第44話 煽り
初めての連休は気づけばアリサさんたちと一緒に時間を過ごすことになった。
ガイルくんとルリカちゃんと一緒にみんなで露店街で遊んだりと楽しい時間はあっという間に過ぎ去った。
連休が明け、二週目の授業が始まり、そこからさらに三日が経過した。
そこで一つ分かったこと。
一年生の最弱と言われているCクラスの生徒の実力的にはDランク魔物と対等に渡れるようだ。
従魔師の教師が言っていたことから、かなり優秀であるそうだ。
そして、二週目ともなるとクラスメイトたちの派閥は大体決まってくる。
入学した生徒たちは大半が貴族である。その一番の理由としては貴族が強い才能を授かれる可能性が高いのと、普段からエリート教育を受けているからだ。同じ才能でも入学する前に強くなるために教わった人とそうでない人では差が開く。
なのでAクラスは殆どが貴族で、Bクラスは半々、Cクラスは上位が貴族で下位が平民が多い。
もちろん、うちのクラスも例に漏れず平民が半数以上を占める。
派閥が生まれ始めて一番最初にあるのは、貴族に取り入る平民か、ハブられる平民か。
できれば何かの派閥とか言わず、みんなで仲良くしたいと考えていたけど、気が付けば僕の周りは――――言うまでもなく平民たちの派閥になっていた。
というのも。
「ユウマくん! 今日も素振りをしてきたよ!」
「僕も! ユウマくんに言われてちゃんと毎日素振りしているんだから!」
「俺も!」「僕も!」「私も!」
僕込みで二十人いる平民のうち、十六人が僕に素振りの報告をしてくれる。
「今日の手合わせは俺だからな!」
毎日手合わせの授業で代わる代わる僕と手合わせする当番が決まってきたり、僕にアドバイスを求める人たちばかりだ。
最初のきっかけはやはりセシルくん。何人か悩んでいたクラスメイトを連れてきては一緒に悩んでいるうちに涙ながらに感謝を言われたりした。
それを見ていたクラスメイトたちがどんどん集まり、クラスで一番の派閥になってしまったということだ。
「おい……スキル0の方にまた人が増えたぞ」
「こっち側だった平民があっちに行ったな。平民だから弱者同士群れても仕方ないさ」
「だな。どうせスキル0だしな」
こちらを憐れむ目で見る貴族のクラスメイトたちだが、最近はみんなが睨み返すようになってきた。
どんどんクラス内が二つの派閥に分かれてバチバチと火花を散らすようになった。
そして、今日。
「おいおい~平民組よ。お前ら場所取り過ぎだぞ?」
手合わせ授業で一人の貴族子息のクラスメイトが卑猥な表情を浮かべてやってきた。
「こっちの人数が多いんだから仕方ないでしょう!」
「おいおい。いつから平民が貴族
いくら学園とはいえ、貴族と平民の身分さはどうしても生まれる。特に聖国以外の国は貴族と平民の壁が非常に大きい。学園を卒業した後のことを考えれば、貴族と事を構えない方が絶対にいい。入学中はいいけれど、卒業してからの時間の方が長いからだ。
「弱い何かはよく吠えるってね~」
「な、なんだと! 貴様。女とはいえ、無礼罪だぞ!」
「無礼? そっちこそ無礼じゃないの? みんなが一緒に使う訓練場でクラスの半数を超えるこっちが半分を使って文句言う方がおかしいでしょう!」
「そ、それは……」
彼女はルミさんで、平民の中でも一番気の強い女性で、向上心があって暇があれば素振りを繰り返している。
その時、二人の間を割るように手を叩く音が聞こえる。
「はい。そこまで。せっかくだから紅白戦をやろう」
「「フェン先生!?」」
「お前らいいじゃねぇか~やる気
やる気ない? みんな毎日頑張っていると思ったんだけど…………。
「全員集まれ!」
フェン先生の号令で全員集められた。
「これから紅白戦を行う。やる気ないお前らの本気を見せて貰おう」
「先生! みんな毎日頑張っています! やる気ないとは思えません!」
「ほぉ……面白いこと言うじゃねぇか。ユウマ。では聞こう。お前らがここに入った理由はなんだ?」
「強くなるためです!」
「強くなるか。だが、それだけなら一人でやってればいい。お前らに足りないのは――――目標だ。一体強くなって何をするというんだ。強い魔物を倒すことか? はたまた仲間に褒められたいからなのか? そうじゃないだろ。お前らが強くなりたいのは――――――敵を叩きのめす力が欲しいんだろ? さあ、目の前の敵を砕くくらいの姿勢を見せてみろ! これから相手を指定する。呼ばれた者は前に出て全力で相手を叩き潰せ」
フェン先生の煽りにみんなの目がギラギラと燃えている。
そして、フェン先生の次の言葉で全員のやる気が爆増することとなった。
「負けた方は今期昇進させねぇからな」
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