第二章
神藤探偵事務所にて、自分の席に座りながら、神藤は新聞のニュースに目を向けている。
「今回は右腕か……」
ヒロキはそれを聞いて、神藤に語りかける。
「神藤さん、ひょっとして噂の連続少女欠落事件について調べているんですか?」
「もうそんなふうに言われてきたか……。まぁココ最近に起きている、少女の遺体が体の一部分がない状態で見つかったという事件のことなら、只今絶賛調査中だ……」
連続少女欠落事件。
十日ほど前、一人の少女が遺体で発見された。その少女の遺体は何故か左足を切断された状態となっていたらしく、事件現場周辺にもそれらしきものは発見されなかった……。
三日後、二件目も一件目と同じ歳くらいの少女が犠牲となった。その時も、少女の足は片方だけ切断されていた。
さらに二日後、またしても少女の遺体が発見された。その時の少女の遺体は、足ではなく左腕を切断されていた。
そして、その二日後に起きた四件目に関しては、頭、両腕、両足を残して胴体が丸ごとなくなった状態で遺体が発見された……。
ともかく、そういった遺体の状態からか、世間ではそれらの殺人事件が、連続少女欠落事件というように言われ始めたのである。
神藤は、もう一度新聞のニュースを眺める。
「今回は右腕か……」
ヒロキは、一連の事件の特徴を自分なりに整理し、思ったことを話した。
「まるでパーツを集めてるみたいですね……」
神藤は、デスクに置いてあるコーヒーを飲んでから話しだした。
「何故体の部位を集めてるのか……、非常に悪趣味だ……」
神藤は、冷たい目をしながらそう言う。
「吸血鬼の次は殺人鬼かぁ……」
ため息を吐きながらそう言うヒロキ。神藤は、少し苦笑いをすると、
「吸血鬼が消えた途端にこれだと……、そろそろこの街も物騒になってきたものだな……」
と言った。すると、ヒロキは思い出したかのように、
「それはそうと……」
と、語り始める。
「吸血鬼事件で思い出したんですけど、なんで急に絵梨花さんはいなくなったんだろう……」
絵梨花とは、吸血鬼事件が町で起きていた際に、ヒロキが出会った女性だ。しかし、吸血鬼事件の終焉と共に、いつの間にか彼女はその姿を消したのである……。
暗い顔になるヒロキに対し、神藤は話しかける。
「……ヒロキ、君は今もあの喫茶店に通ってるのか?」
ヒロキはそう言われると、少し微笑みながら話し始める。
「えぇ……、いい店なんですよあそこ……、コーヒーの苦味が強めですが……」
「そうか……、今度私も連れて行ってくれないかな?」
「えぇ……、行きましょう……」
と、神藤に返すヒロキ。ヒロキは周りを見渡して、ある人物がいないことに気づいた。
「そういえば真由美ちゃんは?」
真由美は友人と共に美術館にいた。
「ごめんねマユちゃん、付き合ってもらっちゃって……」
真由美の友人は申し訳なさそうにそう言うと、真由美は笑って、
「いいよ、私だって暇だったわけだし」
と言った。
さて、今どきの女子高生が休日に美術館?、と思うかもしれないが、これに関してはそれなりに理由がある。今、真由美と一緒にいる友人は、ポポちゃんというゲームキャラのファンであった。そして、そのポポちゃんとこの美術館が期間限定でコラボ展覧会をすることとなり、彼女達はその展覧会に参加していたというわけである。
「でも、展覧会が始まる時間より早く着いちゃったね……」
と話す友人に対し真由美は、
「せっかくだから美術館側のほうの展示とかも色々見てみようよ!」
と提案する。
友人は、真由美の提案に乗り、美術館側に足を運ばせる。歴史的に名高い画家が書いた絵画や、一見歪でありながらも、何処か統合性の取れたような彫刻物など、様々な芸術作品が展示されていた。
そんな中、真由美とその友人はある作品を目にする。それは、まるで本物の人間の女性をそのまま固めたかのような像だった……。それを見て、真由美の友人は思わず息を漏らした。
「すごい……、でも……。ねぇ、この像の顔真由美にそっくりじゃない?」
