第3話 進展

 さっきの話が本当なら、確かに、普段のパパからは考えられないほど変だ。何でそんなに冷たいんだろう。自分を愛してくれた家族なのに。

 でも、今の電話と昨日のステーキはつながってそうってことが見えてきた。たぶん、昨日パパは自分の親が死んだことを会社で知らされたから、会社を早引けしたんだろう。そして昔何かトラブルがあったから親のことが嫌いで、その親が死んじゃったからお祝いにステーキを食べた。親のことが嫌いだから葬式には出ようとしない。恐らくそういうことなんだろう。むしろそういうストーリーしか描けない。


 パパがそんな非常識な人だったなんて知らなかった。頭の中がぐらぐらしてきた。

 あれ、じゃあママは? パパはママにも言わなかったんだろうか。いや、たぶん違う。さっきママは微妙にはぐらかしてた。ママもきっと知ってるんだろう。パパの親が死んじゃったこと。パパがそれを知った上で、お葬式に行こうとしないこと。ステーキなんか買ってきたこと。

……パパもママも、二人ともおかしいよ。二人とも普通の人で、お金持ちじゃないけれど幸せな家庭で、今まで幸せな毎日だった。だけどそれが、がたがたと音を立てて今この瞬間崩れはじめていることを、私は悟った。


 時計を見ると、もう八時を過ぎていた。もう今日は休んじゃおう、どうせ今から行っても遅刻だし。私は私服に着替えることにした。

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