旅立ちの日②

皆からの見送りの言葉に泣きそうになるのを隠しながら馬車へ乗り込む。

馬車の中は20人ほどの人間が乗れるほどの広さで中には5、6人座っていた。

どこに座ろうか周りを見渡していると濃い青の髪を一つに結んだ女の子が急に喋りかけてきた。

「あなた目が真っ赤じゃない、随分泣いたのね。……もしかして孤児院の人に言われて無理やり学校に行かされるの?ひどいわね!!」

少女は怒ったように言う。

その瞬間、私は自分のいた孤児院を馬鹿にされたと思い、

「違う、孤児院の人達はみんないい人だった!出会ったばっかりの人に随分なこと言うあなたと違ってね。学校に行くのは私の意志なの。たくさんお金を稼いで孤児院の人たちに恩返しがしたい。」

私の言葉を聞いた瞬間に少女は大きく目を見開いて黙りこくリ、しまいには涙を浮かべ始めた。

「ごめんなさい……!あなたたちを貶めるつもりはなかったの。私が慰問に行く孤児院でそのようなことがあったからてっきり…」

「な、泣かないでください〜!別に怒ってないので!心配してくれたんですよね?それなのに少し言いすぎてしまいました。こちらこそごめんなさい。」

「な、なぜ、あ、あな、たが謝る、のです、か?悪いの、は、わた、くしなの、に!!」

少女は更にしゃくり上げるように泣き、周りに座る人に睨まれてしまったので焦りながら

「本当に気にしていないので泣き止んでください〜!お願いしますから!!」

と必死に少女を宥めた。


はぁ、私も泣きたい。


しばらくして少女は泣き止み名乗り始めた。

「先ほどはお騒がせしてすみませんでした。私はクラリス・アクシディア。アクシディア公爵家の長女ですわ。すぐに感情を表に出してしまうので公爵家のものには見えないかもしれませんが…」

公爵…?とても胃が痛くなってきた。

「こ、公爵家のかたなんですね…。こんなド庶民と話していても大丈夫なのでしょうか?先ほどのこと、不敬罪に問われたりは…!!」

「しないですわよ!あれは私が悪かったのですから。気にしないでくださいな。」

すこし胃の痛みが治まった気がする。

だが次にクラリスから発される言葉に衝撃を受けることになる。

「もしよろしければなのですが私とお友達になっていただけませんか!?」

やばい。とても胃が痛い。オトモダチ…?

「すみません、そのオトモダチと言うのは友人と言う意味ではないですよね?」

「友人という意味ですわ!私には心からの友人というものがおりませんの。我が公爵家に媚を売りたいものばかりしか周りにはいませんので…」

とクラリスがまた目に涙を浮かべた。これは不味い。可愛い女の子を短時間に2度も泣かせる鬼畜にされてしまう。

「わかりました!!お友達になりますので泣かないでください〜!!!」

今日は私の命日なのかもしれない。

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