4話 フラれた男子は怒られる

 葵音と裏門で話してからかれこれ2週間が経とうとしている。


 「絃羽、この問題わかる?」


 「、、、んー、ごごごめん、わ、わからないかな」


 こんな感じの会話は何回目だろう。1週間ずっとこんな感じだ。


 転校してから、葵音は普通にこうして接してくれている。


 ただ俺は違った。


 でもどうしても無理だ。普通に話せない。


 そっけなくなる。


 

 すると、葵音が声のトーンを落として言う。


 

 「あー、もう限界。今日の放課後この前と同じ場所、時間に集合ね」

 


 雰囲気がいつもとは違う。


 確実に怒っている。


 いや、それより呆れている。諦観の声。乾いた声。


 理由は明白だ。俺のこれまでの葵音の努力を踏みにじり、無駄にするような態度だろう。


 葵音が怒るのも当然だ。




 そして5時、俺は裏門に向かった。


 かなり緊張している。


 葵音はもう来ていた。


 葵音は俺にいきなり


 

 「今からちょっと厳しいこと言うかもしれないけどごめん、、、


 

 やっぱあのときに絃羽をフッててよかった


 

 なんなの?私が必死で気まずい空気なくそうってしてんのに、それを無駄にするような態度ばっかしてさ


 ちょっとは人の気持ち考えてよ」


 グサグサと俺の心に、葵音の言葉ひとつひとつが突き刺さる。


 葵音は続ける


 「ごめんちょっと言いすぎた、、


 

 だからさ、もう話さないようにしようよ



 そっちの方がお互い気遣わなくていいし、楽だよ。必要最低限の会話しかしない、これでどう?席替えもそろそろっぽいし」


 「う、うん、ごめん、本当に、そんなつもりは微塵もなくて、、、本当にごめん」


 今の俺にはこれしか言えなかった。


 「ならよかった じゃあそういうことで」


 葵音はそう言って帰って行った。



 


 情けなかった。ただただ自分が情けなかった。


 葵音の優しさに甘えすぎていた。


 好きな子にこんな辛い思いをさせてしまった。


 男として、いや、人として最低だ。


 もっと、葵音の気持ちに応えなければならなかった。


 もっと、葵音が良い気持ちで話せるように接するべきだった。


 転校してから今まで、俺は間違ったことしかしていなかったということを改めて痛感した。


 後悔の念しかない。

 

 

 もう散ってしまってしばらく経った桜の花びらが、地面を覆い尽くしている。


 まるで、長年クローゼットにしまっていた桃色のカーペットを掃除もせずに、そのまま敷いたかのごとく。


 


 このことをきっかけに自分を変えようと思った。  


 そうやって俺は白波大輝しらなみたいきというクラスメイトに頼ったのだ。

 


 


 





 

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