269.ランダ戦

 取りあえず、土屋陰陽会の件は帰ってからだ。


 目的の化生モンスターの場所に到着。


 ランダ 六等呪位 バリ島の魔女。悪霊(レヤック、チュルルック)や魔女(ニ・カロン、ラルン)の軍団を統べる存在。


 こいつは知っている。俺が好きなゲームによく出てくる合体素材として欠かせないモンスターだ。シヴァの妻ってフレーバーテキストに書いてあった。だから、わんこと合体せるんだな。でも、バリ島の魔女なのか? よう、わからん。


 魔女というからには魔法主体になってくるのかも。いや、ガングレトのような両方とも考えられる。ほかにも援軍に出てきそうな名前も出ている。


「よし、始めるぞ。その前にお前たち、ランクバトルに勝ったくらいで浮かれているなよ」


 さっきの土屋陰陽会とのランクバトルで勝った訓練生が少々浮ついている。こういう時こそ引き締めが肝心だ。


「今回、お前たちが勝ったのは武器防具の性能のおかげだ。その武器防具に負けない実力を身に着けろ」


「「「はい」」」


 訓練生は三人が身体強化を覚え二人が投擲を覚えている。一佳はまだどちらも覚えていない。日頃の経験の差からくるものだろう。


 取りあえず、覚えていない二つの技能習得を主として、覚えた者は武器技能の習得を目指し素振りを行う旨を指示。悠斗も同じ。


 援軍が現れたら、今日からは積極的に戦わせることにする。訓練生と一佳の使役化生モンスターはまだまだ使い物にならないので筋トレと素振りなどを集中してやらせる。レベルが上がってランクが上がらないとどうしようもない。


「では、始めよう」


 ランダは髪が長くギョロ目で舌が長く牙もある。両手の爪が異常に長く鋭そうだ。となれば、格闘もイケる口か? これは楽しめそうだ。


 瑞葵がバトルフィールドを展開して仕掛ける。


 ランダの周りにいくつもの火の玉が浮かび、瑞葵を迎撃。双剣・魔影狼で斬り払いながらランダに近づき双剣を振るう。ランダはやはり長い爪で双剣を受け長い舌でカウンター攻撃、瑞葵にクリーンヒットし吹き飛ばされ、そのうえ炎に包まれている。よく見るとランダの舌が炎に纏われているな。


 瑞葵は立ち上がり、自分の水魔法で炎を消し去る。ランダを睨みつけ舌打ちしている。お嬢様が舌打ちなどしてはいけません!


 それにしても、あの舌は厄介だな。それも火属性ではなく炎属性のようだ。それに、第三の腕として使える。ラタトクスの尻尾と同じだ。


 使役化生モンスターたちが瑞葵に遅れてランダに攻撃を仕掛ける。その間に瑞葵がプチウォーターアーマーを自分と、前衛の使役化生モンスターたちに使う。


 ランダは火、炎、闇魔法を使っている。舌も炎だから効果が期待できる。それに麗華の放つプチアイスバレットを嫌がっているようにも見える。氷属性が弱点とは言わずとも苦手属性かもしれない。


 前衛の殺戮人形スローターマリオネット貉浪人むじなろうにん大天使アークエンジェルが攻撃に加わったことで、流れが瑞葵側に傾く。そのうえ高骸骨戦士ハイ・スケルトンウォリアーが挑発を使い、ほかの使役化生モンスターたちが魔法などの遠距離攻撃を加える。


 多勢に無勢だな。


 もう、瑞葵と麗華は俺がいなくとも六等呪位を倒せる実力がある。だが、六等呪位は多勢には多勢をぶつけてくる。


 黒い霧が六つ、どこからともなく鳥が六羽現れ人を形造る。


 黒い霧のほうは悪霊のレヤック、チュルルックだろう。ランダ似の醜い姿だ。鳥のほうは魔女のニ・カロン、ラルンだろうな。魔女というより、年老いたシャーマンって感じだ。


 ランダは瑞葵と数体の使役化生モンスターに任せて、援軍はこっちらで対処しよう。


「こっちは任せろ」


「任せましたわ!」


 麗華が訓練生、一佳と悠斗、使役化生モンスター数体の二チームに分け悪霊のレヤック、チュルルックと戦わせる。麗華は二チームのお目付け役だ。アンクーシャも渡してある。


 俺と高骸骨戦士ハイ・スケルトンウォリアー大天使アークエンジェルは魔女のニ・カロン、ラルンの相手をする。魔法は厄介だからな。


 さっそく、いろいろな魔法が襲ってくる。四体とも別々の属性の魔法を使ってくる。だが、俺はもちろんだが、俺の高骸骨戦士ハイ・スケルトンウォリアー大天使アークエンジェルもTP相殺が使える。


 TPを無駄に使ってしまうが、俺のハイランクキラーのBP・TP回復は伊達じゃない。使ってもすぐに回復していく。


 最近気づいたのだが、このハイランクキラーのBP・TP回復効果は配下の使役化生モンスターにも適応されているようだ。おそらく、経験値アップもだろう。アイテムドロップ率は関係ないからいい。


 前に二軍に貸した時と俺が使う時とで、使用するスキルや魔法の使用回数が違うことに気づいた。明らかに俺が使っている時のほうが多くのスキル、魔法を使っていたからだ。


 まさしくチートズルだな。これのあるなしで戦闘が大幅に違ってくる。本来なら狩りの間に回復するBP、TPは微々たるもの。それが目に見えて回復していく。近接系のホルダーならまだTPがなくとも戦えるが、魔法系のホルダーだとTPが切れた時点で役に立たなくなる。


 このハイランクキラーがどこまで伸びるのかわからないが、伸ばせるところまでは伸ばしたい。だから、無駄なレベル上げをせず、が必要なのだ。


 訓練生チームは自衛隊に戻れば間違いなく異質なチームになる。同期のチームより適合率が高く、戦闘継続時間が長く、そしてドロップ率の高さが際立つことになる。


 問題は馬鹿なホルダー部隊の上層部が、何も理解せずチームをバラしてしまうかもしれないこと。要するに、こいつらを頭にしてワントップのチームを五つ作りかねない。そうならないように、釘を刺しておく必要がある。


 俺的にはこいつらを育てて教導隊とし、クレシェンテ式ホルダー育成方法の今俺がやっている立場になってもらいたい。そうして、後進を育てていけば、強いホルダーチームが増えていく。


 そうならないと、この日本は救えない。






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