271.精神的慰謝料の請求

 肉と牛丼、となれば牛丼屋。今回は黄色い看板の牛丼屋にしよう。


 しかし、訓練生と一佳、悠斗たちは見るからに敗残兵っぽい。肩を貸しあって歩いている姿は男女の垣根もない。まさに、勝利をお互いに勝ち取った戦友同士なのだろう。敗残兵にしか見えないけどな。


 この状態で店の中に入るのはちょっとなぁ。仕方ないのでテイクアウトにするか。


 ドライブスルーで最初に訓練生たちを乗せた天宮さんたちが注文。その後に俺が運転する車を注文口に寄せ注文。事務所の女性陣はおそらく食べると言うだろうし、二軍と三軍もそれを見れば食べたいと言うだろうから多めに注文。


 なんか、凄い量が手渡されてくる。後ろの席の麗華に流れ作業で渡していく。後ろの空いていた席が牛丼とテイクアウト定食、カレー、豚汁で埋まる……。その匂いで、かりんが興奮気味。


 事務所の前に着き事務所に応援の電話。二軍がちょうど帰ってきていたので運ばせる。俺はタワマンの駐車場に車を置いて、事務所に戻る途中にコンビニに寄ってお酒とお茶、つまみなどを買っていく。


 さすがに中央テーブルだけでは間に合わず、大会議室で夕食会となった。


「っていうか、お前ら食ってきたんじゃねぇの?」


「牛丼は別腹っすよ。アニキ!」


 牛丼はデザートなのか? 予想どおりなので、まあいいけど。


 しかし、前にも食っていたけど、今時のお嬢様は普通に牛丼を食べるのな。それも、三人とも単品のポテサラやソーセージ、牛皿をあてにワインを飲んでいる。ツウすぎるだろう! そして、牛丼如きを優雅に食べるな!


 かりんを見てみろ! 牛めし特盛に顔を突っ込んで顔が見えないぞ。これこそが牛丼の真の食べ方だ! 訓練生、悠斗も二個目に突入。三個目はカレーをキープしている模様。それも、しっかりと温泉玉子もキープしている。


 それはさておき、ねぎ牛特盛を食べながら星野さんに、実はこんなことがあったんですよ~と映像を見せながら相談。


「さすがにこれは酷いですね。ホルダー管理対策室に苦情を入れておきます」


「ついでに土屋陰陽会に送れるなら、そっちにもこの映像を送ってください。誠意ある対応を望むってね。何も回答がなければほかの三つの組織に送り付けましょう」


「自衛隊からも圧をかけるか?」


 聞き耳を立てていた一条さんが言ってきたが、今は必要ないだろう。


「民間ホルダー組織の件なので自衛隊は出ないほうがいい」


「アニキ、俺たちはどうすればいい?」


「もし、そういう状況になったら最初は冷静に話し合え、それで駄目ならランクバトルを挑め。お前たちならよほどのことがない限り負けないはずだ」


 レベルも三十近くあるし、装備も六等呪位クラスの武器防具に換装している。それに、負けたところで失うものがないしな。


「実力行使に出てきたらどうしますか? アニキ」


 二軍には朱珠と葵がいるからな、そっちに手を出す可能性も無きにしも非ずか。


「極力手を出すな。最悪、逃げろ。それと、できるだけ映像に残せ。それを送り付けて賠償金なりをふんだくる」


「「「「ふ、ふんだくるって……」」」」


「「「「ア、アニキ……」」」」


「悪党がどちらかわかりませんね……」


「アニキは元から悪党~!」


 悪党じゃねぇーし! 精神的慰謝料の請求だし!


「手を出していいのは完全に正当防衛を主張できる時だけだ。映像に残らなければ意味がないからな」


「「「「「うぇ~い」」」」」


 そう、こいつらな。二軍より三軍な。元ヤンキー組が危険だ。戦闘服も特攻服に見えるからな。柊がストッパーに……無理だな。


 さて、腹も膨れたしやることやって帰ろう。



 今日は木曜日、午後の講義がない日だ。


 約束があるのでクレシェンテの事務所に移動。その前に昼飯だな。前に食べた新宿駅近くの焼き鳥屋で焼き鳥丼をテイクアウト。事務所の女性陣にも頼まれている。


「倉木さん、なんか、死んでねぇ?」


「家に帰ってません……」


 どうやら、サイバーセキュリティ関係で、いろいろ攻撃を受けているらしい。そのせいで、事務所に泊まり込みで作業しているとのこと。


「どこからなん?」


「おそらく大陸ですね。北か南かはわかりません。どちらもということもあるかも。ネットが使えるようになるにはもう少し時間がかかりそうです」


 怪しいのは南の大国のほうだ。北の大国とはまだ接触したことないからな。


 元々、個人個人で使ってるPCはサーバーに繋がっているが、ネットには繋がっていない。それが不便なのでネットに繋げたいので、確実なファイアウォールの構築を倉木さんが行っている最中。


 最悪、ネットに繋がったPCと繋がっていないPCの二台置くかって話も上がっている。俺は別にそれでも構わない。


 それにしても、この焼き鳥丼はうめぇ~。ねぎま、かわ、つくね、レバーのタレがご飯に載っており、追加でぼんじりと砂肝の塩をトッピング。女性陣の焼き鳥丼には俺とは別のトッピングをしているので、いろいろ楽しめるようにしている。


 誰が楽しむのか?


 もちろん、かりんだ。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る