第13話 スディア村

 次の日。セナ達は昼前頃に出発し。スディア村に向かう為に森の中を歩き始める。

 木々の隙間から差し込む陽の光がセナ達を優しく照らしていた。


 

 昼過ぎ頃、セナ達は森を抜けて目的地であるスディア村に辿り着いた。


「ねえ、ルイア、天命の盾となる者が何処にいるのかってわかったりするの?」

「何処にいるのかはわからないが、気配だけは感じる」

「そうなのね。それにしても、貧しい暮らしをしている人達と裕福な暮らしができている人達の格差が激しい村ね……」


 セナ達が辿り着いたスディア村は貧民が多いのか、村に入ってから通り過ぎる人々はボロボロの服を着ていたり、服が汚れていたりしていた。そして、両道に転々と老人が横になっていたり。貧しい暮らしをしている者達が多いことが伺える。


「そうですね。さっき走り去って行った少年が着ていた服ぼろぼろでしたし、道端で寝ている老人もちらほらいましたし」

「なんか俺がいたリティス村に雰囲気が似てるな」

「そうなのか?」


  リクスの言葉にリクスの隣を歩いていたシウは問い掛けてくる。


「うん、俺の村にも道端で寝ている老人いたし、きっと帰る場所がないから道端で寝るしかないのかもしれないな」



 セナ達がスディア村を歩いていると黒色のマントを羽織り、マントについたフードを頭に被った占い師らしき青年に声掛けられる。


「お姉さん、良かったら占っていかない?」

「えっと、お姉さんって私のことよね?」

「そうそう!」

「ごめんなさい。遠慮しておくわ」

「そっかぁ、残念……」


 青年はセナに断られ、大袈裟に肩を下げる。

 そんな青年を見ていたルイアは何かに気付いたようにハッとした顔つきになり。


「もしかして…… セナ、せっかくだから占っていかないか?」

「そうだな。占っていこう?セナ」


 唐突にセナに占っていこうと言い始めたシウとルイアにルソンは首を傾げる。


「なんだ? ルイア、シウ、二人して随分乗り気だな」

「まあ、いいんじゃない? せっかくだしさセナ、占ってもらおうよ!」

「そうね、みんながそこまで言うなら。占ってもらってもいいかしら?」

「お? まいどありー! じゃあ、着いてきて」


 青年は嬉しそうに弾んだ声でセナ達に告げて、テントの中へと招き入れる。

 全員は入れないので、シウとリクスはテントの外で待つことに。

 黒いテントの中、ルイア、ルソン、セナの3人は向かい合うように占い師の青年の前に立っていた。


「じゃあ、お姉さん、そこの椅子に座って」

「ええ、」

「ルイア、お前もう少しそっちに寄ってくれ」

「ああ、わかったよ」


テントの中は思ったより狭く、ルソンとルイアは少し屈むように立つしかなかった。

 そんな二人の会話を聞いていた占い師の青年は申し訳なさそうに軽く頭を下げて謝罪する。


「狭くてごめんね〜」


 そんな占い師の青年の言葉にルソンとルイアは首を横に振り『大丈夫だ』と返事する。

 

「それならよかった。よし、じゃあ、お姉さん、手を出して、この水晶に触ってくれる?」

「ええ、わかったわ」


 青年の手元にある透明な水晶に両手でセナが触れたことを確認し、青年は水晶をじっと見つめる。

 数分の沈黙の後、占い師の青年は少し驚いた声を上げて黒いフードマントのフードを取り、セナの顔を見て言う。


「もしかして貴方はセナ姫……? 天命の盾の主の……?」

「え、なんでわかったの?」

「それは……」

「やっぱりな」

「おい、ルイア、やっぱりってどういうことだ?」


 状況を飲み込めずにいるルソンは全てわかっているであろうルイアに問う。


「ああ、この占い師は天命の盾の内の1人だ」

「え……!?」

「それほんとか?」

「ああ、そうだよな?」

「うん、そうだよ」


 まさか目の前にいる占い師の青年が天命の盾の内の一人だと思ってもみなかったルソンとセナは驚いた顔をしてセルを見る。

  

