34 紫花は、相談する、、、
それまで黙っていたショーンが、突然何かを決心したように、俯いた顔で声を震わせた。
「•••お前•••騎士なら悪党やっつけることできるか•••?」
「えっ?」
ショーンのラベンダー色の髪の毛が目にかかり、口元しか見えないけれど、唇は青ざめ引き結んでいる。
「•••お前、騎士なんだろッ。•••俺の•••友達のクリスが!昨日誰かに拐われたんだ•••! 昨日からクリスが自宅に帰ってないって•••! クリスの帽子だけ道端に落ちていて、、•••」
•••!?•••人攫いはすでにこんな身近に起こっていたんだ•••!!!ゾクリッと寒気がした時、フワッと温かい手が肩を支えてくれた•••
「カイル?」
後ろから私を支えてくれたカイルは、私を横目で見た後、穏やかな声でショーンに話しかける。
「ここではゆっくり話ができないから、神殿で話を聞かせてくれないか?」
フェンリルが、ショーンの大声を聞きつけやって来る。
「ショーン、、それは本当かい?」
ショーンはまだ俯いたままだ•••
私からもフェンリルに頼む。
「フェンリル、、僕、ショーンとゆっくり話をしたいんだ。神殿で少し話させてもらってもいい?」
「•••ああ、もちろん構わない。僕も今から行くつもりだったからね•••。ショーン、ちょうど君の姉のリリアもハチミツを貰いに神殿に来ると言っていたから、君も来る?」
フェンリルは普通に話してるように見えるけれど、その瞳は心配そうにショーンを見つめている•••
「リリ姉が?」
フェンリルの言葉にショーンは瞳をパチクリとさせ、顔を上げる。
•••えっ?•••
「ショーン•••!君、リリアの弟だったの!」
改めてショーンの姿を見る••••さすがヒロインの弟•••天使みたいな可愛らしさだわ•••
リリアの名を出した途端、ショーンが食いついてきた•••
「リリ姉のこと知ってるのか•••?•••お前、騎士なのにマント羽織ってないし、リリ姉が言ってた「王子さまみたいな騎士」ってお前か?」
ッ•••王子さま•••? 本当の王子さまならそこに偉そうに座ってるけど•••と茶屋の一角に偉そうに座っているどこかの誰かさんの顔が浮かぶ•••
それにしても、先ほどとは打って変わって、黒目をキラキラさせてるショーンは、きっとリリアのことが大好きなのだろう•••
「ショーン、•••僕の名は、アルだよ•••。•••王子さまじゃないけど、リリアの知り合いだ。」
フェンリルが、私を見つめながら、小首を傾げる。
「アル•••、君の『大立ち回り』は、リリアから僕もよく聞いてるよ。君のマントも、リリアから預かっているからね。•••毎回、君には驚かされてばかりだ•••あまり無茶はして欲しくないんだけどな•••。」
「•••」
フェンリルの言葉に肩がすくむ•••どうやらフェンリルは、私が酒場で暴れ回っていたのを、リリアから聞いていたようだ•••
「フェンリル、もっと言ってやってくれ。」
カイルの声がすぐ後ろから聞こえた•••そういえばずっと私の肩を支えてくれていたんだわ、と思い出す。知らない間にすっかりカイルに寄りかかっていたらしい•••肩だけでなく背中全体が安心感に包まれている•••震えもいつの間にか止まっている•••息を整え気持ちを切り替える。今は何よりショーンのことだ。
「僕のことは•••いい••から•••フェンリル•••!僕はショーンを連れて馬車ですぐ向かう!君は馬で神殿まで来てくれないか?」
フェンリルは整った顔立ちに心配の色を浮かべながら頷いた。
「•••そうだね•••まずは詳しい話を聞きたい•••僕もすぐに向かおう。」
エドゥアルト王子は•••?と辺りを見回すと••••
「エドゥ•••!」
いつの間にか茶屋から出て、すでに馬車に向かっていた•••前髪を上げて整えてるせいか、いつもより上品に見える••
「遅い。」
ぶっきらぼうに言い放った王子は、馬車の後方に座る。敵に回すと恐ろしいけど、味方?にいる間は頼りになるわ•••だって、彼の瞳の色が変化した時、底冷えのするような冷たさと獰猛さを感じたもの•••
気づくと、ショーンが馬車の前で、どうしたら良いか分からずに、キョロキョロ辺りを見回しながら立ち尽くしていた•••
「ショーン、こちらへ!」
私は腕を回し、ショーンを抱き上げる。先ほど震えてた彼を思い出し、背中をギュッと抱きしめるとビクッとしたので、落ち着かせるように「大丈夫だよ。」と背中を撫でながら馬車に乗せる。
「•••」
首まで真っ赤になり、クリクリした黒い目をさらに丸くして固まっている•••
「ショーン?」
どうしたのかしら?まだ怖いのかしら?私は彼のラベンダー色の肩まで伸びた髪を、手で優しく撫でた。
「バッバカッ!•••ブ、ブ〜ス」
•••今の私は男なのだけれど•••ショーンが顔を逸らし、声を張り上げるが、髪を撫でる手は止める気は無いようだった。
「言っても無駄だ•••こいつは無意識だからな。」
王子が、足を組み、ブラウンの瞳で私を見る。
「エドゥ、変なことアルに言わないでください。アル、もう少し自覚を持つように。」
カイルが御者に指示を出し、金の瞳を細め、馬車に乗り込んできた。
私たちに事件の話をしたことで、ひとまず安心したのか、ショーンは馬車の中で、わりと気さくに話しかけてくれるようになった。
そして、実に子どもらしい純粋な好奇心を発揮しだした••••
「•••なあ•••こいつら、アルの何なんだ?」
えっ•••!?
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