270.やり過ぎたか?

 訓練生はそれなりに戦えている。半年とはいえ、一緒に訓練を行ってきただけあって連携ができている。


 一佳、悠斗、使役化生モンスターチームは駄目だな。一番の戦力である悠斗が指揮に回っているせいで火力不足。へっぴり腰の一佳が足を引っ張ている。正直、邪魔。そのせいで、悠斗が本気を出せないでいる。


 まあ、これも訓練だ。経験を積んでくれ。すべてが順風満帆に行くわけではない。この苦境の中から学ぶこともある。


 俺のほうは残り一体になったので使役化生モンスターに任せ、悪霊のレヤック、チュルルックの二体を相手に遊んでいる。あいつらが倒し終わったら、もう一体ずつ相手をさせるため倒さないでいる。


 悪霊のレヤック、チュルルックは多少魔法を使ってくるが、主体は近接戦闘。戦いやすい化生モンスターだ。


 訓練生チームがやっと倒した。


「一体、回すぞ」


「「「「「えっ!?」」」」」


 何を驚いている。お前たちはここに何しに来ているんだ? 訓練だろう!


 一佳、悠斗チームをさすがに見かねたのか麗華が参戦。指揮を麗華が執り、悠斗を自由にさせる。やっと、チームらしく動き始める。


 チームってのはなかなか大変ですなぁ。相棒の瑞葵と麗華が優秀でよかったよ。こうして、別のチームの戦いを見ていると、いろいろ気づくことが多く勉強になる。


 特にメインアタッカーと指揮者は別にしたほうがいいということ。自衛隊はそれを一人に任せている。そのせいでチームリーダーでもあるメインアタッカーの負担が大きい。やはり、最低でもツートップにしないと駄目だろうな。

 

 自衛隊のチームにはサブリーダーがいない。サポーターを付けるくらいなら、使役化生モンスターを使うか全体の指揮を執るサブリーダーを入れるべきだ。


 一佳、悠斗チームも化生モンスターを倒したので、もう一体をけしかける。一佳はぐったりだ。もう少し体力を付けさせないと駄目かも。取りあえず、今は戦いに慣れることが優先だ。


 訓練生チームもそろそろ限界かな。元々、アンクーシャを各々一回使わせているので残りTPが少ない。それに二体目の化生モンスターなので、集中力が切れミスが出始めている。


 仕方ない、俺が倒そう。


 俺が化生モンスターを倒すと、訓練生は地面に座り込み肩で大きく息をする。


「あと一回、援軍が出るかもしれない。ただ、休むのではなく瞑想したり、なにか次に繋がることを考えながら休めよ」


「「「「「……」」」」」


 恨めしそうな目で俺を見てくる。何度も言うが、お前たちはここに何しに来てるんだ? 遊びにきているわけじゃないぞ!


 瑞葵のほうは……大丈夫そうだな。なんか悪態をつきながら戦っている。だから、そういう下品な言葉はお嬢様が使ってはいけません!


 足枷のなくなった悠斗が嬉々として化生モンスターと斬り合う。そこをフォローするように使役化生モンスターが攻撃に加わる。一佳は……まだ体力回復中。


 黒鬼くろおにの連打で化生モンスターがすべて沈んだが、間を置くことなく援軍が召喚される。


 訓練生も休憩終わりか~って感じで立ち上がり援軍の一体に戦いを挑んでいく。悠斗たちは休憩なしなのでちょっと辛そうだな。まあ、それも訓練だ。麗華がいるから大丈夫だろう。


 俺は残りを狩っておこう。


 俺が援軍の六体を狩り終わっても、訓練生と悠斗、一佳組はまだ倒し切れていない。だいぶ動きが悪い。ギリギリでの綱渡り状態での戦闘を繰り広げていると思う。必死に考え、体に鞭打ち体を動かす、これが最高の経験値になる。


 これを普通の職場でやったらパワハラ確定だ、だが、ここは普通の職場じゃない。命を懸けることを厭わないと理解してきた職場だ。なのに自衛隊は温く育て弱いホルダーを量産する。理解に苦しむ。


 BPの回復をしてやっているが、腕が上がらない状態の者もチラホラ。


 こいつら本当に自衛隊員として訓練を受けてきたのか? 体力がなさすぎる。もっと基礎訓練を頑張らせたほうがいいかも。二軍、三軍と違ってこいつらはちゃんと鍛えて帰さないと駄目だからな。


 もうこれ以上は無理と判断に達して、麗華に目配せして終了の合図。残りは俺と麗華で止めを刺した。


 全員、緊張の糸が切れたのか崩れ落ちる。


 情けない。


 さて、瑞葵のほうはどうかな?


 ランダと熱いバトルを繰り広げているかと思っていたら、瑞葵はランダにベロベロバーなどされ馬鹿にされている。戦っていたんじゃないんかい!


「もう訓練はよろしくて?」


「いつでもどうぞ」


「このクソババア! 死ね!」


 おいおい、口調、口調!


 気持ちははかるけど……。


 ーーーーー

 ーーーー

 ーーー

 ーー

 ー


『レベルが33になりました』


 ーーーー

 ーーー

 ーー

 ー


 最後は、ハイキックからの回し蹴りを決めての真・三段突きで幕を閉じた。怖ぇ……。相当に鬱憤が溜っていたようだな。俺の訓練ができなかった。


「すっきりしましたわ!」


 さ、さようで……。


「撤収じゅ……」


 駄目だ。全員うつ伏せ状態で起き上がってこない。


 仕方ないので天宮さんと水島顧問とで手分けして撤収準備をする。


「少し、やり過ぎじゃないか?」


「ま、まあ、ちょっとだけな。だが、体力がないのは問題だ。基礎体力向上のメニューを増やすか」


「ほどほどにな……」


 さすがに、俺もここまでグロッキー状態になるとは思っていなかった。


「なに食いたい?」


「に、肉……」


「ぎゅ、牛丼……」


 二人の声しか聞こえないが、まあいいか。


 じゃあ、帰ろう。







 高骸骨戦士ハイ・スケルトンウォリアー・☆ レベル25→27

 高骸骨魔術師ハイ・スケルトンウィザード・☆ レベル24→26

 大天使アークエンジェル・☆ レベル15→18

 夜哭鳥やこくちょう・☆レベル10→13

 殺戮人形スローターマリオネット レベル11→14

 大天使アークエンジェル レベル22→24

 貉浪人むじなろうにん・☆ レベル9→12

 中位精霊ミドルスピリット・☆ レベル21→23

 牙狼がろう レベル20→22

 黒鬼くろおに・☆ レベル17→20

 精霊スピリット レベル14→19

 精霊スピリット レベル14→19


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