幸福


鋭角に傾いた太陽が露を照らす朝。

宝物を失くした子供のように、不貞腐れて

下を向いた俺に一体何ができるだろう。

薄い光が差し込む部屋には、描きかけの抽象画と筆がおいてあった。

青、緑、黄色。やるせない喪失感と

どこかまだ諦められないような気持ちを

キャンバスに叩きつけた。


今年の春は、いつもより煙草が早く減る気がする。



海に来た。

ふと思い立った俺は外の空気を吸いながら

絵を描こうと思った。俺には他にできることがないからだ。

珈琲を買い、スケッチの準備をする。

風の音と足音、親子が楽しそうに遊んでいた。

画用紙に向かって目一杯筆を泳がせたが

出来上がったものは俺自身よくわからないものだった。


雨が桜を散らした。4月。

装い新たに、新生活に目を輝かせる若者達が嫌に眩しい。


別々の人生、別々の春。

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或る一日について。 hibi @yuya84

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