275.エンプーサ戦

 さて、始めるか。


 大天使アークエンジェル中位精霊ミドルスピリットは、麗華と一緒にもしもの時の為に訓練生の守りに残す。それ以外は瑞葵とエンプーサに攻撃だ。


 エンプーサは若い美しい女性に見えるが、背中に黒い蝙蝠の翼のようなものがある。右足が金属のような物で出来ていて、反対の足は馬の脚のように見える。


 なにより、エロい格好だ。アプサラス師匠もエロい格好だったが、清楚さを感じさせる煽情だったのに対して、こいつはただただエロい。


 三軍だったら、全員が目が釘付けになって戦いにならないと思う。間違いない。男にとっては危険な化生モンスターだ。


 武器は持っておらず長い爪が瑞葵を襲う。翼も伊達ではなく空を飛んで攻撃を躱したり、高い位置から魔法攻撃もしてくる。万能型の化生モンスターのようだな。


 おっ、瑞葵が見たことがない技を使った。双剣・蛟の刃が白く光りエンプーサを十字に切り裂く。


 うーん、ダメージを与えているようには見えるけど、それほど効果のある攻撃には見えない。瑞葵も思ったような効果が出ていないのか、浮かない表情だ。


 それでも着々とダメージを与えていく瑞葵と使役化生モンスターたち。そうなると……。


 エンプーサが空に飛び上がり、両手から黒い霧を出し始める。これはお約束だな。


 そのとおりで、霧が晴れると蛇女ラミア顔色の悪い女モルモーが二体ずつ現れた。四体だけか? 少なくないか? 少ない援軍は阿久良王あくらおう以来だな。おかわりはあるのか?


 じゃあ、瞑想は終わりだな。


「一体ずつ任せる。黒鬼くろおには悠斗に付けろ。そっちの二人と一佳は筋トレ続行」


 詩織は筋トレを終えたが、一佳とお試し二人組はまだ終わっていない。なので続行だ。


 悠斗、黒鬼くろおに組が蛇女ラミア、訓練生が顔色の悪い女モルモーに向かう。俺は蛇女ラミアだな。麗華は全体を見つつ顔色の悪い女モルモーをけん制してもらう。


「こ、攻撃が効きません!?」


 ん? 真尋だな。訓練生が顔色の悪い女モルモーに攻撃をしているが、攻撃がすり抜けているように見える。まさかの物理無効か!? 厄介な相手を召喚してくれたな!


 一旦、俺が相手をしていた蛇女ラミアをサンダーで巻き付け動けなくする。物理無効でも魔法は効くんだよな? プチライトバレット!


 プチライトバレットが当った瞬間、顔色の悪い女モルモーの顔が苦痛に歪む。


 なんだ? めちゃくちゃ効いていないか? じゃあ、もう一発。


 当った瞬間、この世の絶望のすべてをその身に受けたような表情になり消えていく。


 こいつ……アンデッドだ。


「麗華。こいつに聖魔法をぶつけろ! 訓練生はこっちの蛇女ラミアを相手にしろ!」


 麗華が覚えたばかりの聖魔法でプチライトバレットを放つ。中位精霊ミドルスピリットも光の玉を放つ。


 中位精霊ミドルスピリットって聖魔法や光魔法は覚えていないよな? 待てよ、そういえば光属性を持っていたな。精霊魔法に光属性を乗せて放ったのか? それとも光の精霊魔法だろうか?


 麗華のプチライトバレット二発と中位精霊ミドルスピリットの精霊魔法二発で顔色の悪い女モルモーが消えた。


 アンクーシャなら一発だったかもな。そうだ、アンクーシャで倒せば、聖魔法か光魔法を覚えるんじゃないか? しまった、悠斗か訓練生にやらせればよかった。


 くっ……おかわり希望します!


 蛇女ラミアのほうは普通の化生モンスターのようで、悠斗組も訓練生組も無難に戦いを続けている。


 エンプーサは万能型で強い。強いが突出したものがない。瑞葵は一進一退ながら攻撃を続けている。というより、明らかに訓練モードに入っているな。回復さえしてやればほかに手を貸す必要はないな。精進したまえ。


 一佳も筋トレが終わり参戦。なぜか、坂井さんも槍を取り出し飛び出して参戦!?


 おいおい、誰が戦闘に参加しろと言った!


 川中さんは状況が理解できずフリーズ状態。悠斗も急に参戦してきた坂井さんに困惑しているが、それでも冷静に対処している。大人だな。


 しかし、坂井さん見た目と裏腹にアグレッシブというかやんちゃだな。まあ、恐怖で震えて動けないよりは、やる気があって動けるのは見込みがある。命令違反はいただけないが。


 加速を使い彼女に近寄り槍を奪う。


「何をするんですか!」


「こいつを使え」


「えっ?」


 地獄の槍を投げてやる。今使っているのは初期装備の槍なので攻撃力はあってないようなもの。


「悠斗、面倒をみてやれ。回復は俺がしてやる」


「自分のことで手一杯なのですが?」


「己を追い込めば追い込むほど適合率は上がる。ちょうどいい負荷じゃないか。やれ」


「それってパワハラ案件ですよ! はぁ、やりますけどね」


 パワハラちゃうわ! 愛の鞭や! 勘違いしたらあかんでぇ!


「坂井さん。ここまで出た以上戦ってみてください。仕方ないのでフォローはします」


「は、はい!」


 悠斗に余裕があるわけではない。だが、こいつにはこれくらいのハンデがあったほうがいい。二軍や三軍の連中と違って悠斗はメンタルが強いし、体力や地力もほかの連中よりある。悠斗に足りないのは適合率。己を追い込ませ苦労をさせて適合率を上げさせる。


 少しでも負っているハンディキャップを軽くするにはこれしかないと思っている。年齢差はどうしようもないが、適合率なら少しは取り戻せるかもしれない。


 そのチャンスは与えていいだろう。


 あとは本人のやる気次第だ。





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