第14話 接触③


「コウスケ様。コウスケ様。起きて下さい」


 俺を呼ぶ声がして目を覚ますと白髪頭の顔が覗き込んでいた。


「磯辺さん」


「おはようございます。よく眠れましたか?」


「あぁ、今何時だ?」


「六時です」


「げっ! 俺、また半日以上も寝ていたのか?」


「いえ。朝の六時ですよ」


「何だ。ビックリした。だったらまだ眠らせてくれよ」


「そういう訳にもいきません。鈴蘭お嬢様の乗っているヘリがこちらに向かっていると連絡がありました。もう時期ここに来る頃だと思います」


「何だって。なら寝ている場合じゃない」


 俺は勢いよくベッドから飛び起きて身支度を始める。

 歯を磨いて顔を洗って服を着替えた俺は部屋を出た。


「ヘリの止まるところはここからどれくらい掛かるんだ?」


「本社ビルの屋上ですよ。ホテルの外に車を用意しております」


「流石。段取りが早いな」


「恐れ入ります」


 俺は磯辺が運転する車で再び本社ビルへ向かう。

 移動の道中、俺は磯辺に質問した。


「一つ聞きたいんだが、九条鈴蘭はどんな人物なんだ? 動画で見る限り清楚で気品のある人物に見えるが、見た目通りなのか?」


「鈴蘭お嬢様は少し変わっていますね」


「変わっている? どんな風に?」


「変なところに気がつくと言いますか。気難しいところがありますね」


「曖昧すぎてよく分からないんだが」


「まぁ、実際に会って話してみれば分かると思います。さぁ、着きましたよ。本社ビルです」


 車は本社ビルの正面に止まった。


「屋上へのエレベーターは入って右奥にあります。私は車を駐車場に止めてまいりますので後から行きます」


「あぁ、ありがとう」


 俺はエレベーターで屋上へ向かう。

 屋上へ行くと突風が身体に刺激した。

 ヘリは来ていない。つまり九条鈴蘭はまだ到着していないという訳だ。

 少し遅れて磯辺も合流する。


「まだ来ていないようですね。風も強いですし、中でお待ちください。コウスケ様」


「いや、ここで待たせてもらうよ」


「そうですか」


 屋上で待つこと十五分。南方面から何かがこちらに向かっているのが見えた。


「あれです。鈴蘭お嬢様が乗っているヘリです」


 俺はジッとこちらに向かってヘリを直視していた。

 そして突風が吹き荒れてヘリは屋上のヘリポートへ着地した。

 ヘリのハッチが開き、人が出て来た。

 紛れもなく九条鈴蘭本人である。


「鈴蘭お嬢様。おかえりなさいませ」


 磯辺は深々とお辞儀をした。


「磯辺。私は長旅で疲れたわ。何か甘いものを用意してもらえる? 大至急で」


「はい。それよりも鈴蘭お嬢様。大事な話があります」


「大事な話?」


 不意に九条鈴蘭は俺に直視していた。


「あなた、誰?」


「えっと、俺は……」


「鈴蘭お嬢様。彼が例の探していた人物でありますよ」


 磯辺はフォローするように言う。


「あなたが?」


 半信半疑といった感じで俺を見る。

 どうも信じられないといった感じが拭きれない様子だった。

 ヘリポートの階段を降りようとした直後である。

 突風が吹き荒れて九条鈴蘭は階段を踏み外してしまう。


「あ……」


「危ない!」


 俺はすぐさまに彼女に駆け寄り身体を支える。


「大丈夫ですか」


「ありがとう。平気よ」


 その数秒の間、変な空気が流れて俺たちは見つめ合っていた。


「お嬢様。今日は風が強いですので早く中へお入り下さい」


 顔合わせはこの辺で俺たちはビルの中へ入った。

 いよいよ事情を聞くことが出来る。

 俺が何故、懸賞金を掛けられる事態になったのか。

 そして俺が彼女から奪ったと言うものは何なのか。

 その全ての真相を本人の口から聞ける。


「コウスケ様。部屋を用意していますのでどうぞこちらへお願いします」


「あぁ。分かった」


 さぁ、聞かせてもらうぞ。九条鈴蘭。


■■■■■

★★★で元気になれます。

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