第11話 スキル

「あ、あの……母さん?」


「どうしたのかしら? ユウマ」


 にこやかな笑みを浮かべている母さんは、何故か家の扉の前で両手を開いている。


「それだと外に出られないんだけど……」


「そ、そうだったわね。えっと、母さんも一緒に出かけてもいいかしら?」


 あたふたする母さんは昨晩からずっと僕の隣を離れなくて、寝る時ですら同じベッドに潜り込んできたくらいだ。


 それ程心配なのだろうか……。


「い、いいけど、退屈だよ?」


「構わないわ!」


「う、うん……」


 家を出て、いつもの日課のために村中を走り始める。


 慣れた道を走っているが、いつもよりも村人達が近くにいる気がする。いや、間違いなく近くにいる。


 今まではよく分からないで使っていたスキルだが、覚醒者になった事でスキルを確認できるし、使い方も分かるようになった。


 中でも〖探知〗というスキルは周囲の状況を見分けるスキルで、まるで上から自分の周囲を覗き込むようなスキルだ。


 母さんか父さんのどちらかが覚えているスキルだと思うけど、異世界の人ってみんなこんなに便利なスキルを持っているのか? 前世と比べると随分と暮らしやすい世界だなと思う。


 というのも、僕はまだうちの村から外に出たことがないから、他の異世界の人達がどういう生活を送っているかが分からない。


 うちの村人達は動きも早いし、〖探知〗と〖上級鑑定〗でその強さがより一層分かった。


 どうやらこの世界のレベルの上限はみんな10になっているようだ。


 うちの村の人達も全員がレベル10に到達している。


 そもそも、前世から考えればレベルは100まであるという固定観念みたいなのがあったが、基本的には10までらしい。


 ただし、それを超える方法があって、僕が初めて自力で獲得したスキル〖限界突破・下級〗である。


 このスキルはレベルが10を超えて20まで上げられるようになるスキルだ。



---------------------

 名 前:ユウマ・ウォーカー

 才 能:なし

 レベル:10/10


 体 力HP:F+  魔 素MP:F+


 筋 力:F+  耐 久:F+

 速 度:F+  器 用:F+

 魔 力:F+  知 力:F+

 耐 性:F+  運  :F+


 スキル:

---------------------



 これが今の僕のステータスだ。


 まさか、魔王種とやらを一体倒しただけでレベルが10に上がるとは思わなかったけど、魔王種というんだから、前世の事を考えれば当然の事かな?


 ただ、一つだけ気になるのは魔王種なのに僕でさえ一撃で倒せた。


 つまり、〖炎帝〗を持つのは父さんの方だと思われ、父さんも魔王種を一撃で倒せるということ。


 もしかして、異世界の魔物って弱いのか? 魔王種って普通にいるのか?


 以前母さんが猪と同じくらい強くて怖い魔物がいくつも住んでいると話していたから、この世界の魔物は大半が魔王種という名前かも知れない。


 そんなことはひとまず後にして、



---------------------

 名 前:ユウマ・ウォーカー

 才 能:絆を紡ぐ者

 レベル:10/20


 体 力HP:D-  魔 素MP:D-


 筋 力:D-  耐 久:D-

 速 度:D-  器 用:D-

 魔 力:D-  知 力:D-

 耐 性:D-  運  :D


 レジェンドスキル:

〖限界突破・下級〗 etc.

---------------------



 これが限界突破が反映され、他のステータスが上がるステータスが反映された現在のステータスだ。


 まず、スキルにはいくつかの種類に分かれている。


 一つ目はステータス上昇系統スキルで、僕が持つのは〖身体能力上昇〗〖魔力能力上昇〗〖運気上昇〗だ。


 二つ目は魔法関連スキルで、〖魔素消費軽減〗〖二重詠唱〗〖詠唱速度上昇〗〖高速詠唱〗で後半の二つの違いはよくわからない。


 三つ目はステータスとは違う能力上昇系スキルで、〖反応力上昇〗だ。


 四つ目は耐性スキルで、基本的には属性耐性と状態異常耐性と、能力低下耐性と、精神異常耐性の四種類があるようだ。僕はいくつも持っていているが、統合されているのは〖全属性耐性〗と〖能力低下耐性〗だけだ。


 五つ目はマスタリースキルで、こちらは行動や装備、魔法に対するスキルで、僕が持つ〖剣術〗のおかげなのか、今なら木剣でも岩とか簡単に斬れそうな気がする。試してはいないけど。


 他にも火魔法や光魔法、無魔法だと使えるのはありがたい。


 六つ目は最後のレジェンドスキル。スキルの上位版の特殊なスキルのようで、一度使用すれば絶大な効果を持つ〖炎帝〗などのスキルもあるし、僕がウンディー姉が見える理由は〖精霊眼〗というレジェンドスキルのおかげだな。


 そして、その中でも最も重要なのは、各スキルの後ろに〇級という文言が付いている。


 つまり、同じ剣術でも〖剣術・下級〗と〖剣術・超級〗では天と地程の差があるのだ。


 〇級は全部で六つあり、下から下級、中級、上級、超級、極級、神級となっている。


 僕が持っているスキルの大半は超級で、中にはその上の極級まで持っている。


 もしかして、僕が知らないだけでうちの両親は凄い人なのか?


 いや、簡単に倒せた魔王種は〖身体能力上昇・神級〗なんてのを持っていたから、超級も極級も神級も名ばかりでただの数字の差だと捉えるべきだと思う。


 今度はステータスだけど、どうやらF-からスタートして、F、F+と上がっていき、A+からS-、S、S+と上がっていくようだ。


 レジェンドスキル〖炎帝〗を使うと全ステータスが一時的にS+に上昇し、とんでもない身体能力の上昇を体験できた。


 そんな〖炎帝〗は一日一回しか使えず、一度使ったら三分しか持たないようだ。


 スキル〖身体能力・超級〗は〇級の中で四番目の強さだからなのか、身体系ステータスを四段階上げてくれる。


 レベル1の段階で元々F-だったステータスがEまで上昇していたからね。




 それにしても……母さんはいつまで追いかけてくるつもりなんだろうか。


 村一周が終わって家に帰って来たら今度は素振りの練習だ。


 いつもなら家の中で〖探知〗で見守ってくれる母さんが、不思議とずっと隣から離れない。


 …………今日お昼ご飯ちゃんと食べられるのだろうか?

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