真由美はそう言われると、像の女性の顔をじっくりと眺める。
「そうかな……?」
いざ自分の顔に似ていると言われてもしっくりとこない真由美。
そんな二人の元に、一人の男性が近づいてきた。
「おや、この像に興味を持たれましたか……」
その男は、像を眺めるのに夢中になっていた二人にいきなり声をかける。
「え?」
急に声をかけられ思わず振り向く真由美。
「……!」
真由美の顔を見た男は、少しだけ目を見開いて黙り込む。その様子を見た真由美の友人は、その男に声をかける。
「あの、あなたは?」
男は、その声を聞いて我に返る。
「あぁ、私は
石垣の自己紹介を聞いて驚く二人。
「さ、作者さんだったんですか!?。すごいイケメン……」
友人のその一言に、思わずこらこら……、と言う真由美。だが、石垣は真由美の友人よりも真由美そのものに興味を向けていた。
「しかし……、見れば見るほど似ている……」
自身の作品である像と、真由美の顔を見比べる石垣。真由美は、そんな石垣の様子を見て話しだす。
「あの、この像のモデルって……」
石垣はそう言われると、少し悲しい顔になりながら話し始めた。
「私の妹です……、と言っても、もうこの世にはいないのですが……」
真由美は、それを聞いて申し訳なくなる。
「すいません……」
真由美の一言に対して石垣は、
「いいんですよ……。もう二年も経ちましたから……」
と、自らが創りだした像を眺めながら言った……。
しばらくの時間が経過し、真由美は事務所に帰宅した。
「ただいまー」
ヒロキはその声を聞いて、
「あ、おかえり真由美ちゃん」
と返す。神藤も同じように返すと真由美にそのまま語りかけた。
「どうだった?、美術館の感想は」
真由美はそう言われると、
「案外楽しめたよ、面白い体験も出来たし」
と、返した。ヒロキは、それを聞いて興味津々となり真由美に語りかける。
「面白い体験って?」
「偶然なんだけどね、私そっくりな像が展示されてあったんだ。で、友達と話してたら、その像の作者とも会うことができて……」
その話を聞いた神藤は、少々真面目な顔つきとなりながら真由美に語りかける。
「偶然か……、その作者というのは……?」
「えっと……、名前は確か石垣響也って人」
神藤は、その名前を聞いてある一人の人物のことを思い出した。
「石垣響也か……、確かそれなりには有名な彫刻作家だった気がするな……。彼の作り出した像はどれもその対象物の輪郭を細かく再現した芸術的なものばかりだったよ……。だが……」
神藤のその、だが……、という言葉が気になる真由美。そのまま神藤は話を続ける。
「確か彼は、二年前の交通事故で妹を無くしたショックで、作品を作らなくなっていった……。そんな彼の作品が美術館にあったということは……、どうやら作品を作れるほどには、彼のメンタルも回復してきたというわけか……」
真由美はそれを聞いて、少し暗い顔となる。神藤はその顔を見て、申し訳なくなり謝罪した。
「すまない、真由美もお母さんを……」
「大丈夫です、大丈夫ですから……」
そう言うと、真由美は自分の部屋へと歩いていった……。それを見たヒロキは、神藤に対して注意するように話しかけた。
「神藤さん……!」
「す、すまない……。やはりまだ立ち直り切れてはいなかったか……」
事務所内に、しばらく暗い雰囲気が流れた……。
それからしばらくして、ヒロキは夕飯の材料等を買いにいくこととなり、せっかくだからと真由美も連れていくことにした。真由美も特にこれといった用もなかったため、ヒロキの買い物に付き合うことにした。
「少しは気晴らしになったかな?」
ヒロキが真由美に話しかける。
「うん、だいぶ楽になった」
「ならよかったよ……」
真由美のその様子を見て安心するヒロキ。そんなヒロキに対し、真由美が話しかける。
「そういえばおじさんから聞いたけど、例の事件ってどうなってるの?」
ヒロキはそれを聞いて、真由美に確認する。
「欠落事件のこと?」
「そうそう!、その事件!」
「あれは……」
----!
