第24話 シャローム寮の受験生

 ルリカちゃんに案内されたのは『209号』と書かれた部屋だった。


 一階がルリカちゃんの家族が住んでいたり、風呂と食堂がある。


 二階は男子、三階は女子の部屋らしい。


 ということで、三階は男子禁制なので絶対に上がらないように厳しく言われた。もし一度でもバレたら寮から出てもらうそうだ。


 ちなみに過去に上がろうとしてバレて追い出された生徒もいるそうだ。


 部屋は十帖くらいの和風の部屋で、セミダブルかなと思われる少し広めのベッドと、机や衣装入れなどがあった。


 トイレは各階に二つずつあり、他にも洗面台が中央階段の左右に一つずつある。


 荷物を部屋に取り出して、早速食堂に向かう。


 食堂というのは、リビング風になっていて、テーブルの高さも低くて椅子ではなくて座布団が用意されている。


 洋風なのに和風を感じることに少し違和感を感じつつ、僕を見つめている男女を見つめて目が合った。


「新しい寮生~!? めちゃ可愛い!」


 立ち上がると一瞬で寄って来た彼女は、薄い水色の長い髪をなびかせて、ものすごい美人さんでとても甘い香りがした。


「は、初めまして。ユウマといいます」


「いらっしゃい! 私はセーラ。向こうはガイルくんだよ~」


 男性が小さく会釈する。短髪だがさらさらの金髪が揺れて、ものすごいイケメンさんだ。


 というか、異世界って美男美女ばかりではないのを聖都で実感したのだけれど、ルリカちゃんから寮母さんも美男美女が揃っている気がする。


「ユウくんもルリカちゃんからスカウトされたの?」


 食堂は低いテーブルになっていて、座布団に座る方式になっている。


 セーラさんたちの向かいに座りながら、セーラさんが聞いてきた。


「そうです。公園でぼーっとしていたら声かけられました」


「あはは~ガイルくんと一緒だね~」


「だな。セーラからも紹介はあったけど、俺はガイル。今年学園を受験する受験者だ」


 手を伸ばして握手を交わす。


 とても爽やかイケメンって感じだ。


 ルリカちゃんが厨房から美味しそうな紅茶を持ってきてくれて渡してくれた。


 すぐに僕の隣に座り込んで四人で談笑を始めた。


 マリ姉以外でこういう談笑をするのは初めてだけど、前世の事を思えば、どちらかというと懐かしく思う。


 セーラちゃんもガイルくんも同い年で、学園を受験するそうだ。


 暫く談笑を堪能すると、サリアさんに呼ばれてルリカちゃんがいなくなり、三人になったタイミングで、もう二人の女子が食堂に入って来た。


 しかし、彼女達は僕達から距離を取り、彼女達もそれぞれ違うテーブルに座って本を開いた。


「あちらの方々は?」


「さあ~? 名前くらいは知っているけど、あまり反応してくれなくてね……」


 まあ、みんながみんな仲良くしたいと思っているわけではないだろうしな。


 それにしても二人とも魔法使いなのかな? 読んでいる本は魔法関係の本のようだ。


「寮生って意外と少ないね?」


「ううん。今は受験生しかいないけど、入学している先輩達がいるから、二十人くらいいるよ~」


 それでも二十人くらいか……そういや各階部屋が十個ずつだったから、丁度二十人くらいが限界か。


「多分だけど、ユウくんで最後のひと枠だったんじゃないかな~?」


「えっ!? えっと……知らずに来たけど、もしかしてここって人気の寮なのか?」


「そうみたい。先輩達が話していたけど、受験生が全員合格連続記録を続けて出しているそうだよ?」


「全員合格!?」


 それは中々の記録だと思う。


 少し離れた二人もセーラちゃんもガイルくんもきっと受かるんだろうな…………僕も受かるために頑張ろう。それに合格したらこれから同じ寮で過ごすのだから、みんなとも仲良くしたいね。


 ルリカちゃんから中を覗く。


「んも~アリサお姉ちゃん! ステラお姉ちゃん! みんなでまとまって!」


 二人はルリカちゃんを見て、困った表情を浮かべる。


 綺麗な金色の長髪の女子がアリサさんで、ウェーブ掛かった赤い髪の女子がステラさんのようだ。


 二人とも渋々場所を移動して僕達から席一つ離れた席に座った。


 ルリカちゃんとサリアさんが次々美味しそうな料理を運んでくれる。


 お膳を持ってきて僕の隣の空いた席に置いたルリカちゃん「アリサお姉ちゃん! ここ!」と圧力をかける。


 あからさまに嫌そうな表情で隣にやってくるが、近くでよくよく見たら――――


「えっ!? エルフ!?」


「なによ。エルフだから何か文句でもあるの?」


 彼女の鋭い目つきが僕に向く。


「ご、ごめん! え、えっと、僕の家って凄い田舎で、村人に人族しかいなくて…………エルフさんを間近で見たのは初めてだったから、驚いてしまって……ご、ごめん。悪気があったわけじゃないんだ……」


「ふん!」


 ふん!?


 何だか怒らせてしまったようで申し訳ないな…………。


 という向かいではステラさんがルリカちゃんに怒られて隣に移された。


 隣だけど、どこか壁を感じる二人は僕達から少しだけ背を向けて食事を始めた。


 シャローム寮で初めて食べた夕飯はものすごく美味しくて、ルリカちゃんが言っていた通りの満足のいく食事だった。


 物足りなかったら母さんの料理でもいいなと思ったけど、負けじと劣らない美味しさにこれからの食事が一つ楽しみとなった。

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