旅立ちの日③
なぜかお友達になってしまったクラリス公爵令嬢と今私は押し問答をしていた。
「お願いですのでクラリスと呼び捨てで呼んでくれませんか?」
「いやいやお友達になるので精一杯ですので!呼び捨てなんてしたら私の胃が持ちません!」
自己紹介をしあった瞬間にこの調子である。この短時間で懐かれてしまったようだ。
「ですが、クラリス公爵令嬢と呼ぶのは些か長すぎやしませんか?友人が呼ぶような呼び方ではないと思いますわ!せめて口調を崩してください!タメ口というものを使ってくださいな!」
「いやいやいやいや!タメ口もハードル高いですよ!無理です!!」
呼び捨てもタメ口も平民が公爵令嬢にしていいものではないことに気づいてほしい。いくらクラリス公爵令嬢が良いと言っても周りにどんな目で見られるかは容易に想像がつく。
「クラリス公爵令嬢、いくらあなたが良いと言ったとしても周りから私がどう見られるのかをお考えくださいませ。」
「!!!!……そうですわね。よく考えれば分かることですわ。ネアリを困らせるつもりはなかったですが申し訳ないことをしました…」
おっと、クラリス公爵令嬢の目に涙が浮かび始めた。鬼畜認定の危機再来。どうにかして妥協点を探さなければと思いこんな提案をしてみた。
「ではクラリス様とお呼びするのはいかがでしょうか。二人きりの時のみなら呼び捨てもタメ口も大丈夫ですよ。」
「ほ、ほんとですの!?」
クラリスは花が綻ぶような笑顔を見せ、「やっと心からの友ができたわ!」とガッツポーズをしていた。
「ネアリ、これからよろしくお願いしますわ!」
「こちらこそよろしくお願いいたしますクラリス様!」
寮に入る前から運よく最強のお友達を作れたかもしれない。私は獣人になろうとも人間になろうとも城で働きたい。なのでここでお偉いさまと関係が作れたのは大きい。だがそれ以上に友人という存在を作れるか不安だった私には権力など関係なしに心優しい友人が出来てとても嬉しかった。
「新入生の皆さん、寮に着きましたので降りて荷物を部屋に置いてきてください。部屋割は寮の玄関にあるので確認してから部屋に向かうように。」
クラリスとしゃべっている間に寮に着いたようだった。
「この後時間になったら寮内で放送が流れるので指示に従って講堂まで行くこと。そこで入学前の説明会を行います。」
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