264.元エリートの実力

 強そうなので鑑定してみる。


 死せる戦士たちエインヘリャル 戦士としての腕を磨き、戦いで死んでも、夕方になると皆生き返る不死身の戦士。神々の尖兵。


 訓練生たちはまだ筋トレが終わっていないな。


 俺が前に出るか。


「瑞葵、代わる」


「やり難い相手ですわ……」


 騙されているお前が悪いだけだ。


 麗華も待機させていた使役化生モンスターたちを前に押し出した。


 ラタトスクには体術でいかせてもらおう。


 武器を持たず組みつく。


 た、戦い難い……。言うなれば、でっかいぬいぐるみだ。技がかけ難く、投げ難い。仕方なく打撃技が中心になるが効いていないのでもどかしい。


 ラタトスクの攻撃も厄介だ。植物を操る魔法を駆使してくるし、口からどんぐりのようなものを連続で撃ち出してくる。地味にBPが減っていく。


 それに死角から急に現れるあのモフモフの巨大な尻尾。あれに殴られると、俺でも吹っ飛ばされる。


 なんとか、投げて締め技にもっていくが、あの尻尾のせいで崩される。


 思った以上に強敵だ。


 それに、たまに見せる、あのニタ~っと歪んだ笑いがムカつくんですけど!


 しばらくして、瑞葵たちが死せる戦士たちエインヘリャルを倒し終わったのでチェンジ。


わたくしを欺いていたのですわね! あの下衆野郎!」


 野郎か女郎かは知らないが、気づいたようだな。それと、ではなくな。それから、お嬢様が使う言葉使いじゃないからやめなさい。


 訓練生たちにアンクーシャを渡し使役化生モンスターたちを回復させる。


 一佳、俺のアンデッドたちに使おうとするんじゃない!


「悠斗。奥義は使えるか?」


「TPが足りないので使えません。グレーアウトしています」


 せっかくあるのに使えないとは。これが奥義を覚えても使えないってやつだな。


「小技のほうはどうだ?」


「使えますが、この技は防御の技です」


 むう。上手くいかないものだな。


 取りあえず、アンクーシャを俺に使わせBPを回復。全員に投擲を指示。一佳には投球フォームから教える。それでも、化生モンスターまで届かない……。こいつ、運動音痴かも。


 瑞葵はラタトスクに対して苛烈な攻撃を加えている。さっきまで騙されていたことを根に持っているようだ。器が小さいぞ、瑞葵!


 瑞葵の攻撃にタジタジとなったラタトスクが、また距離を取り種をばら撒く。


 また、十体の死せる戦士たちエインヘリャルが現れる。


「そちらは任せますわ! この下衆はわたくしが成敗しますわ!」


 だいぶ根に持っているようだ。女の恨みは怖いわー。


「やれるか?」


「まあ、大丈夫じゃないかな?」


「なら、二体を残す」


「了解だ」


 死せる戦士たちエインヘリャルの群れに突っ込み大技 神仙剣舞を繰り出す。


 流れる動きによる剣撃、アプサラス師匠と訓練して習得した剣技だ。一撃の重さではなく、相手への攻撃の手数と相手の攻撃を躱すことに重点が置かれた技。


 討ち漏らしは麗華が止めを刺している。


 そして、死せる戦士たちエインヘリャルが二体残った。


「訓練生で一体、悠斗と一佳で一体を倒せ。訓練生には麗華が指示を出せ」


 悠斗の目を見てやる気があることを感じる。一佳はへなちょこだな。


「やってみろ」


 悠斗が腰の鞘から刀の抜き、ニヤリと笑った。


「承知」


 ありゃ、人が変わった? こいつ、もしかしてバトルジャンキーか!?


 刀を構えず下した状態でゆっくりと歩いていく、悠斗。


「一佳、余裕があるなら魔法で援護しろ。間違っても、フレンドリーファイアはするなよ」


「余裕がないから、休んでいいかな?」


「それだけ減らず口を叩けるんだ。やれ」


「お、鬼だ……」


 悠斗と死せる戦士たちエインヘリャルが向き合って、お互い手を出さずに睨み合いが続き両者ニヤリと笑った瞬間、鍔迫り合いになっていた。


 は、速い!? ちょっとびっくり!


 っていうか!? Lv0で七等呪位クラスとり合ってやがる!


 力負けしている感はあるものの、速さ技量は負けていない。


 これが自衛隊エリートの実力か!


 適合率は低いが下手な自衛隊ホルダーより実力は上。地力が全然違うレベルなんだと思う。


 既に何合も斬り合っている。BPの回復はしてやっているが、そろそろ限界っぽいな。体力の限界が近く緊張の糸が切れかかっているようだ。なんで、そこで引っかかるかなぁ? ってところでフェイントに引っかかり始めているからな。


「一佳。悠斗を下げさせるから、残ったTP全部で魔法を使え」


「ラ、ラジャーだよ」


「悠斗、下がれ!」


 悔し気な表情を見せるがおとなしく引いた。こういうところは大人とガキの違いの差が出るな。


 死せる戦士たちエインヘリャルにライトバレットが何度も放たれる。


「く、来るなぁ~、来るなよ!」


 あまり効いている様子がないな。だんだんこちらに近づいてくるので、サンダーで巻き付け動きを封じる。


「も、もう、無理……」


 まあ、いいだろう。太刀・霧獣を手に取り、近づいて首を跳ねる。


 訓練生のほうも麗華の指示と助力を得て、死せる戦士たちエインヘリャルを倒した。


「どうだった?」


「し、死んだぁ……」


 死んでねぇ~よ。 ピンピンしているから問題ない。


「力、体力、気力、すべてにおいて負けていました。正直、悔しいです……」


 そこまで卑下することはないんじゃないか?


 速さや技量は負けていなかったと思うぞ?


 初めてであそこまでやれたのは正直驚愕だ。


 あえて言わないけどな。







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