第37話 入学
合格のパーティーは盛大に行われた。
先輩達もみんな集まってくれて僕達の合格を祝ってくれて、寮の受験者全員合格という記録は今年も続くこととなった。
そこから入学まではあっという間に進む事になる。
合格発表の次の日から三日間は合格者を集めて、制服の寸法から入学する際や学園内のルールの説明もあった。
前世の事から大学と違い学園だからこそ学費の事を気にしていたのだが、学園は育成目的ためにどこの国も学費類は免除になるそうだ。
さらに学園によって支援する部分は違うが、セイクリッド学園が支援する部分は世界でも最高峰らしく、学園が休みの日でさえ朝の食堂と昼の食堂が全て無料で提供される。ただし、持ち帰りは禁止されている。
入学した生徒が住む寮も学園が営んでいるわけではないが入学生を受け入れていれた個人経営寮には支援金を出す仕組みになっているので、僕の場合シャローム寮で食事や家賃が全く掛からないで暮らすことができる。
学園の理念として、学業期間中は全ての心配を取り除き、高みを目指せるようにしているのを体現している。
合格発表から十日後。
ついに僕達は制服に身を纏い、セイクリッド学園に足を踏み入れた。
◆
「おい……あいつって無能じゃねぇのか?」
「ああ。勇者様の不出来な弟らしいぜ」
「あれか。コネで入った口か」
「さすがに学園も勇者様の顔に泥をつけることはしたくなかったんだろう。噂によれば最下位だったらしいぜ」
「例の無能枠か?」
「そうみたいよ」
入学式の前。
送られてきた手紙に書かれた教室にやってくると、残念なことにアリサさん達はいなくて、クラスに僕一人だけ浮いていた。
既にクラス中には僕の噂が回っているようで、ちらちらとクラスメイト達からの視線を感じる。
教室の扉が開いて一人の女性と男性が入って来た。
女性は初めて見る方だったけど、後ろから一緒に入って来た男性は――――試験日に僕の試験を見届けてくれた試験官さんだった。
「初めまして。これから一年間貴方達の担任となるイザベラです。そして、こちらは副担任の――――」
「フェンだ。よろしく~」
試験官さんってフェンさんと言うんだね。あとで感謝の挨拶に行かないとね。
それからイザベラ先生による簡単な説明があって、学園の案内をするとのことで、クラス全員でイザベラ先生とフェン先生と共に学園を歩き回った。
学園は学年によって建物が変わって、入口から入ってすぐの一番大きな建物は、訓練場や職員室などで学園の中心を担う建物となっている。
そこから裏に建物が全部で四つ並んでいて、左側から一年生、二年生、三年生、特別生に分かれているそうだ。
特別生というのは、優秀な成績を収め、将来を期待される生徒を普通の生徒達と分けるためのクラスとなっていて、各学年でも十人くらいしかいないそうだ。
途中編入や
建物以外にも学園で働いている人も沢山いる。もちろん先生たちもそうだけど、先生以外にも色んな人が働いているらしく、中でも各クラス棟の先にある広大な食堂は、学園が休みの日も生徒達のために開かれているそうだ。だからこそ食堂で働いてくれる多くの人にも敬意を払うようにとのことだ。
他にも庭師、清掃員、馬車乗り場の管理人、従魔師など多くの人に敬意を払いながら学業に励んで欲しいとイザベラ先生は告げた。
最後に講堂に向かう途中。
「フェン先生」
「うむ。逃げずに入学したな」
「もちろんです。フェン先生とも約束しましたから」
「そうか。だが覚悟していても現実はそう優しくない。逃げ出さないで頑張れよ」
「はい! それと――――ちゃんと入学させて頂き、ありがとうございました!」
「ふっ。何か誤解したようだが、俺は勇者様の弟だからとか無才だからとかの理由でお前を入学させたんじゃない」
「えっ? 違うんですか?」
「入学はお前の実力で勝ち取ったものだ。最下位にはなってしまったが、筆記は生徒の中で唯一の満点だったし、十分な実力を持っている。自分に自信を持ってこれからの勉学に励みなさい」
「は、はいっ! 頑張ります!」
少し強面だけど、フェン先生が先生なら学園はとても充実したものになりそうな予感がする。
相変わらず、僕と先生を見て「見ろよ、コネ野郎が早速先生に取り入っている」と囁いている。
それから講堂にクラスごとに並べられて待つ事となった。
クラスは全部でSクラス、Aクラス、Bクラス、Cクラスの四つに分かれていて、Sクラスが特別生で一年生のSクラスは十一人いた。
…………ええええ!? アリサさん達みんなSクラスなの!?
こちらに笑顔で手を振るアリサさんとセーラちゃん。ステラさん、ガイルくんがいた。
AクラスからCクラスは成績順になっていて、一年を八シーズンに分けて成績上位者と下位者の強制入れ替えがあるらしい。
Aクラスの成績上位者は先生による試験でSクラスに編入もあるそうだが、多くの人は戻ってくる人が大半だそうだ。
それくらいSクラスのみんなは才能に溢れていると噂していた。
二年生、三年生も講堂に集まり、学園長の挨拶があった。
学園長は意外と若い女性で、三十代後半の綺麗なお姉さんのような方だった。
ただ、彼女から感じられるプレッシャーは学園長である事を示すかのようにとんでもないものだった。
学園長の後、生徒会長による挨拶があったのだが、まさか同じ寮のシェラハ先輩が新しい生徒会長だとは思わなかった。
こうして僕の新しい学園生活が幕を開ける事となった。
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