第6話 願望
僕は小さい頃から一つのことに没頭するタイプだった。それは、人間関係においても変わらない。
彼女と出会ってから彼女のことしか考えられなくなった。そして、恋愛したいと初めて思うようになった。
だが、そんなガキのちっぽけな願望などそううまくはいかないのだ。実はその願望は今でも少しばかり残っている。
勉強するときも、友達と話しているときも、頭のどこかで彼女のことを想っている。少しキモイかもしれないが、一途な人間にはこれが限界だった。
そんな”一途“を壊したのが、あの駅に現れた女だ。
僕は二ヶ月も経たないうちに退院した。外に出てみると、地面には沢山の銀杏が転がっていた。
季節は僕を待たずに移り変わってしまったと外に出て気づいた。
そして、退院して初めて学校へと足を運んだ。
僕には友達なんかいらないと思って門をくぐった。
「おう、久しぶり〜。大丈夫だったか?」
「…」
「おい大丈夫か?」
「…」
「おいなんか言えよ!」
僕は最後まで何も答えなかった。いや答えられなかったの方が正しいのかもしれない。
別に話したくないわけではない。でも、何かが僕を止めているような気がした。それは懐かしくまた優しく僕を引き止めていた。
僕はそれに釣られて言葉が出なくなった。
一つの願望が何年もの間僕にのしかかってくるというのを実感した1日だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます