episode 2 「害だ」

「タバコは体に悪く、受動喫煙で他の人にも害を与えてしまいます。」

 これは、学校で行われた薬物乱用防止教室の話だ。中学生がこんな話を聞いてなんの役に立つか。大人になってからの話だと思うが、この話で一番役に立っているのは教師だと思う。教師だって人間だし、吸いたい人もいると思いますよ。しかし、しかしだ。学校の敷地内で吸うのはどうかと思うぞ。法律が改正され、学校の中で吸えなくなってしまった。教師は、吸いた過ぎて頭を使うようになった。俺は見てしまったんだ。学校の裏で隠れて吸っているところを。

「今日の部活さぁ。気分転換に学校の裏を回って走ってみない?その方が楽しそうだしさ、部活もサボれそう。どうせ顧問見てないしさ。」

 陸上部で、個人練習になると飽きてしまう。なので、景色を変えて学校の裏を走ることにした。俺は友達と二人で裏に歩いて行った。

「やっぱ、ここバレないな!最高かよ!走らなくてもいいか。歩いとこうぜ。」

「ここなら誰も来ないだろ。」

 そう言って二人は角を右に曲がった。すると、そこにはマスクを外した怪物のような顔の理科教師がいた。二人は声も出なかった。

「うぉ。おめぇら、なんでこんなとこにいるんだ。」

 その言葉と一緒にタバコをジャージのポケットに直に入れた。

「え、あのぼくたち、今部活で歩いていて。」

「陸上部か?」

「はい。」

 相当、怒っているように見えた。多分邪魔をされたからだ。その後は何事もないように終わった。この話は全校に拡散されてしまった。いや、拡散されなければならない。その次の日の授業は、普通だった。その事件から何ヶ月かして、また事件が起こった。

 体育終わりである生徒が、暑くて窓を全開にした。そのことを忘れて授業を受けてしまった。窓は教室の外の窓だったので、誰も空いていることに気づかなかった。そして授業が終わり、廊下に出ると、そこはタバコの匂いだった。

「おいおい、やべぇーぞこれ。俺らのせいでタバコの匂い全部入ってきてるぞ。」

 生徒も笑うしかなかった。その匂いは害を与える匂いだ。

 理科教師はたまに授業中機嫌が悪くなることがある。それは、吸えないからだ。なのでいつも、生徒は機嫌をとらなければならない。

 受動喫煙よりも害だ。

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