272.二度目の相談

 ホームセンターで買ってきたプランターに腐葉土を入れ、世界樹の種を植える。綺麗な水が必要ということで天然水のペットボトルも一緒に買ってきたので与える。ついでに、TPも与えておく。かりんと違って強制的に奪われることはなかった。


 昨日のランダ戦の資料整理をやってしまおう。


 手に入れた装備品は魔術師装備が主。訓練生に魔術師系はいないので二軍、三軍に渡そう。


 特殊アイテムはこれ。


 恢斗

 ・鬼子母神の面 付けると母乳の出がよくなる。

 瑞葵

 ・聖耐性のスクロール

 麗華

 ・聖魔法のスクロール

 訓練生ほか

 ・魅惑のヘアビタミン×3 髪が艶々になりヘアダメージが改善される。

 ・パイスス詰め合わせ 太らないエッグタルト


 鬼子母神の面は俺には使い道がないが、女性陣で使う可能性があるから取っておこう。使う時赤ちゃん泣くかもな。


 瑞葵の聖耐性のスクロールは譲ってもらう。高骸骨魔術師ハイ・スケルトンウィザードに使わせたい。


 麗華の聖魔法のスクロールは麗華が使えばいい。多数の魔法を覚え弱点攻撃を行える貴重な戦力だ。


 魅惑のヘアビタミンとパイスス詰め合わせは女性陣に献上。後日、魅惑のヘアビタミンは女性陣で奪い合いがあったとか……。



 約束の時間になり二人の女性が訪ねてきた。


坂井春璃さかいはるです。本日はお時間を取っていただき、ありがとうございます」


「気にするな。こちらも打算があって呼んでいる」


 紅茶のペットボトルを三つもって小会議室に移動


 座るように促してペットボトルを渡す。今日は紅茶の気分なのだ。


 坂井さんは某アパレルメーカーのOL。仕事中に品物の検品をしているときにホルダーになったそうだ。そのせいで化生モンスターが見えるようになり、霊感が目覚めたと悩んでいたところで川中美琴かわなかみことと会い、霊感ではなくホルダーというものを知ったという。


「レベルと適合率を聞いても?」


「はい。レベルは零、適合率は147%です」


 ほう。二軍、三軍の適合率より上か。これは意外といい拾い物か?


「それで、どうしたい?」


「話を詳しく聞きたいです。私はこれからどうすればいいのでしょうか?」


「好きにすればいい。ホルダーになったからといって神託が下るわけでもない。正義、中立、悪、選ぶのはあなただ」


 川中さんからどこまで聞いているのか知らないが、一応の基本的なことを教える。


「ではここは、正義のヒーローの秘密基地ということですか?」


「正義のヒーローを目指す者もいるだろうが、秘密基地というより民間軍事会社PMCだ。テレビのヒーローのように才能の上に胡坐をかいている奴はいない。毎日訓練をしているし、その仕事に見合う給料を払っている」


 二軍、三軍もそうだが、ランクバトルができるようになった訓練生一佳、悠斗にも仮想空間で訓練させている。日に二人だけだが直接俺が特訓・極もしてやっている。


 さっきもフィットネスクラブに行く前の悠斗と模擬戦をやっている。体感時間で五時間くらいでギブアップしていたがな。まあ、うちのメンバーの中ではもったほうだ。


 ちなみに、訓練生たちにはプールでの水泳一時間を追加してある。基礎体力向上のためだ。


「言っとくが、二足のわらじでやろうというなら、それ相応の覚悟がないとできないからな。ほんの少しのお小遣いなんて考えているなら、大怪我するぞ。すべてが自己責任だから甘い考えは持つなよ」


「ここに所属すれば安全なのですか?」


「怪我するようなことをすれば怪我をするのは当たり前。だが、そうならないよう訓練するし、サポートもしている。ちゃんとリスクヘッジを取っている分、アウトサイダーとは比べ物にならないほどリスクは軽減されている」


 言うことを聞かず馬鹿な行動を取れば怪我をしても仕方がない。だが、意図的ではないミスなら、自ずから周りの仲間がフォローしてくれる。そのためのチームだ。アウトサイダーだとこれが難しい。


「今の仕事に未練はありません。ですが、私がホルダーとしてやっていけるかも不安です」


「あなたのやる気と覚悟次第。生活面、要するに給料面を心配しているのなら問題ない。命を懸けるだけの見返りはあると言っておこう」


「私でもやっていけますか?」


 その覚悟を聞いているのだけどな……。


「現状、このクレシェンテに女性のホルダーは五人所属しているが、問題は起きていないし不満も聞いていない」


 特訓・極に関しては多少ブーイングが聞こえるが、それはうちに所属する全ホルダーからなので女性限定ではない。だから、ノーカンな。


「本来ならこんなことはしないのだが、今日、明日の狩りに参加してみないか? ただでレベルが二上がるぞ?」


 上手い謳い文句で悪の道へと誘う、悪役ヒールそのものだ。俺の場合正義のヒーローじゃなくてダークヒーロー側だからな、気にしない。いや、気にしちゃ駄目。俺、頑張れ。


「狩り……ですか?」


「隠語だと思ってくれ」


 俺にとっては隠語でもなんでもないけど、周りはそう思っているようだ。


「それで、汚れてもいい服が必要だったんですね。わかりました。参加さてください」


「川中さんはどうする? 今日の狩りの参加だけじゃなく、今後のことを踏まえてだ」


「狩りは参加したいです。本業にするかは……」


「柊は副業でイラストレーターを続けると言っている。将来的にそちらで食えるようになればそちらを本業にして、ホルダーを副業にとも考えているようだ」


 正直、イラストレーターとして売れたとしても、本業はホルダーになるだろう。一度、ホルダーとして稼げばほかの職業で稼ごうとは思わなくなる。金の魔力は業が深いからな。


「そうなんですか……。柊君は夢を諦めてはいないんですね」


 柊に頼んでいたクレシェンテのロゴマークも何種類か上がってきている。イラストレーターというだけあってなかなかいい感じのデザインだった。依頼分が全部揃ったら投票を行うと月山さんが言っていた。


「狩りに参加したいです。本業にするかは少し考えさせてください」


「ゆっくり考えさせてやりたいが、時間はあまりない。来週の月曜には回答を出してくれ。二人共だ」


「時間があまりないとは?」


「川中さんには言ってあるが、新人ホルダーの研修は俺がやっている。この後も予定が詰まっていて俺の体が空かない。今ならなんとかほかの研修に入れることができる」


 レベルの差がつくと面倒だからな。今ならまだ間に合う。


「「わかりました」」


 この二人と一佳、悠斗を組ませたい。


 もう一人欲しいところだが追々考えよう。




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