「っ!?」
事件のことを話そうとした直後、ヒロキの頭に例の音が響く。急に黙り込んだヒロキを見て、
「どうしたの?」
と、真由美が言う。そしてヒロキは、
「危ない!!」
と叫び、真由美を突き飛ばした。直後、上空から奇妙な生物がヒロキ達目掛けて襲いかかってきた。
その生物は、緑色の体色に腕が鎌のような形の蟷螂に近い姿をしていた。
ヒロキと真由美は、目の前の怪物に恐怖した。
「なんなの……、あれ……」
怯える真由美の手を、ヒロキは咄嗟に掴んで走り出した。
「逃げよう!、真由美ちゃん!」
全速力で逃走しだしたヒロキと真由美。だが、どんだけ逃げようとも怪物は先回りして迫ってくる。
「きゃああ!!」
真由美が叫ぶ。ヒロキは真由美の手を再び引っ張って走り出す。
それからしばらくして、二人は人気のない場所にたどり着く。そして、二人は物陰へと隠れた。
「真由美ちゃん、ここは俺がなんとかしてみる。君はその間に探偵事務所に逃げるんだ……!!」
そう言うと、ヒロキは真由美を物陰に隠したまま、怪人に向かい走り出した。
「ヒロキさん!!」
怪物の前に飛び出すヒロキ。
「こんのぉおお!!」
怪物に掴みかかるヒロキ。だが、怪物は自分の腕の鎌を振り下ろし。ヒロキの体に傷を付ける。
「ぐっ……!!」
その痛みで膝をつくヒロキ。怪物はそれを見て、ヒロキの顔を蹴り飛ばした。
「ぐあっ……!」
地面に倒れるヒロキ。だが怪物はヒロキの様子を不思議そうに眺めていた。
「妙だ……、こんだけ切っているのに、血の一滴も流さないとは……」
「……!?」
怪物が人間の言葉を喋ったことに驚いたヒロキ。だがその直後、再びヒロキの頭に例の音が鳴り響いてきた。
「……っ!?」
怪物はなにかの気配を感じ、後ろへと下がる。直後、ヒロキの体は眩しい光に包まれ、その姿を、鋭い角を生やした銀色の超人へと変えていった。
ヒロキが変わったそれは、ゆっくりと立ち上がった。それを見た怪物は、ただならぬ嫌悪感を感じてかギヌスに襲いかかる。
「ふんっ!、はあっ!!」
怪物の攻撃を防いだ後、その顔面を力強く殴り飛ばすヒロキ。
怪人は、腕の鎌を振り回してヒロキへと襲いかかる。
「……!?、くっ……!」
振り下ろされる鎌を両手で抑えるヒロキだったが、怪物は、もう片方の腕の鎌をヒロキの脇腹を目掛けて振った。
「ぐあっ……!!」
その衝撃で、横に大きく吹き飛ばされるヒロキ。
地面に倒れるヒロキを見て、怪人はゆっくりと近づいていく。ヒロキは、なおも立ち上がり、怪人に向かっていった。今度は怪人の両腕の鎌を掴むヒロキだったが、その直後、
「女の頭を差し出せ……」
と、目の前の怪物が語りだした。ヒロキはその言葉に反応するが、直後、怪物は残った足でヒロキの腹部を膝打ちし、そのまま鎌で突き飛ばした。その衝撃で地面に叩きつけられるヒロキ。
怪人はそれを見て、その場から姿を消した。
「真由美……、ちゃん……」
ヒロキは、そのまま意識を失った……。
事務所にて、扉を勢いよく開いて真由美が入ってくる。その様子を見て、神藤と隼戸が驚く。
「どうしたんだ真由美!?」
「神藤さん!、ヒロキ君が……、変な怪物に襲われて……」
「なんだって……!?」
神藤は驚きを隠せない表情となった。そんな神藤の横で、隼戸が語りだす。
「おいおい真由美ちゃん……、ドッキリするんだったらもうちょいマシな……」
「真由美を頼む!!」
神藤は、隼戸の会話を遮り事務所を飛び出した。
「おいちょっと!?」
隼戸が声をかけた時には、扉はバタンと音を立てて閉まっていた。怖がる真由美の肩を、隼戸は触ってみた。その肩は、僅かながら震えていた。
「冗談じゃねえよ全く……」
目を開くと、そこは真っ白な空間の中。俺はそこにふわりと浮かんでいた。
『目が覚めたかい?』
誰かが俺を呼んでいる。誰だろう……?、と思っていると、その声は間髪入れずにまた話し始める。
『あの怪物……、
あの怪物は、そこに生息しているのか?。
