第38話 魔法禁止という試練?

 初日の午前は案内と入学式で終わった。


 午後からは先生たちによるデモンストレーションがあるという事で、一年生全員で練習場に集められた。


 訓練場は個室訓練場、クラス一つ人数を想定した広さの中訓練場、クラス二つ人数を想定した大訓練場、学園の人数を想定した特大訓練場があって、個室は百室と多く、中訓練場も十室ある。大訓練場は四室あり、特大訓練場は一室のみとなっている。


 各訓練場の壁には強力な防御魔法が施されており、強力な魔法や技でも破れないという。


 先生たちを待っている間、特に決まった立ち位置がなかったけどクラスごとに分かれて固まっていると、クラスメイトたちから「おい、見ろよ……特別生エリートたちがこちらに来るぞ」と囁く声が聞こえた。


 なにごとかなと思って視線を向けると僕に向かって手を振りながらやってきたみんなだった。


「みんな!」


「ユウくん!」


 真っ先に飛んで来てくれたセーラちゃんを後ろから見ているアリサさんとガイルぐんが苦笑いをする。


 日本で言う二週間も一緒にみんなと時間を過ごしていると、段々とみんなの性格が分かって来た。


 まず、セーラちゃんはとても明るく、誰に対しても分け隔てなく接してくれる。ただ誰かに嫌われるのに敏感のようで、意外なところで遠慮深い。


 アリサさんは普段からムスッとしているけど、凄く仲間思いで気遣いができて意外と行動派だった。セーラちゃんの気持ちを汲んですぐに動いたりする。


 ステラさんは常に眠そうにしていつも魔法の本を持って歩くが、意外と食に弱くて沢山食べる訳ではないけどお腹が空くと「腹減ったぁ……」とすぐに言う。それと気を許した相手には甘える癖もある。


 ガイルくんはみんなのお兄ちゃんみたいな立ち位置で、常にみんなの立ち位置を見て意見でも行動でもリーダーシップを発揮してくれる。が、時折僕とアリサさんのやり取りを面白がる時がある。


「まさかみんなSクラスだと思わなかったよ~みんな凄いんだね」


「Sクラスに入れると思ってなかったから、え、えっと…………怒らないで欲しいかな……」


「怒らないよ? 怒る理由も全くないし、今度Sクラスのこと、色々教えてくれると嬉しいな~」


「うん!」


 セーラちゃんの後ろからひょっこりとステラさんの顔が飛び出す。


「イチャイチャカップル。滅べ」


「あはは、ステラさんは新しいクラスに馴染めそう?」


 眠そうな目のまま、親指を立てるステラさん。本当に魔法以外には全く興味なさそうだね。


 と思っていたらステラさんが驚く程素早く僕の目の先までやってきた。


「ユウ。ここで魔法は使わないで」


「えっ?」


「Sクラスに来るまで魔法禁止」


「わ、分かった……何か理由があるんだね?」


「ユウへの試練」


「そ、そっか! 分かった!」


 そっか! ステラさんは僕を思って、今の僕に足りない部分をちゃんと考えてくれて魔法を禁止という試練を与えてくれたんだ。


 まさかこんなところでそう言われるとは思わなくて驚いてしまったけど。


 後ろを向いたステラさんがみんなに親指を立てているのが少し気にはなる。


「ユウマ。クラスは…………まあ、野暮な質問だったな。それより思っていたよりCクラスも優秀そうな人が多いね。入学した時点でのクラスはあまり参考にならないな」


「僕も驚いたよ。みんな凄く強そうだものな」


「ユウマは誰でも強そうって言うけどな」


「うっ……」


 そ、そうだったかな……?


「ねえ」


「アリサさんも来てくれたんだね」


「何よ。私は来て欲しくなかったみたいな言い方」


「えっ!? ち、違うよ! 凄く嬉しいよ!」


「そ、それならいいけど」


 最近ますます僕に対して厳しくなったアリサさんは、何がある度に棘のある言い方をしてくる。


 もしかして、失礼なことでも言ってしまったかな?


 隣のガイルくんがいつもの猫みたいな目になっている。


 絶対にまた面白がっているでしょう!?


 その時、扉が開いてイザベラ先生とフェン先生と他にも男女が十一人も入って来た。


 ただ、その中でも目立っている二人がいて――――彼らは白い美しい服装だけで一目で聖騎士であることがわかる。


 訓練場が一気に緊張感漂う雰囲気になり静かになる。


「お待たせした。これから軽く教師陣を紹介する」


 Aクラス担任の先生の紹介から始まってそれぞれ挨拶をする。そして、最後に二人の男性は聖騎士であり、任務のために毎日ではないが時々教師として招かれるという。


 それから教師陣のデモンストレーションが始まった。


 イザベラ先生は魔法使いのようで、上級の水魔法を披露してくれた。


 クラスメイト達からは「詠唱破棄であの威力で使えるなんて化け物だ」との声が聞こえてくる。


 こう……対抗したい訳じゃないけど、マリ姉もできそうだからマリ姉も教師として呼ばれたらいいのになんて思う。


 フェン先生はだるそうな顔をしていたけど、どこからか持って来た大きな鉄の塊を素手で叩いて粉砕して見せた。


 教師はみんな仲良さげに見えて、その中でもフェン先生は不思議と聖騎士さん達と話している場面が多くみられた。


 フェン先生やイザベラ先生、他の先生方々や聖騎士さんたちから教えてもらえるなんて、セイクリッド学園に入学して本当によかったと思った。

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