「はぁ、まさか本当に来るなんてね。天命の盾となる者を探してここまで来たんでしょ?」

「ええ、そうよ」

「そっか。俺、実はセナ姫様達がこの村にやってくることを知っていたんだ。でも、占いは絶対当たる訳じゃない。外れることだってある」


 セルは水晶がある机の上に置いてあった飲み物の入った水筒を手に取り、一口飲んでから話し始める。


「だから、占いで見た通りセナ姫様達がこの村にやって来たら、着いて行くと決めていたんだよね」

「そうだったのね」

「うん、だから着いて行ってもいいかな?」


 真っ直ぐセナ達を見て、問い掛けてきたセルにルイアは笑顔で頷く。


「断るわけないだろ」

「もちろんいいわよ」

「これからよろしくな!」

「うん、よろしく」



 清華国にあるスディア村を後にしたセナ達は、天命の盾である最後の一人がいるであろう清華国せいかこくの西側に位置する港。

 水蓮すいれんを目指して歩みを進めていた。

 スディア村を出てから2日経った日の夕方頃。都ティリスにセナ達は辿り着く。

 都ティリスは国外から来た商人、旅人が物を売り買いできる場所だ。

 セナ達は金銭を稼ぐ為にそれぞれ手分けして動き始めようとしていた。


「じゃあ、俺は薬草とか薬になる物で稼いでくるね!」

「俺は占いだなぁ、ちょっと行ってくるか〜」


 リクスとセルはそう呟きながら立ち去って行く。

「二人とも頑張って。んー、俺は容姿がいいから、この顔の良さを上手く使って稼ぐか」

「顔がいいって罪だなぁ… よし、俺は芸でもして稼ぐかな」


 リクスとセルが立ち去った後、シウとルイアもその場を後にした。残されたのはセナとルソンだけであった。


「私はどうしようかしら。んー、ルソンは何をして稼ぐの?」

「そうですねぇ、手取り早く稼ぎたいので、賭けでもしようかなと思っていますよ」

「賭け?」

「はい、的の中心の黒丸に弓矢を当てられるかを賭ける場所があるっていう看板をさっき通ってきた道の途中で見たので行ってみようかなと」


 ルソンの話しにセナは興味を示し、何故か声を弾ませる。


「そうなのね、私も行くわ!」

「え、でも、姫さま、弓使えないじゃないですか?」

「使えるわよ!リヴィアに教えてもらったもの」


 国王の側近の一人である護衛の女性リヴィア。セナにとってのお姉さん的存在である。


「そうなんですか!? それは初耳です…!」

「ええ、そうでしょうね。今初めて言ったもの」



 その日の夜。セナ達はティリスにある宿屋に泊まることになった。


「だめです! 姫さまは一人部屋で休んでください」

「別に私は皆んなと同じ部屋でも気にしないわ」


 宿屋の部屋を借りる前に全員同室にするかという話しになり今に至る。

 

「まあ、そういう問題じゃないんだろう?」

「大変だなぁ、ルソン」


 ルイアとシウはセナとルソンの会話を聞きながら、苦笑していた。そんなルイアとシウの後ろにいたリクスとセルはセナを見て口を開く。


「セナ、一人が寂しいとかなら、俺、セナの部屋に行くよ!」

「じゃあ、俺も行こうかな〜」

「だめです! とにかく姫さまは一人部屋でお願いします」

「わかったわよ」


 そう返事をしたセナは受付に向かって立ち去って行く。ルソンは安堵したようにほっと息を吐く。シウとルイアはそんなルソンを見て、ニヤニヤしていた。


「ルソン、お前、可愛いところあるじゃないか」

「だなぁ、好きなんだろ?」

「は……!? そ、そんなんじゃないぞ!」



 次の日の朝。セナはルソン達がいる部屋に向かっていた。

 ルソン達がいる部屋の前に来たセナは茶色の木製ドアを2回ほど軽くノックする。


「私よ、開けてほしいのだけれど」


 セナがドアをノックし声を掛けてから数秒後、ルソンがドアを開けて顔を覗かせる。

 眠そうな顔をしているルソンを見つめながらセナは要件を口にする。


「おはよう、ルソン。いつ出発しようかしら?」

「みんな、まだ眠いと思うので12時くらいまでゆっくりしましょう」

「そうね、わかったわ」

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