寮生活開始!④
広い、広すぎる。置いてある家具も豪華すぎる。素人が見ても良いものが使われているのが分かる。
「とりあえず座って!私がお茶を用意するわ!」
「いやいやいやいや、どこに平民のお茶を淹れるお嬢様がいるの!?椅子に座って優雅に待ってられないよ!」
「別に座って待っていたってなんとも思わないですわ。私が淹れるお茶が一番美味しいの。だから他の人に淹れさせるよりも自分で淹れたほうがいいのよ。だから座っててくれるかしら?」
「わ、分かりました……」
クラリスから放たれる威圧感に気圧されて渋々座る。平民が、さらに言えば親無しと馬鹿にされる孤児院出身の平民が、こんな扱いを受けていいものなのかと悶々と考えているとクラリスのいる方から紅茶の良い香りがしてきた。
「紅茶に合うケーキも用意してるから楽しみに待っててね。」
「!!!」
ケーキは孤児院で滅多に食べられないもの。まさか食べさせてもらえるとは。うきうきである。ガラガラという音と共にだんだん良い香りが近づいてきた。
「私の領地で作っている紅茶と私のおすすめのクランベリーケーキですわ。」
そういいながらクラリスが私とクラリスの分のケーキと紅茶を載せたワゴンを押してきた。クランベリーのケーキなど初めて見る私にとって全てが新鮮だった。
これまた見るからに高そうな食器に丁寧な彫りの入ったワゴン。載っているケーキも見た目が美しく、甘い香りを放っている。何よりクラリスの領地で作られているという紅茶の色、香り、全てが上品で美味しそうだ。孤児院で最低限の勉強しかしてこなかった私にはとてもじゃないが表現できそうにない。
「さあ、召し上がれ!」
「……いただきます!」
早速ケーキを口に含んだ。
……何これ。食べたことないくらい柔らかいクリーム、ラズベリーの実とソースの上品な甘さとその中にいるほのかな酸味、口の中でほどけるスポンジ。
このケーキは間違いなく“高い”。どうしよう。「これ食べたよな、金額払えないよな、お前金額分働けよ」みたいな展開になりませんよね!?
と顔を青くしているとクラリスが
「ネアリどうしたの?もしかして美味しくなかった?ごめんね…」
と言ってきた。違う、違うんだ。
「違う、違うよ!すんごく美味しいの。でもこのケーキ高いの分かるから対価を要求されたらどうしようかと……」
「そんなことしないわよ!だから安心して食べて。」
こんなに美味しいケーキを早く食べるのは勿体なさすぎてちびちび食べてしまう。
あ、このままだとクラリスの淹れてくれた紅茶が冷める。早く飲まなければ。
「……美味しい!!!!」
紅茶なんて飲んだことは数えるほどしかないがこんなに美味しいのは初めてだった。
「でしょう?我が領の紅茶は人気なのよ。普通ならなかなかお目にかかれないものだからよく味わいなさい。」
「はい!!」
紅茶もケーキも美味しくてたくさんの量があるわけじゃないが満足感がたっぷりだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます