第16話 選択肢
――【経験値を獲得しました。レベルが上昇しました。】
魔物を倒したら一気にレベルが上昇して10から15に上昇した。
予想通りというべきか、レベルが5上昇すると、全てのステータスが一段階ずつ上がっていく。
ステータスは全部で十種類だけど、レベル1の時から体力と魔素だけ一段階ずつ高くなった。
そこから計算してレベルが1上がる度にステータス十種類の中から二種類ずつ上がっていく。それによくみると十種類のステータスも二種類ずつ系統が似てる。
『体力と魔素』『筋力と耐久』『速度と器用』『魔力と知力』『耐性と運』。それらがセットで上がってるようだ。
ただ、他の才能も同じかどうかはまだ分からない。僕の周りの人達はみんなレベルが10なので聞く事もできないし、検証はできなさそうだ。
ひとまずレベル15になった事で、全てのステータスがD-からDに上昇したが、表記から考えてまだ低い部類だと思われる。
もし父さんの〖炎帝〗がなければ、怖い魔物と戦えなかったんだろうなと思いながら、両親には感謝するばかりだ。
上昇したステータスを考え込んでいると、三分が経過したのか〖炎帝〗の発動が終わる。
その時、
倒した蛇の右側から巨大蜘蛛が、左側から巨大火の熊がやってきては、蛇を食べようとする。
咄嗟に〖上級鑑定〗を発動させる。
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個体名:アイホート
種 族:魔王種
弱 点:風
状 態:直系神の封印
スキル:
〖全属性耐性〗『能力低下耐性』
〖状態異常耐性〗〖精神異常耐性〗
〖即死耐性〗
〖身体能力上昇・極級〗〖耐性上昇・極級〗
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個体名:ガタソノア
種 族:魔王種
弱 点:水
状 態:直系神の封印
スキル:
〖全属性耐性〗『能力低下耐性』
〖状態異常耐性〗〖精神異常耐性〗
〖即死耐性〗
〖身体能力上昇・極級〗〖耐性上昇・極級〗
---------------------
やっぱり、この魔物達も魔王種なのか!
蛇との戦いで分かったのは、僕が魔物に対策できるのは〖炎帝〗でのみ倒せってこと。つまり――――
「マリ姉ちゃん! 逃――――」
と、次の瞬間。僕の後ろから影が二つ飛んでいく。
ルイおじさんとモウおばさん夫婦だ。
「うちの村の子の初獲物を横取りするんじゃねぇべ!」
両手に大きなハンマーを持って火の熊を叩きつける。
それと同時にモウおばさんが持っていた巨大なフライパン…………フライパン!?
カーンと気持ちいい音が森に響いて巨大蜘蛛がフライパンに叩き込まれてその場で倒れ込んだ。
「ユウマや。ケガはないか?」
「ありがとうルイおじさん! やっぱり僕はまだまだみたい! 〖炎帝〗が切れて危なかったよ!」
「な~に、ユウマならすぐに強くなれるさ」
いつの間にか他の村人達も出て来て、僕を囲んで初めて魔物を倒した事を褒めてくれた。
それにしても…………
「うおおおおお~! うちの息子が倒したんだよおおおお! 母さんや! 見たかい!?」
「もちろんよ! うちの息子がこんなにも成長したなんて……私、もう前が見えないわ」
両親は僕が倒した魔物を眺めながら嬉しそうに声を上げている。
◆
その日から僕のお願いで毎日一体だけ〖炎帝〗で狩る日々を送ることが決定した。
これには決して無理をせずに、自分のペースで狩りをすると承諾を得た。もちろん、毎回マリ姉ちゃんが一緒に来てくれるのでとても心強い。
余談だけど、あれから何度か狩りに出かけたときに、魔物が一度に四体現れた日があった。
逃げようと提案しようとした瞬間に、既にマリ姉ちゃんは詠唱を始めており、心地よい声で少し長い呪文の後、〖
マリ姉ちゃんに逆らうのは絶対にやめておこうと決心した出来事だった。
そんなこんなで半年が経過して、歳が12歳に、レベルが30に上昇した。
魔王種の魔物を何度も倒す事で〖限界突破・下級〗が〖限界突破・中級〗に上昇している。
十二歳の誕生日となったその日。
両親とマリ姉ちゃんが誕生日を祝ってくれて、家ではささやかなパーティーが開かれた。
三人からプレゼントを贈られた。
両親からは、綺麗な赤い刀身の少し短めの剣を、マリ姉ちゃんからは黒い宝石が付いている美しい杖を貰えた。
「ユウマ。もう十二歳になったのね。今日は…………ユウマに大事な事を伝えないといけないから、心して聞いて欲しい。それを聞いて、自分でしっかり考えてね」
真剣な表情で母さんが代表して話し始めた。
父さんもマリ姉ちゃんも隣で笑みを浮かべて僕を見守ってくれる。
「うちの村にはないけれど、外には村よりも遥かに大きな街が沢山あるの。ユウマも『国』の事は本で勉強したでしょう?」
「うん」
「以前世界で起きた邪神との大戦は覚えていると思うけど、あれ以来世界では力を付けるために十五歳になった人々を集めて教育する習慣が生まれたの。それで生まれたのが各国の『学園』と呼ばれている場所よ。十五歳から入学して三年間、戦いや教養など、いろんな事を学べるわ」
前世でいう学校みたいなものか。
「各国では力のバランスを守るために学園を発展させてきたの。だからより良い学園に入れば多くの事を学べる。という事になっているわ。ただ、必ずしも学園に入らなくちゃいけないわけではない。中には学園に入らず、冒険者になったり、士官しかり、それぞれが思う仕事に就いたりする。だから私達もユウマに学園に入学する事を強いたりはしないわ」
きっと中には学園に入るように強要する両親もいると思う。きっと母さんもそういう人達を知っているかの言い方だ。
「そこでユウマの選択として、この村で生きる事。自分の足で世界を歩き回る冒険者になる事。学園に入る事など、沢山あるわ。その中でもとりわけ、学園に入る事に関しては――――誰よりもユウマに取って大切な事になるの」
「僕が学園に入る事で良い事があるという事?」
「ええ。とても大きな――――大切な事があるわ」
そして、母さんはとある言葉を口にした。
ああ……そうか…………母さんは、いや、両親とマリ姉ちゃんはそれを心配してくれていたんだ。
母さんから教えてくれた言葉を聞いて、僕の答えは一瞬で決まった。
学園に入る。
残り三年。
学園に入れるように沢山勉強して、才能なしの僕でも入れるように沢山鍛錬して強くなろうと決心した。
「やっぱりユウマは学園に行きそうだね……」
「仕方ないさ。でも俺達の息子だ。必ず自分が思い描いた未来を勝ち取るだろう」
「そうね…………今の私達にできるのはユウマを応援する事だけなんだね」
「そうだな」
グレンとセリアは大きくなっていく息子を応援すると決めた。
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