第4話 事故

 ある日、僕は友達と一緒に信号を渡っていた。そこは国道で、車通りが多かった。その時、信号無視のトラックが僕たちを襲ってきた。僕は咄嗟の判断で、友達を強く突き飛ばした。僕はトラックにひかれた。一瞬の出来事だった。僕は当たった瞬間、動きが遅く感じた。ふと、何かに後ろから押されるのを感じた。その瞬間、僕は気を失った。

 気が付くと、僕は真っ暗な闇の中にいた。僕は死んでしまったのだろう。そう思った。

 目を凝らすと、北東の方に微かな光があるのがわかった。なぜ北東にあるのがわかったか?そんなことはわからない。なんとなくそう感じたからだ。暗闇の中に光があると、向かってしまうのが人の性である。僕は何も考えず光に向かっていた。しばらくして、


 次に目を開けた時は、病院のベットの上だった。医者はとても驚いていた。医者が言うに、普通だったら死んでいたらしい。奇跡だと話していた。確かに、僕は強く全身を打撲した。そして、その後も意識がない。普通だったら、危うかったはずだ。そう考えている間も、後ろの気配は消えなかった。

「にしても、なんで助かったんだ、」

「お兄ちゃーん。うぇーん。お兄ちゃんが死んじゃうなんていやだー!」

妹が泣きながら、急に飛び出してきた。

「もう死なないよ。」

「ほんと?」

「うん、ほんとだよ。」

「やったー!!」

全く、可愛い妹だ。でも、後ろの気配は消えなかった。その気配は、妹を抱いているように優しかった。僕も、見慣れた気配。どこか、懐かしかった。そんな懐かしさに押されて、気づいたら妹を泣きながら抱きしめていた。

「ごめんな〜」

僕は、言った言葉が自分で理解できなかった。僕は何もしていない。ただ、トラックに当たっただけなのに、どうして謝らないといけなかったのか。久しぶりに僕の悪いところがでた。突然、昔を思い出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る