玄関口で衛兵さんがこちらを見つめる。
「こんにちは。聖都から商売の護衛で来ました」
僕の冒険者プレートを見せる。
「Cランク!?」
「どうも」
「ど、どうぞ!」
冒険者ギルドで言われた通り、Cランクのプレートだけで通してくれる。それくらいCランクが重宝されている証拠だ。
「ユウ。冒険者、よかった」
「そうだね。本当によかった。このまま一度宿屋に向かおう」
「あい」
大通りは馬車が通りやすくしているし、無理に横切る人もいない。商人が多い国だからなのか、みんなが商人に対する理解があるようだ。
スキル〖探索〗を使って宿屋っぽい場所を探す。
やってきたのは、荷馬車が止められそうな宿屋だ。
「ここに泊まろう」
プリムさんにはセーラちゃんが、フェン先生にはアリサさんが付いている。
僕とステラさんで宿屋に入り、契約を結ぶ。お金は問題ないし、Cランク冒険者のプレートを提示するとかなり安めに借りることができた。
すぐに戻り、今度はフェン先生をおぶって部屋に向かう。
僕の回復魔法で毒は回復したけど、体力までは戻っていない。マシューが使った毒は、もし治ったとしてもすぐに体力が戻らない毒だったらしい。なのでフェン先生は暫く戦えない。
ジパング国に入っているので聖騎士たちは追いかけてはこないが、エルフ族は誰かに狙われているかも知れない。
アリサさんはもこもこしたニット帽を被って、耳を塞いでいる。幸い、ジパング国は涼しい国なので違和感はない。
フェン先生はすぐに部屋のベッドで休息を取らせて、セーラちゃん、アリサさん、プリムさんを見守ることになる。部屋は一つしか借りてない。
僕とステラさんは一度宿屋を後にして、街を歩いた。
聖都とはまた違う賑わいに少し胸が躍る。
市場に向かって、何か買えるものはないかステラさんと見回る。
目ぼしいものをちょいちょい購入しながら、次々市場を歩き進めた。
その日は貿易街で一晩を過ごした。
特に問題のないまま貿易街を後にして、また荷馬車に揺られてジパング国の首都を目指す。
道中弱い魔物が現れたけど、アリスさんの精霊で簡単に倒していった。
そんな荷馬車旅もさらに十日続き、いくつかの町を経由しながら僕達はやがてジパング国の首都エンハーレスが見えた。
「大きい~!」
遥か遠くからでも分かる程に、聖都にも負けないくらい巨大な都市だ。
円形の壁の聖都に比べて、首都エンハーレスは四角の形をした都市だ。壁も聖都の白とは違い赤色で統一されている。
首都を目指して向かったその時、空の遠くから強烈な存在感を感じられた。
「!? あそこから何か飛んでくる!」
空の彼方に何かが首都を目掛けて飛んでくるのが見える。それと共に首都から緊急を知らせる鐘の音が響き渡った。
「あれは――――Sランク魔物!?」
プリムさんが目を細めて声をあげた。
Sランク魔物は、全ての魔物の中でも災害級と位置付けられ、非常に強力で危険な魔物だ。Sランク魔物となれば、街どころか国が危険になるレベルだ。
「どうして街の近くにそんな魔物が!?」
「聖都と違って街を守る結界が存在しないからね。Sランク魔物は現在六体存在しているわ。その一つ――――炎竜フレイムタイラント。空を飛ぶ災厄の支配者よ」
二つ名だけでその魔物がどれだけ危険なのかが分かる。
「いくら首都に結界がなくたって、Sランク魔物がこんな近くに来るなんて何かおかしいわ。それはひとまずいいとして、フェンが寝込んでいるからかなり厳しいわね」
フェン先生は未だ体力が戻らずに寝込んでいる。意識は戻っていて会話はできるけど、とても戦える状況ではない。
「フェン先生。プリムさん。――――――僕が出ます」
「ユウくん!」「ユウマ!?」
「大丈夫。プリムさんが言っていた通り炎竜フレイムタイラントなら、僕はとても
すぐに僕の両手を握ったアリスさんとセーラちゃんは、僕の話を聞いて何とか手を離してくれた。
「ユウマ……わりぃな……」
「いえ。フェン先生に守ってもらった命ですから。それに…………もう出来の悪い弟子と言われたくないですから。行ってきます」
「ユウマくん! 待って!」
プリムさんは僕の元に来て、すぐに炎竜フレイムタイラントのことを手短に教えてくれた。
炎竜フレイムタイラントは遥か遠くの空だったのにも関わらず、とんでもない速度で首都を目掛けて飛んでくる。
次の瞬間、首都から大きな音が響き渡った。
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