『正しくは、その人物が……、だ。詳しくは君を起こしにくる男から聞くといい……』
待て!、あなたは誰なんだ!!。
『また会おう……、ギヌス《・・・》……』
ギヌス……?。
その直後、真っ白な空間は徐々に真っ暗になっていった……。
「……ロキ……、ヒロキ……!!」
ヒロキが目を覚ますと、夜空を背景に、神藤が険しい顔で叫んでいた。
「神藤……、さん……」
ヒロキの意識が戻ったのを見て安心する神藤。ヒロキは、ガバッと体を起こし、神藤に語りかける。
「真由美ちゃんは!?」
「事務所の中だ。大丈夫だ、隼戸がいる……」
それを聞いて安心するヒロキ。神藤はさらに話を進める。
「真由美ちゃんからある程度の話は聞いた。君が怪物から真由美を庇ったことも……。ヒロキ、実は先日に起きた吸血鬼事件に関しても、一部で怪物のようなものの目撃証言があった。その時の目撃者達の証言はさすがに信じてもらえなかったらしいが、今回君が見たという怪物とは、それらと何かしら関係はあるはずだ……」
神藤の話を聞いて、ヒロキは先程まで見ていた夢のようなものを思いだす。
「
それを聞いた神藤は顔を強ばらせた。
「ヒロキ……、何故それを……」
ヒロキは神藤に説明した。
「さっき、意識を失っていた時に誰かが語りかけてきたんです。怪物を倒したいのなら、城南山の森の中を探せって……」
「城南山……、そうか……、やはり……」
神藤の反応を見て、ヒロキは神藤が何かを知っていることを察した。
「神藤さん、あの山の森の中に何があるんですか!!」
ヒロキに対して、神藤は答える。
「隼戸と一緒に、連続少女欠落事件について調べていたんだが……。それを調べていくうちに、怪しいと思われる人物が明らかになった……。そして、城南山の森の中には、彼がいると思われる隠れ家のようなものがあることがわかった……」
ヒロキは、神藤に対して恐る恐る聞いてきた。
「彼って……、誰です……?」
城南山の森の中を歩くヒロキ。神藤が教えてくれたその場所の情報を頼りに、徐々に目的へと近づいていく。 やがて、ヒロキはある一軒家をみつけた。
「ここか……」
家の扉を叩くヒロキ。
「すいません!、誰かいらっしゃいますか!」
家の中からは特に返事はない。ヒロキは、もしやと思いドアノブに手をかけた……。
(……!?、空いてる……)
ゆっくりと家の扉を開き、その中に入る。そこは、家というよりかは誰かの工房と言うほうがふさわしい内観だった。
そんな家の中を歩いていると、赤いソファーの上に何かが大きな布でかぶさっていた。ヒロキは、その何かがなんなのかが気になり始めた。そして、恐る恐るその大きな布をずらしていった……。
「こ、これは……!?」
ヒロキの目の前に映ったそれは、死体だった。それもただの死体ではない、手や足は無理やり縫い合わされ、首だけがない状態でそこに座っていたのだ。しかもその異臭からか、その周りをウジが飛びまくった状態となっていた。
ヒロキがそれを見た直後、その後ろで足音が響いた。
「私のアトリエで何をしているんです?」
「……!?」
その声を聞いて振り向くヒロキ。目の前には一人の男の姿があった。その男に向かって、ヒロキは語りかける。
「これは一体なんなんです、どうしてこんな……!」
男は答える。
「これは、私が今制作している作品ですよ……」
「作……、品……?」
ヒロキは、こいつは何を言っているんだ?、と言うかようにそう口にだした。そんなヒロキにお構いなく、目の前の男は話を進める。
「少々趣向を変えましてね、材料を無機質なものから生命をより感じられるものにしてみたんですよ……」
「何を言っているんです……?」
「あと少しなんですよ……、私の最愛の妹が完成するまで……」
ヒロキは、目の前の男に恐怖しながらも、一旦心を落ち着かせて、その男に語りかける。
「……やはりあなたが、例の事件の犯人なんですね、石垣響也さん……」
石垣は、それを否定することもなく話を続ける。
