第49話 とある女子の激白(ルミ視点)
◆ルミ◆
私はセイクリッド学園に入学した新入生の一人で、残念ながら一年の中では一番下のクラスであるCクラスに入った。
恐らくCクラスの中では最上位だと思うので、このままでも次期昇進は勝ち取れる自信があった。
でも私の考えは甘すぎることに気付いてしまった。
ユウマ・ウォーカーくん。同じCクラスの生徒で、なんとあの勇者様であるクレイ・ウォーカー様の弟君らしいんだけど、セイクリッド学園で最も有名な『無能枠』で入学を果たした人物だ。
才能がない人はスキルを持たないから彼のあだ名は『スキル
そもそも、試験の時もチラッと見た時、彼が行っていた素振りの凄まじさを目の当たりにして、才能なしだとバカにしている人がいて驚いてしまった。セイクリッド学園に挑戦するのにあの素振りの凄さが分からないの!?
入学した時点で、私がCクラスとなったのだから、私よりもずっと強い人達がBクラス、Aクラスに六十人もいる。さらにSクラスの生徒は本当に人なのかと疑うくらい強かった。
でもその中でもやはり私が気になったのはユウマくんだ。
彼がいなかったら恐らく一番下であろうセシルくんとの手合わせを間近で見て、自分が如何に弱いのかを知ってしまった。
動き一つ一つに無駄がなく、木剣を動かす動作も洗練され過ぎてそれが逆に弱く見えるところが彼の凄さだと思う。
洗練された動きは『普通』に近くて派手さがないと知った。
彼がセシルくんの剣を倒れないギリギリの力で跳ね返すのを何度も見ながら、どうして彼がここにいるのか不思議で仕方がなかった。
だから私は彼をCクラスに選んだフェン先生を問いただした。そんな先生は…………「その方が面白いじゃん」と一言だけ。でもそれが本心でないことを知っている。なんせ、ユウマくんの手合わせを誰よりも熱を入れて見つめるのが先生だったから。
それから私は貴族の偉そうな生徒からハブられた平民のクラスメイトたちを集めてユウマくんのところに集まった。
彼はとても優しくて、すぐに仲良くなった。
それから日々が過ぎ、少しだけ自分の中にユウマくんに対する憧れがあるのに気付いた。
もしかしたらこのままユウマくんと同じクラスで、昇進も同じタイミングで上がって行けば、Aクラスでも一緒になるんじゃないかと。
でもそれがどれだけ傲慢で淡い期待だったのか知ることになった。
とある日のこと。
いつもの訓練の時間、珍しくSクラスから遊びに来たと、一人の美少女がやってきた。
綺麗な水色の髪をなびかせて、誰が見ても美女だと納得すると思う。どういう生活を送ればああなれるんだろうと疑問に思う程に綺麗だ。
そんな彼女がわざわざCクラスの訓練に参加した理由。それがユウマくんだと知った。
どうやら同じ寮に暮らしているらしいけど…………二人の関係は私が思っていたよりもずっとずっと深いモノだった。
多分二人は付き合っているんだと思う。
彼女の仕草を見れば分かる。好きな男子の前でする仕草だ。きっと私みたいな
軽めにユウマくんと手合わせを見せてもらったけど、彼らの戦いが理解できたのは恐らく先生と私とオリヴァーくんくらいだと思う。
そうそう。
オリヴァーくんはユウマくんに完膚なきまでに負けてしまって以来、すっかりクラスの中心人物となった。
あの日から心を入れ替えたのか平民たちにも優しいし、勝負に負けたのだから今期昇進なしもちゃんと受け止めている。
最初はユウマくんにわざと負けたふりをしていると勘違いしていて、一度問い詰めたらオーラをまだコントロールできないから途中で切れただけだと言っていた。
それが面白すぎて、でもオリヴァーくんらしくていいと思った。だからこれは私とオリヴァーくんだけの秘密にすることにしてあげた。
さらに日が通り過ぎ、ある日金髪の可愛らしいエルフさんが遊びに来た。彼女もSクラスらしい。
水色髪の人とは違い、ユウマくんに冷たく当たってるけど、それもユウマくんに興味があるからだと分かる。
きっと彼女もユウマくんの彼女…………あれ? ユウマくんってもしかして二人と付き合っているのかな?
今度は赤髪の魔法使いの子がやってきて、ユウマくんの腕に絡んでいた。
…………ユウマくんって三股しているのかしら。
それにしてもあんな美少女たちからモテるユウマくんは、高い実力があるからこそだと思う。
やっぱりCクラスにいるのは可笑しいと思うんだけど、今期間違いなく昇進するだろうし、私も多分行けると思うからBクラスでもユウマくんの派閥を作らないとね。
そうそう。最近では貴族たちもこちらで一緒にユウマくんから指導を受けるようになった。
ユウマくんのアドバイスは的確で、フェン先生のアドバイスと組み合わせるととんでもない効果を生み出す気がする。
今の私は誰にも負けない自信があるくらい強くなった気がする。
最初はCクラスになって残念に思っていたけど、今は寧ろAやBじゃなくCクラスで良かったと思う。
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