第21話 突然の告白
「うわぁ! 偶然。いや、これは最早偶然の域を超えた必然とも言えますね」
興奮したように火乃香さんはその場で飛び上がった。
「ん? ちょっと待って下さい。俺の部屋の隣って確か空室だったはずですよ」
「実は二日前に引っ越してきたばかりなんです。前に住んでいたアパートが全焼しちゃってここに行き着いたんです」
「あぁ、そういうことですか」
「お隣さん同士仲良くしましょうね」
ニッコリと火乃香さんは微笑む。
「あ、はい。そうですね」
「それではまた」
「はい。また」
ドア越しで手を振る火乃香さんはずっと笑顔だった。
この出会いがこれから何かと影響することは大いに予想ができるがそれは先の話。
ブブブブブブブブブブブブッ!
自分の家に帰ってきた直後、俺のスマホに着信が入る。
「はい」
「コォォォォォォォォォォーースケくぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーん! やっと出たあああああああああぁぁぁ! ずっと心配していたんだよおおおおおおおおおぉぉぉ!」
俺の耳元で凄まじい音量が刺激した。
鈴蘭だ。
「あぁ、ごめん。色々あって」
「連絡が取れなくて心配だったよ。今、どこ? ちゃんと家に帰ったんですか?」
「あぁ、今帰ったところだよ」
それから俺は小一時間ほどすずちゃんとの電話に付き合うことになった。
だが、彼女の声を聞くと自然と安らぐのが不思議だ。
こうして俺の長い一日が終わろうとしていた。
そして、翌日のことだ。
職場に出かけようと扉を開けた直後である。
「あ」
「あ」
偶然にも火乃香さんと家を出るタイミングが重なった。
「おはようございます。昨日はゆっくり寝られましたか?」
「はい。昨日はご馳走様でした」
「いえ。当然のことですよ。今からお仕事ですか?」
「はい」
「そうですか。私は今から大学です。お仕事頑張って下さいね」
「ありがとうございます。行ってきます」
「いってらっしゃい」
まるで新婚になったように俺は送られる。
そして職場にて。
「おう。雑賀。ようやく出勤か」
「先輩。おはようございます」
「それよりどうだった?」
「え?」
「え? じゃねぇだろ。惚けるな。九条鈴蘭にちゃんと会えたから帰ってきたんだろ?」
「はい。その件ですが…………」
俺は彼女と結婚を前提に付き合っていることを報告した。
当然、先輩は目玉が飛び出すくらい発狂して驚いた。
仕事そっちのけで先輩の質問攻めは止まることを知らなかった。
俺は自分に与えられた仕事をただ黙々と遂行する。
それが俺に与えられた使命のようなものだった。
「フゥ。今日も疲れた」
仕事を終えてアパートの前に差し掛かった時である。
「航輔くん」
「火乃香さん」
後ろを振り向くと火乃香さんが立っていた。
「偶然だね。今、帰り?」
「はい。火乃香さんも?」
「うん。お疲れ様」
「ありがとうございます。それじゃ」
「待って」
「何か」
火乃香さんの顔を見ると思い詰めたような感じだった。
「大事な話があります。聞いて下さい」
「大事な話?」
「一日考えてハッキリしました。やっぱり私にとってあなたが理想の白馬に乗った王子様だったと気付きました。だからこの感情はもう止められません。私と結婚してくれませんか。お願いします。航輔くん」
火乃香さんはビシッとお辞儀をして手を差し伸べた。
「さぁ、返事をこの場で今すぐ下さい」
俺に待ったなしである。
ちょっと待ってくれ。
俺は結婚がしたいわけじゃなくて人助けがしたいだけなんだああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ。
心の中で俺は悲痛の叫びをする。
■■■■■
あああああああああああああああ★★★をもっとォォォォォぉぉオォォォおおおおおおおおおおおおお下さい。
と、作者の悲痛の叫びをする。
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