第22話 聖都到着

「ひ、広い!?」


「がーははっ! 初めての人は大体驚きますよ~坊ちゃん」


 ヘンメさんとはすっかり仲良しになったんだけど、アレクサンダーにニンジンをあげたり、母さんが作ってくれた食事を振る舞ったら、ずっと坊ちゃんと呼んでくれて、言葉使いもよくなった。


 荷馬車の旅は快適という程ではなかったけど、スキルのおかげなのか、辛さは感じなかった。


 そして二日掛けてたどり着いた一面が真っ白な建物で並んでいる街は、目的地である聖都イクリッドである。


 一言でいえば、うちの村より何百倍何千倍もありそうな広さ。何千倍以上もありそうだ。


 街は白い壁に覆われて、不思議な魔法で囲まれており、魔物が近づけられない仕様になっているという。


 魔物以外は通れるし、才能『魔物使い』で使役した魔物は通れるそうだ。


 街は円状になっていて、上から見た時に街を横切る十字の大きな川が存在していて、中央には外からでも一目で分かる巨大な聖堂が見えている。


 聖国エルサの首都である聖都イクリッドの中央に位置し、『光の女神様』を信仰している聖国の中心地である。


 聖堂には色んな聖職者が住んでいるらしくて、一番上に教皇様がいて、言わば王様のような存在だ。


 その下に七人の枢機卿がいて、そこから司教、司祭、シスター、聖徒によって構成されていて、聖徒というのが信者達を指す。


 そして、世界で最も有名な最強戦力の部隊である聖騎士がいて、聖騎士団長は教皇と同等の権力を持つが、まつりごとは基本的に教皇様が管理しているので、同等でも少し毛色の違う権力のようだ。


 四分割されている街だが、東区、西区、南区、北区に分けられていて、入口があるのは西区のみ。


 西区は一般区とも言われ、信者でなくても商売だったり訪れる事ができるので、各国の色んな人で溢れかえっている。


 南区と北区は聖徒たちの居住区となっていて、言わば国民の土地な感じになっている。


 東区は聖職区と呼ばれ、聖職者たちが住める地区となっており、言わば貴族区のようなものだ。


 僕が挑戦する事になるセイクリッド学園はというと、聖都の中央の聖堂と同じ敷地の西側に設置されている。


 セイクリッド学園は聖徒でなくても入学を認めており、入学して聖徒になるもよし、卒業して自国に戻るもよしとされている。


 なので、聖都の西区からセイクリッド学園へ繋がっている特別な橋が存在する。


 そうそう。中央の聖堂から十字に伸びている川を越えるにはそれぞれ大きな橋が一本ずつ存在するが、東区だけは聖堂側からしか入れない。


 西区から南区もしくは北区に入るのも普通の人は許されていないため、聖徒である聖痕を見せないと入れない。


 なのでセイクリッド学園に入学しても普通の生徒は南区、北区、東区への立ち入りが禁止される事となる。




 聖都の玄関入口の前に荷馬車が止まった。


「坊ちゃん。俺が案内できるのはここまでです」


「二日もお疲れさまでした」


「な~に。坊ちゃんに頂いた食事が旨すぎて大したことはなかったですさ」


「それは良かった! いつか母さんにも美味しく食べてもらえたって伝えておきますね」


「ええ! ぜひとも!」


「帰りの食事は中に置いておきましたので、ちゃんと食べてくださいね? アレクサンダーの分もありますから」


「おお! それはありがてぇ~! アレクサンダーも嬉しいよな!」


 アレクサンダーも嬉しそうに鳴き声をあげて、尻尾をぶんぶん振り回した。


 荷馬車を降りてヘンメさんと別れの挨拶をして、聖都の玄関口に向かう。


 ここに来るまでの間、中央道路には所々に魔道具『結界石』が置かれていて、魔物が近づいてこなかったから楽に旅を送れた。


 聖堂を包んでいる不思議な結界もそれに似ているが、違う点は遥かに強いこと。


 外の世界って鹿角牛みたいな強力な魔物がいるのだから、これくらい強そうな結界があるのも納得いく。


 僕は感じたことがないけど、うちの村にも結界が張られていて普段魔王種が入ってこれなかったと、マリ姉が言っていたっけ。


 聖都の玄関口には無数の人が並んでいて、不思議な水晶に手をかざしてから中に入った。


 これがマリ姉が言っていた『審判の水晶』か。


 『審判の水晶』は、触れた者が犯罪歴があるかどうか調べる事ができるそうだ。


 しかも、かなりの高性能で神様から与えられているらしく、聖国が定めている法律に違反した者を神の力で見破る事ができるそうだ。


 例えば、一番の犯罪である理由のない殺人。


 残虐な事を行った人は神の力で審判が下されるそう。


 一人、また一人『審判の水晶』に触れて中に入っていく。


 遂に僕の番になって、水晶に軽く触れると淡い青色の光が灯った。


 水晶を守っている衛兵さんが「通ってよし」と言ってくれて、聖都の中に足を踏み入れた。

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