一緒のクラスになりたい
「修也、昨日から調子良いよな。タイム上がったし」
「やっぱり女の子と一つ屋根の下は違うなあ」
その次の日も部活だった。
そして休憩中の話題は、ここ数日、河井家の新しい家族のことで持ちきりだった。
「ずるいよな。帰ってきたら女子が出迎えてくれるんだろ?」
「お前も妹いるだろ」
「全然可愛くねーよ。あいつと一緒にいても何の得もない」
俺が少し話すと、あーだこーだいろんな言葉が飛び交う。全く、こっちの苦労も知らずに。
「で、写真は撮れたか、修也?」
「だからそんなん無いって言ってるだろ。新学期になるまでの間ぐらい我慢しろって」
「えー」
「もったいねー」
ブーイングが出るが、それを言うならやってみろという話だ。
「じゃあお前らは、初対面の女子に一週間で写真撮らせてもらえるぐらいに仲良くなれんのか?」
「いやでも、家族になったんだぜ? それぐらいできないと、色々まずいだろ」
「……一週間で?」
「……まあ……」
皆、顔を見合わせる。自信ないじゃねえかお前らも。
「じゃあ昇太に頼むか」
「いやーどうだろうな。あいつ、押せ押せってやつじゃないしな……」
「あーまあ、昇太ならわからんかもなあ。俺は見てないけど、隠し撮りとかしてておかしくない」
「え? あいつ……え?」
「あいつはそういうやつだぞ。美沙さん美菜さんについて知りたかったら、俺よりも昇太に聞くんだな。まあ、答えてくれるかわからんけど」
これ以上俺一人に色々押し付けられるのはたまったもんじゃない。
昇太、お前も巻き添えだ。
「それに、美沙さんは前の学校じゃ陸上部のマネージャーだったらしいから、もしかしたらこっちでも陸上部に来るかもな」
「まじか!」
やっぱり。俺の言葉に、みんな一斉に沸き立つ。
現状新二年生の男子は8人、それとマネージャーの女子1人。先輩の新三年生も同じ人数構成。単純に部をやっていく上でも、マネージャーが増えて損はないはずだ。
「言っとくけど、別にまだ決まったわけじゃないからな」
「頼むぜ修也。なんなら二人共陸上部に引き込んでもらっても良い」
俺に勧誘を任せるなよ。
「美菜さんの方は?」
「吹奏楽をやってて、こっちでも続けるらしいぜ。あそこはほとんど女子だから、きっと気楽だろ」
「吹奏楽かーあそこ人数多いからなあ」
吹奏楽部は人数も多い。
学校の中では一大勢力だし、慣れない美菜さんでもちゃんと接してくれることを信じたい。
「……というかそれよりも、素直に二人と同じクラスになるのを願うほうが良いんじゃないのか? 確率的にはそっちの方がいけそうだろ」
「でもそれって運任せじゃん。クラス替え何で決めてるのかわかんねーけどさ」
俺の言葉にまたツッコミが来る。
学年が変わればクラス替えがある。
男女60人ずつをそれぞれ3等分する作業、どうせくじ引きかなんかだろう。
「クラスで聞いたんだけどさ、一応成績とかも考慮に入るらしいぜ。できるだけ3クラスの学力が同じになるように、とかなんとか」
「あーなんか聞いたことあるな。としたら、もう大体決まってんのか」
「まあでも、願っといて損はないだろ。悪くなるわけ無いし」
「なんだ修也、お前は二人と一緒になりたくないのか? 他の女子でも良いけどさ」
「他はともかく、美沙さん美菜さんは嫌だよ。気まずいじゃん」
気まずいと言ってしまったが、断じて二人が嫌なわけではない。
ただ、やっぱりこう……
「ああ、贅沢な悩みだなあ! 修也、お前そのうちバチ当たるぞ」
当たってたまるか。こちとら練習にも身が入らないってのに。
むしろここ数日タイムが良い。
なんで?
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