堂々と給食に調味料をかける教師に制裁を

笹木村=ヨォーン=野森

episode 1 「教師だから」

俺は見てしまった。俺のクラスの主任が給食に調味料をかけてるところを。それも一味。あぁ、またかけた。何回かけんだよ。あぁ、あれだから太るんだよ。かけなくても同じか。その先生は、生徒指導で生徒を指導する立場だ。生徒からは裏で狸と呼ばれている。もちろん太っているからだ。他に理由はない。冬になると、緑のフリースを着る。これで緑の狸の完成だ。かける時は決まって、周りを少し見る。意味ないのに。まさか緑の狸に一味をかけるのと一緒で、緑の狸は一味をかけないとだめなのか。はは。笑えるぜ。

 友達も見ていたらしく駆け寄ってきた。

「おいおい、あいつ、給食に調味料かけてたよな。生徒指導としてありえなくね。俺らも持ってきたいな。持ってきてやるか、勝手に。そしたらあいつなにも言えないよ。やろーぜ。」

 別に調味料を持ってきたい訳でもないが、俺はそれ以上に生徒を指導する奴がこんなんでいいのかっていう事だ。思い切って、担任に聞いた。担任は若くして教師になったばかりだ。

「教師が学校に調味料を持ってきていいと思いますか?しかも生徒指導っていう立場でですよ。ありえないですよね。」

「あははは、まぁいいんだよ。あの人は。教師だから。ね。」

 『教師だから』という言葉で片づけられた。担任も明らか主任のことが嫌いそうだった。俺は腹が立ち、学校のアンケートに書いてやった。

「学校に調味料を持ってきてもいいんですか?」

 ってね。そしたら、そのアンケートを見た主任がこう言ったらしい。

「はぁー。わぁのことだな。」

 職員室の机で一人、バランスボールを椅子がわりにした緑の狸。給食に調味料をかけることは、今でも続いている。毎日、毎日、かけている。一生懸命かけている。それを俺ら生徒は給食を食いながら、こっそり見て。

「今日は黒(ブラックペッパー)だな。」

「珍しくね。」

「10回に1回の確率くらいでくるよ。」

 と、平和な会話を続けている。

 

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