第63話 地下広間
走りながら前方にいる魔物を斬り捨てる。
思っていたよりは被害が少ないように感じる。聖国の騎士さんや聖騎士さん、冒険者さんの対応が速い。さすがは聖都だね。
真っすぐ道を突き抜けて、地下路の入口がある壁際までたどり着いた。
まだ降りてないのに、下から感じる禍々しいものはどこか――――村の森の魔物たちの気配に近い。
冷静に考えれば一人で入るのは無謀かも知れない。でも僕にも何かできるかも知れないから。だから勇気を振り絞って地下路へ入って行った。
階段に足を踏み入れた瞬間に泥沼に足を引っ張られる感覚が襲う。
けれど、それが確信へと変わった。
一気に階段を降りて、暗めの廊下を走り進む。
地下路は意外にも綺麗に保たれていて悪臭一つしない。
ただ、肌を包む空気はドロドロとした泥沼の感触がある中、全速力で走っていくと魔物の気配を感じた。
暗闇の中、地下路の奥で光る赤い目がキラリと光る。
黒い肌の狼で目が燃えるような真っ赤な目だ。
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個体名:シャドウウルフ
種 族:Bランク魔物
弱 点:火、光
体 力HP:C+ 魔 素MP:C
筋 力:B- 耐 久:C+
速 度:A 器 用:C
魔 力:C 知 力:C
耐 性:C+
スキル:
〖闇属性耐性・中級〗〖速度上昇・中級〗
〖反応力上昇〗〖麻痺耐性〗〖暗闇耐性〗
〖毒耐性〗〖石化耐性〗〖沈黙耐性〗
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Bランク魔物!?
以前戦った鹿角牛と同じランクだ。
でも時間がない。この奥に何かがあるのは確実で、それを止めたら聖都に増える魔物を止められるかも知れない。
手に持っていたフランベルジュに魔素を流すと、刀身に炎が灯る。
この炎は僕に被害を及ぼさず、敵に燃え移る炎であり、斬った時に火属性として攻撃ができるのでシャドウウルフの弱点にも合う。
走ってくる僕に向かって爪を立てて飛び込んできたシャドウウルフを躱しながら大きく斬り込む。
暗い闇の中で一筋の炎の光が円を描いて通り過ぎる。
シャドウウルフが着地すると同時に、その場で体が上下に分かれた。
まさか一撃で倒せるとは思わなかったけど、また全力で道を進める。
道中、シャドウウルフが数体いたけど、どれも一撃で倒せることができた。弱点も相まってできている気がする。
道を進めば進むほど強く感じる強い気配が身近に感じるようになって到着した場所は、広間のような開けた場所が現れた。
天井からは夜の明かりが降り注いでいる。
広間の中心部には大きな悪魔の顔を象ったものに青い炎が怪しい光を発して灯っていた。
それと光をぼーっと眺めている人が一人。深いフードを被っている人は僕よりも少し背が高いように見える。
「その祭壇は何ですか!」
広間に僕の声が響くと、彼が振り向いた。
「…………どこまで邪魔をしてくれるな。だが丁度いい。貴様がどうやってここに辿り着いたのかは知らないが、ここでその首をもらうぞ」
そして彼はゆっくりと被っていたフードを取り始めた。
「!? あ、貴方は! ――――――リグルードさん!?」
Aクラスの同級生であり、Aクラスで一番強い人として人気のある彼は、クラスメイトたちから慕われている。
そんな彼がどうしてここに……?
ゆっくりと腰に掛けられた剣を抜くと、真っ黒でギザギザした刀身が姿を見せた。斬るよりも削ぎ取ることに適した作りになっている。
今日訓練中に見せた一瞬の黒い気配を思い出す。彼に恐怖を覚えてセーラちゃんを守らないといけないと思って、〖炎帝〗を解放させた。
あの時感じた違和感は間違いなかったんだ。
「どうして聖都を? 貴方だって貴族でしょう。国際問題になりますよ?」
「ふん。あんな帝国などどうでもいい。それに――――ここでお前が死ねば、俺がバレるってことはないッ!」
彼の後ろに黒い影が見え、全身を覆う黒いオーラが灯り、一瞬の動きで距離を詰めて剣を振り下ろした。
余裕を持って後ろに下がって距離を取ろうとしたその時、避けたはずの剣戟が剣圧が僕の体を叩き込んだ。
左肩から右腹部まで対角線上に斬られた剣圧が叩き込まれ激痛と共に大きく吹き飛ばされる。
壁に激突した時、口角を上げて目を大きく見開いた彼が禍々しい剣を構え、追撃に飛んでくるのが見えた。
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