「しかし、ここまで再現するのに苦労したものですよ。記憶を頼りにかつての妹と同じような手足を見つける必要もありますし、その材料も滅多に見つかるものではありませんから……」
ヒロキは石垣の発したある単語に反応した。
「材料だと……」
「あとは、君と一緒にいた真由美という少女の頭さえあれば……」
「ふざけるな!!、そんなことのために……、お前のそんな狂った欲望のためだけに彼女達は……、殺されたというのか!!」
ついに怒りを抑えられなくなったヒロキ。だが、それはヒロキだけではなかった。
「狂った……?、違う、断じて違う!!。あんな事故さえ起きなければ、私の妹はまだ生きていたんだ!!。あんな不運な事故だけで妹の全てが失われていいはずがない!!。だからやり直すんだ……、失ったのならまた作り直す……、ただそれだけだよ……」
石垣はそう言うと、自らの姿を蟷螂のような怪物の姿へ変える。そして、ヒロキへと腕の鎌を振り下ろす。ヒロキはそれを回避した、そして、怪物の鎌はソファーに座っていた肉の塊に傷を付けた。
「あぁ……、私に傷をつけさせたなぁああ!!」
ヒロキに怒りをぶつけるように鎌を振り回す怪物。
ヒロキは、怪物を睨みつけると、体の中から力を解き放つ。直後、ヒロキの体は光に包まれて銀色の超人、あの声が言うギヌスの姿へと変えていった……。
ギヌスと怪物は、森の中へと進んでいった。
二人はしばらく互いに睨み合い、やがて、怪物が腕の鎌を振り回してギヌスに襲いかかってきた。ギヌスは、両方の鎌を掴み、怪物のを直接蹴り飛ばした。
大きく吹き飛ばされる怪人、その怪物を休ませる間もなく、ギヌスは怪物に向かって走り出し、殴りかかろうとするが、それに対して怪物は、腕の鎌を再び振り回して反撃する。
「っ……!」
それを間一髪のところで回避するギヌス。
怪物の鎌のせいで近づこうにも近づけない状況に対し、ギヌスは何もない空間から長い槍を取り出した。ギヌスは、肩を慣らすようにそれを振り回してから、槍を構えた。それを見た怪物は、再びギヌスに対して鎌を振り下ろした……、だが、
「ふんっ!、はあっ!!」
ギヌスは、怪物の鎌を槍で弾き返し、そのまま槍で攻撃を与えていく。
攻撃の衝撃で吹き飛ばされる怪物。再度怪物はギヌスに鎌を振り下ろすが、ギヌスが振り回す槍に何度も攻撃が防がれ、また攻撃を受けて突き飛ばされる。
ギヌスは、ゆっくりと歩き始め、地面に倒れながら悶える怪物へと近づく。怪物が、ギヌスを見た時にはもう遅く、ギヌスは、怪物の体を槍で思いっきり串刺しにした。
「----ッ!!」
激しい痛みで思わず怪物は叫んだ。
怪物はなおも鎌を振り回そうとするが、その前に力尽きてしまい、あげた腕を地面に下ろした。
ギヌスは槍を引き抜き、怪物を睨みつける。
「ようやく……、私も妹の所に……」
それが最後の言葉だった。怪物の体は徐々に人の姿へと戻っていった。
ギヌスは、彼の死を確認してか、その場から歩きだす。そして去り際に、
「貴様のような奴が、天に昇ることなど許されない……」
と、息もなく倒れる石垣に対して言い放った……。
石垣のアトリエでは、石垣の死体の周りを警察が取り囲んでいた。
その様子を、外からヒロキ達が見ていた。
「彼は、妹を失ったショックで、妹をモデルとした像を作った。でも、それだけでは満たされなくなり、少女達を殺し、手足や体を切り取った……。そして、より本物に近い、妹のような何かを作ろうとした……」
ヒロキの会話を聞いて、隼戸がなんとも言えない感情のまま語りだす。
「理解できねぇなぁ……。でもまぁ、もっと理解出来ないのが……」
「なぜ、彼が森の中で死んだのか……、か?」
隼戸にそう語りかける神藤。ふと、神藤はヒロキの顔を見て話し始める。
「まぁ、どんな結果とはいえ、この事件は終わった……、これだけは確かだ……」
そう言って、神藤は一人その場から立ち去った。
「ヒロキ……、君は……」
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