第39話 異世界の暦

 教師陣のデモンストレーションが終わり、挨拶からその場解散となった。


 そのままアリサさんたちと一緒に戻るが、周りからの冷たい視線が刺さる。


 アリサさん達は僕を気遣って気にしないでくれるけど、それが返って辛いと感じる部分でもある。


 寮に戻り夕飯を食べていると先輩たちも戻って来た。


「シェラハ先輩! 生徒会長さんだったんですね!」


「たまたまだがな。ユウマくんも二年後には生徒会長を目指してくれると嬉しい」


「僕がですか!?」


「もちろんだ。史上初才能なしで生徒会長になるってなんだか面白そうじゃないか。それにユウマくんなら本当になれる気がするぞ」


「あはは……僕よりもガイルくんかセーラちゃんの方が適任だと思います」


「まあ、まだ時間はある。これから鍛錬を続けて頑張るといい」


 まさか僕なんかが生徒会長なんて…………そんなことよりも今は少しでも早くSクラスに入れるように頑張っていきたい。


 僕もみんなと一緒に授業に参加したいからね。


 初日ということもあり、変に緊張していたのか、その日はすぐに眠りについた。




 次の日。


 いつもの朝練を行って、今日も美味しい朝食を食べて学園に向かった。


「ねえ。ユウマくん」


「アリサさん? どうしたの?」


「魔法は禁止だけど、手加減はしなくていいからね。ボコボコにしてあげなさいよ」


「えっ!?」


「今日から授業で稽古とかするはずだから。心を折らないくらいボコボコにしてあげるといいと思う。遠慮とか手加減とかした方が相手を傷つけることもあるからね。君ならやりかねないから」


 僕を思ってくれる言葉に嬉しくなる。


「バカップル。イチャイチャ。滅べ」


「あはは……ステラさんもまた夜ね~」


「ダメ」


「ん?」


「お昼。一緒」


「そっか。じゃあ、お昼は食堂でね~」


 親指を立てて返事してくれるステラさんと、みんなも頷いてくれてお昼は一緒に食べられるようで嬉しい。


 僕だけ一年生の建物に入り、教室に入る。


 もちろん今日もすぐに色んな嫌味を言われ始めるのは言うまでもない。

 

 授業が始まり、最初は座学で基本的な授業から始まった。


 セイクリッド学園に入学した時点で全員が実力がある生徒たちではあるんだけど、生徒たちの中では一番下ということもあり、真っ先に試験内容の振り返りから始まった。


 授業が始まると周りの集中する姿に、セイクリッド学園が実力がある者だけが集う学園なのがよくわかる。


 僕にとってはただの復習になるけど、大切なことなのでしっかり先生の授業を聞く。


 授業は全部で一時間ずつの四時限を行ってからお昼休みを取り、そこから四時限を行う毎日八時限がカリキュラムである。


 異世界のこよみは、春夏秋冬をそれぞれ一月としているので、一月が春、二月が夏、三月が秋、四月が冬となっている。


 意外にも春夏秋冬がしっかりしているが、各国で春の色が強い国と、夏の色が強い国などに分かれているみたい。


 東は春、北は冬、南は夏、聖国がある西は秋が強いようで、三月は綺麗な紅葉が見られるみたい。


 うちの村も聖国がある西側なのに、村を覆っていた森の木々は季節関係なく色が変わることはなかったからとても楽しみだ。


 各月は九十日ずつになっていて、読み方としては一月の六十五日などの読み方になる。


 学園は七日の授業の後、二日休日を取る方式を取っており、四十一41日から四十三43日、八十六86日から八十八88日が試験日となっていて、ここでの成績次第で、週明けにクラス変更になる。


 クラス変更の際のルールは、各クラス三十人の中でAクラスの下位三名とBクラスの上位三名が強制入れ替えとなる。Bクラス下位五名とCクラスの上位五名が強制入れ替えとなる。


 Sクラスへの編入は試験の成績ではなく教師陣全員の推薦で行けるという噂が流れている。ただ、AクラスからSクラスに編入した生徒はすぐに落ちるとも噂されていた。


 去年までは特に勇者様である兄さんがいたのもあって、かなり厳しかったみたい。


 三時限までの座学が終わり、四時限目は実技授業のために中訓練場に移動した。


 生徒達に与えられる制服はそのままでも防具として利用できるくらい防御魔法が付与されているため、着替えることなくみんなで向かう。


 普通の武器なら斬ることすら不可能だという。


 それ程までにセイクリッド学園の生徒の訓練は危険・・ということだ。


 才能があるからこそ強いからこそ戦いは危険なものである。


 使用するのは木剣とはいえ、スキルを持つ生徒たちの木剣は非常に危険だ。


「さあ、今日はひとまずみんなの実力を見てみたい。二人ずつペアになって軽く打ち合いをしてみな」


 副担任のフェン先生の指示によって、それぞれペアになって打ち合いを始めた――――のだが、僕だけ相手がいない。


 どうしようかなと思っていたら、一人の男子生徒が声をかけてきた。


「あ、あの…………僕とペアになるしかないみたい」


「そうみたいだね。僕はユウマ。よろしくね」


「う、うん。知っている。君って有名だからね」


 あはは…………きっと悪い意味で有名だろうね。


「僕はセシル。君には感謝しているんだ」


「えっ? 僕に?」


「うん。君がいなければ――――君の位置・・にいたのは僕だからね」


 それが何を意味するのかすぐに理解できた。


 僕の位置――――つまり、最下位。


 セシルくんは僕の一つ上ということだろう。


「順位なんて気にしなくていいと思うよ? 僕が言っても説得力ないかも知れないけど、セシルくんはきっと強くなれると思うよ?」


「そ、そうかな?」


「うん。さあ、早く打ち合わないとフェン先生に怒られるかも知れないから頑張ろうか」


「分かった!」


 最初は困ったように苦笑いを浮かべてた彼だが、すぐにやる気に満ちた顔になった。


 仮に彼が最下位だったとしても、セイクリッド学園に入学できた時点で、彼もまた優秀な人である事は間違いないからね。


 僕は学園で初めて打ち合いを始めた。

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