第70話 告白……?(三人称視点あり)

「セーラちゃん!?」


 ど、ど、どうしよう!? 今の声が聞こえてしまってたらどうしよう!?


「じゃ、邪魔してしまってごめんね? アリサちゃんも……」


「ん? 私は気にしてないわよ? もし私が邪魔なら二人で話してくれてもいいのよ」


「そこまではしなくて大丈夫! え、えっと、何か誤解があったようだからそれを伝えに来ただけだから……」


「そう。じゃあ、こちらにいらっしゃい」


 僕とアリサさんが座っているベンチにやってきたセーラちゃんが座り込む。


 どうしてアリサさんの隣じゃなくて僕の隣に!?


「ね、ねえ。ユウくん。アリサちゃん」


「うん?」


「私とガイルくんの関係なんだけど……」


 セーラちゃんからその事が出ると思わず、心臓が跳ね上がる。


「せ、セーラちゃんはとても素敵な女性だと思うんだ! で、でもちゃんと恋人を大切にしないとダメだよ! 僕なんか大したことないのに変な誤解してしまってガイルくんを怒らせてしまったのなら僕から謝るから!」


「ゆ、ユウくん! お、落ち着いて!」


「は、はい!」


 セーラちゃんとガイルくんを困らせたくはない。僕にできることならなんでも頑張ろう。ちゃんと謝ろう。


「あのね? それ…………誤解なの」


「へ?」「ん?」


「だから、誤解なの! 私とガイルくんは付き合ってなんてないわよ!」


「ええええ!?」


 思わずその場で立ち上がってしまった。二人は恋仲では……ない!?


 その時、後ろから呆れたような声が聞こえてきた。


「こらこら、勝手に俺の恋人を決めつけるなっ。バカユウマ」


「ガイルくん!?」


「はあ~頼むから変な噂を流さないでくれ。俺に恋人ができたなんて噂が流れたら――――結構大変なことになってしまうから」


 呆れた口調で続けたガイルくんが、拳をあげて僕の頭を優しく叩いた。


「分かったか?」


「えっ!?」


「えっ。じゃないって。はあ…………言っておくけど、本当に俺とセーラの間には恋仲とかないから。そもそもな。俺には――――婚約者がいるんだ。恋人なんて作る訳ないだろ」


「ええええ!?」


「それに婚約者のことは今でも好きだし、学園を卒業したら正式にプロポーズしたいとも思ってる。だから勝手に恋人を増やすな。変に誤解するような噂も流すな。バカユウマ」


「ご、ごめん!」


「分かったならいい。それとセーラちゃんの言葉もしっかり聞いてあげなよ。見ているこっちの身にもなってくれ~」


「え? 見ているこっちの身?」


 やれやれと首を横に振ったガイルくんが帰って行った。建物の中からこちらに手を振るステラさんも見える。


 いつもの無表情だけど、親指を下げない当たり、応援してくれるってことなのだろうか? 何を応援するってことなんだ?




「ユウくん!」




「は、はい!」


「き、聞いて欲しいことがあります!」


「ど、どうぞ!」


「ま、まだ私の気持ちはよく分からないけど……その…………私、ユウくんと一緒に過ごす時間が楽しいです!」


「!? それは僕もそうだけど……」


「だから、これからも…………ゆ、友人として接してください!」


「はあ…………」


 後ろからアリサさんの溜息が聞こえてきた。


「も、もちろんだよ! 僕でよければ――――」


 と、その時、僕の後ろから何か温かい感触が伝わってきて、僕の首元を優しく抱きかかえる白い腕が見えた。


「じゃあ、セーラは友人ね。ユウマは私がもらうから」


「アリサさん!?」


 背中に感じる彼女の感触と顔の横から感じる小さな吐息の音から何もかもが全身に伝わってくる。何より――――ものすごくいい香りがする。


「ま、待って! 二人ってもうそんな関係になったの!?」


「なってないけど、これからなるわ」


「!? だ、だ、ダメ…………ダメ! わ、私も!」


 両手を握るセーラちゃんの手の感触が伝わる。


 一体いま何が起きているんだ!?


「まだアリサちゃんには勝てないけど、私も頑張るから! だから――――私とも付き合ってください!」


 セーラちゃんの言葉と、アリサさんの吐息の音が耳元に鳴り響く。




「リア充。爆発しろ」




 僕達をジト目で見つめるステラさんが見えて、今度は僕の頭に自身の胸を当てて抱き着いた。


 そ、そうだ! これは夢だ! きっと夢なんだ!


 遠ざかる意識の中で三人が僕の名前を呼んでいるのが聞こえた。気がした。




 ◆




 裏庭でユウマたちがイチャイチャする姿を眺めるのは、彼らの先輩達全員であった。


「いや~青春っていいね~それにしてもユウマくんはモテモテだね~」


「一年生全員からモテてるみたいだな。あれ・・とは大違いだな」


「そこまでにしておけ。名前とか言うんじゃないよ」


「はいはい」


 一瞬だけ怒りに染まった目のシェラハはすぐに愛おしくユウマたちを眺める。


「今回の戦いでユウマくんは大活躍だったみたいだね」


「そうだな。俺達が遠征でいなかったからな……まあ、いたとしても彼並みの活躍ができたかどうか」


「恐らく無理だろうな。ユウマくんは私達には届かなない力を持っているのかも知れない」


「最初は『無能枠』だからびっくりしたけど、あのフェン先生が決めたことだから、普通の無才ではないと思ったが、これはとんでもない化け物かも知れないな」


「かもね。まあ、彼が頑張ってくれたら次の生徒会長は安泰だよ」


「シェラハ…………卒業したらあれを追うのか?」


「ええ。絶対にロクなことはしないと思うから」


 そう話すシェラハだった。あれ・・のことを思い出して、自分が強くなりたい理由を見つめ直す。


 しかし、彼女が思っていたロクでもないこと・・・・・・・・はすぐそこに迫っていた。

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