私のまわりで何が起きてるの!?私はこの国で平凡に暮らしたいだけなのに!
露松名留
旅立ちの日
「おはよ〜。ほら起きて!!」
いつもと同じようにカーテンを開ける。
部屋の子達が「明るい!」やら「寝かせろ!」と叫んでくるがそんな言葉をいちいち気にしていたら何も回っていかない。
ここは聖アスト王国。この国の特徴は人間と獣人の2種類が住んでいることだ。獣人は主に戦闘や肉体労働、人間は獣人が使う道具の製作など体力を使わず頭を使うものを得意とする。獣人は道具を作れないし人間は戦闘ができないためお互いを尊重しあっている。「獣人だから」「人間だから」という差別は存在していない。
その証拠にアスト王国の王は獣人と人間からそれぞれ一人ずつ選ばれ共同でアスト王国を治めている。
そんなアスト王国民皆が知っている噂がある。それは「500年に一度獣人と人間両方の特徴を併せ持つものが生まれる。」と言うものだ。その両方を併せ持つものは必ず名君になると言われているため20歳になると平民であろうとなんであろうと即位させられる。ちなみに私が生まれた歳がちょうどその500年に一度の年であった。現在私は14歳なのだがその併せ持つ者が見つかっているわけではない。なぜならその両方を併せ持つものは16歳の成人の儀にて初めて分かるからだ。
成人の儀というのは16歳になったら受ける儀式で実はここで初めて獣人なのか人間なのかが分かるのだ。獣人なら耳や尻尾などの特徴が現れ、人間なら炎のような模様が腕に浮かび上がる。
私が住んでいるのは王都ミオスにある王立ミオス第1孤児院。ここには子供は赤ちゃんから大体16歳くらいの子までがいる。基本的にみな16歳になったら街で働き始めるのだが、14歳から王都の学校で寮生活を送る人もいる。王都の学校に通えば獣人なら騎士、人間なら役所などの安定した職業に付きやすくなるからだ。かく言う私も今日から寮生活。ここで過ごす最後の朝である。
「ネア姉もう準備できたの?」
「ええ、もう準備万端よ。」
「ネア姉のことだからどうせ出てく前に忘れ物〜!とか言うんだろ。」
「そんなことしません〜〜!」
生意気なことを口々に言うが多分私がいなくなるのが悲しいのだろう。そうだと思いたい。
「ネアリ、大丈夫?不安そうな顔してるけど。」
「大丈夫よシアン。みんなと別れたくない気持ちが顔に出ちゃったみたい。」
シアンは物心ついた時からずっと一緒にいた大親友だ。同い年なのだが彼女は16歳になったら働くらしいので一緒に学校へは行けない。今までシアンとは離れたことがないので正直不安しかない。
「学校が辛くなったらここに帰ってきなよ、みんな待ってるから。」
「ありがとう。帰る場所があるだけで心強いよ。」
すると表の通りの方から馬車の音が聞こえた。
「ネア姉!迎えの馬車がきたよ!」
「分かった。今行くね!……みんな、今まであ、りが、と、う…!」
やはり声が震える。ここを出ていくときは笑顔で出て行くつもりだったが無理そうだ。
「ネアリ、泣くのはだめ。別れは良いこと。新たな出会いを生むものだから。」
「ネア姉笑えよ!!すんごくなって俺達のところに会いにこいよ!!」
「みんな……分かった。たっくさん勉強して超偉くなってくるから!またね!!!」
みんなの声を背に私は孤児院を出た。
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