第30話 仲間(三人称視点あり)
◆聖都の冒険者ギルド◆
「どうしてその少年を止めなかったんだ!」
執務室で大きな声をあげる禿げたおっさんと、受付嬢が一人。
彼女はユウマがグレートホーンの角を勢い任せて売り払った時に対応した受付嬢である。
「いきなりきて押し付けて急いで換金してくれとせがまれてしまって…………それにこんな高級な物はすぐに買い取っておかないと、また他の錬金術師のところに持っていかれたらまずいと思ったんです!」
紫の整ったショートヘアを揺らす受付嬢は泣きそうな目でそう訴えた。
「はあ…………容姿とかは覚えているだろうな?」
「もちろんです。凄く綺麗な男の子だったので、一目で覚えました! 次どこかで会ったら必ず冒険者になるように声かけますから!」
「よろしく頼む」
聖都の冒険者ギルド支部では、いきなり持ち込まれた超高級品のグレートホーンの角によってひと騒ぎがあったのだが、ユウマがそれを知るのはまだ暫く先であった。
◆ユウマ・ウォーカー◆
寮に帰って来て、アリサさんはすぐに部屋に戻った。
僕は部屋に置いてあった本を持って食堂に向かった。
案の定、セーラちゃん達が一緒に勉強していて、僕も混ざって勉強する事となった。
僕の向かいにセーラちゃんとガイルくんがいて、二人は時折お互いに質問したり、お互いが勉強している部分を見てはアドバイスを繰り返していた。
二人とも慣れているというか、もしかしてここに来る前からの友人とかかな?
少しして、ステラさんもやってきて、いつもの席のセーラちゃんの隣に座りこんで、魔法の本を読みだした。
ルリカちゃんがお茶を淹れてくれたタイミングで一服する事となって、セーラちゃんが聞いて来た。
「ユウくんって何が得意なの?」
「僕? ん~得意か…………マリ姉が言うには筆記の方が上手いと言ってたよ」
「へえ~じゃあ、これとか分かる?」
向かいからこちらに本を開いて見せてくれるセーラちゃん。
その時、体を前のめりにした彼女の胸元が目に入る。
「っ!?」
「ここなんだけどさ~」
「せ、セーラちゃん…………前のめ――――――あ」
視線を外して入口に向けていると、丁度入って来たアリサさんと目があった。
少しだけ笑みを浮かべて、僕が贈った髪飾りを付けてくれた彼女の表情は一気に冷たいモノに変わっていく。
「ふう~ん」
「えっ!? ち、違う! これは違うんだ!」
「ふ~ん? 私、何も言ってないけど?」
いやいや、絶対に「この
「別に。
あぁ…………これ絶対に怒ってるやつだ…………。
「うふふ」
「ん?」
「いえいえ~こちらは気にしないで続けて~」「続けて~」
セーラちゃんとガイルくんが猫みたいな目でこちらを見る。
それにしても隣に座っているアリサさんから負のオーラを感じる。
こう、今すぐ謝らないと大変な事になりそうなくらい。
そんな彼女の隣であたふたしていると、大きな溜息を吐いて小さい声で「別に怒ってないわよ」って言ってくれた。それを聞けてそれで少しだけ一安心だ。
「セーラ。わざとだろう」
「ぷふっ。だって~ユウくんの初々しい表情が凄く可愛かったでしょう~?」
「そりゃそうだが、ユウマも少し女慣れしておいた方がいいぞ。入学したら色々大変だよ?」
「えっ、大変? 何が?」
小さく溜息を吐いてガイルくんが口を開く。
僕達はそんな彼に視線を集めた。
「学園に入るという事は、将来の
「将来の相手!? それって奥さんってこと!?」
「ああ。その通りだ。ユウマの場合、容姿だけで人気者になれるだろうから、ある程度覚悟しておけ。同級生だけじゃなく上級生からもな」
「あ、あはは……そんな。僕なんかを好きになる人なんて――――」
「バカね。少なくとも金貨をポンと出せるくらいの人ならモテるわよ」
みんなの視線がアリサさんに集まる。
「え~! その髪飾り、今までしてなかったよね!? もしかしてユウくんが贈ったの~?」
「ち、違っ――――わないけ……ど…………」
アリサさんが顔を真っ赤に染めてその場でうずくまる。
「あはは……似合うと思ってさ。たまたま手持ちにあったからね~」
鹿角牛の角が思っていたよりも高く売れてくれてよかった。
「ふう~ん。ユウマってそういう性格か…………こりゃ大変だな。ユウマもみんなも」
「みんな?」
「こっちの話。まあ、本当に気を付けなよ。たまに魅了スキルまで使ってくる人がいるから」
「ひい!?」
魅了スキルの怖さはマリ姉から怖いくらい教わった。
一回だけ試してもらったけど、とんでもないことになる寸前だったからな…………異世界に来て、誰かにビンタされたのはあの時が初めてだったな。
少し談笑をして、また勉強を再開。
アリサさんと勉強のことで沢山意見交換をしながら、セーラちゃんも混ざって来て充実した時間を過ごした。
そんな幸せな時間を送り、数日後。
僕達は遂に学園の入学試験を受けるために、初めて開かれたセイクリッド学園の門をくぐった。
【作家から一言】
どうしても言わないともう我慢できません! リア充~!爆発しろおおおおおおお!
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