第15話 初狩り

 一年が経過した。


 僕は十歳から十一歳になり、村での生活も落ち着きを見せている。


 この一年での変化点とするなら、マル爺さんとサリ婆さんとも『絆』が繋がり、二人が持つスキルも複写された。


 それによって、〖土魔法・上級〗〖農具・超級〗〖農業・超級〗〖栽培〗の四つを覚える事ができた。


 そこで一つ分かった事は、僕が絆スキルによって複写で得られたスキルは、あくまで複写されただけで、僕のスキルとして確定するわけではない。


 というのも、マリ姉ちゃんから〖風魔法・上級〗を複写し、サリ婆さんから〖土魔法・上級〗を複写した。つまり、僕は両方の魔法を持っているのだが、〖氷魔法・上級〗は獲得できなかった。


 本来なら風魔法と土魔法のスキルを持つと自動的に氷魔法のスキルを得られるのだが、僕の特性はあくまで複写にあり、獲得ではないみたい。


 なら〖限界突破・上級〗はどういう事なんだ? と思うんだけど、こちらは『才能なし』の特殊スキルだと思われる。


 才能の力の複写ではなく、直接風魔法と土魔法を獲得したら氷魔法も獲得した事になるだろうと予想する。少なくとも『才能なし』の僕が魔法を覚える事は金輪際不可能なので、氷魔法は使えなさそうだ。


 二人から複写した農業というスキルは農業の行動に対するマスタリースキルで、栽培は植えた植物の生長に対して色んな特典があったり虫を寄せ付けなかったりと良い事が多い。


 それもあってすっかりと農業に関しての経験とスキルも充実して、一人でも農業を営めるくらいには成長できた気がする。


 そして本日――――遂に念願だった狩りに出る許可が下りた!




「あの…………どうしてみんな付いてくるの?」


 今日はマリ姉ちゃんと二人で出かけるとばかり思っていたら、後ろに村人達が全員付いてくる。しかもちゃんと隠密スキルまで使って。


「あの~僕、探知スキルあるからね? みんな速く出て来て!」


 布で頭を隠した母さんが申し訳なさそうな表情で出て来る。さらに続いて父さんに村人達がぞろぞろと出て来た。


 あの細い木の裏にみんな隠れるんだから〖隠密〗というスキルって凄いんだと思う。


「そんなに心配!?」


「ユウマがちゃんとスキルを持っていて強いのはこの一年で分かったけど……やっぱり心配というか……」


「分かった。でも邪魔はしないでね! 今日はあくまでマリ姉ちゃんと一緒に狩りするんだから!」


「わ、分かったわ!」


 するとまた隠密で隠れる。もう分かってるんだから隠れる必要はないと思うんだけど、みんな役に入っている気がする。


 森の中を進むと人なんて簡単に丸のみできると思われるくらい巨大な蛇の頭がこちらを覗いてきた。


 僕が知っている蛇と変わらない姿で真っ黒な舌をペロっとするのがまた気持ち悪い。



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 個体名:イグ

 種 族:魔王種

 弱 点:火

 状 態:直系神の封印


 スキル:


〖全属性耐性〗〖能力低下耐性〗

〖状態異常耐性〗〖精神異常耐性〗

〖即死耐性〗

〖身体能力上昇・神級〗〖耐性上昇・神級〗

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 すぐに〖上位鑑定〗を発動させて確認すると、イグという名前の魔物だ。弱点は火属性か。


「ユウマくん! いい? 絶対に舌に触れたり、体には触れないようにね!」


「分かった! ――――――フレイムランス火魔法・上級!」


 詠唱破棄によって僕の頭の上に三メートルくらいの巨大な炎の槍が現れる。


 右手を前にかざすと同時に炎の槍が巨大蛇の頭に飛んでいく。


 爆速で飛んでいった炎の槍が蛇の頭に直撃する――――と思った瞬間、一瞬で頭をずらして炎の槍を避けた蛇が真っすぐ僕らに向かって飛んでくる。


アースロック土魔法・上位!」


 僕達もその場から飛んで避ける。避ける際に土魔法で土の壁を作って蛇が土に突撃させるが、簡単そうに壁をぶち壊した。


「ユウマ!」


「分かった! 本気でいく! ――――〖炎帝〗!」


 全身に爆炎が灯る。


 森だから火が燃え移るのが心配だったけど、どうやらうちの村の周りの木々は特別で、火の耐性があって燃え移らないそうだ。


 なので爆炎を全開にする!


 自分の体よりも二倍も大きな爆炎で巨人になった気分になれる。というのも〖炎帝〗発動で出て来た炎は全てに感触があって、全身を覆っていて、それは足もそうなるので地面に立てるのだ。


 まるで巨人になった気分を味わえる!


 いつもよりも遥かに高い視線でこちらを睨む蛇と見つめ合う。


 じーっと見ているなと思ったら、ゆっくりと尻尾を伸ばして僕を捕まえようとする。


 そのまま炎を伸ばして尻尾を払って、頭部に向かって飛び上がる。


 父さんから教わった〖炎帝〗の使い方。


 炎で肩から二本の腕を伸ばして、さらに炎の剣を四本作る。




「――――炎帝奥義! 四双連舞!」




 蛇の頭部を通り抜けると爆炎に包まれ蛇の頭部が四等分に切り裂かれた。

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