263.ラタトスク戦
瑞葵たちが来たので出発。
二軍と三軍にそれぞれ一条さんと鍋島さんが付いていく。こちらは水島顧問が付いてくる。車は二台、早乙女さんと今宮さんがサポートに付く。
場所は昨日と同じ代々木公園。
移動の間に瑞葵と麗華に、前に使えるようになった訓練ルームについて詳しく教える。
「時間がリアルで進むのは残念ですわ」
「そうだな。それと、その時間の間はこの世界から消えているようだから、注意が必要だぞ」
「それは、なんとも不思議としか言いようがないな」
麗華さん、それ、今更じゃね?
「ですが、今まで戦ったことのある
「自分の実力を見るにはもってこいだな」
楽しいのだが、時間がリアルで進むのがねぇ。ランクバトルと同じだったら最高なのにな。それと、ほかのホルダーも一緒にできれば尚最高。
駐車場について訓練生と一佳に昨日手に入れた武器防具で好きな物を選ばせる。
それと、早乙女さんにガンメタのベルトポーチを渡す。
「これは?」
「触ればわかる」
「これは……」
未登録ホルダーにホルダーの適合者が触れると否応なしにホルダーになる。俺の時は少し時間があったけど。
どのくらいの確率かは検討がつかないけど、運悪く? 運良く? ホルダーになってしまう者もいるはずだ。やはり、そういう人はダークホルダーに落ちてしまうのだろうか?
「ステータスが見えたか?」
「見えました」
「スキルは何がある?」
「剣術 一刀流、小技
おいおい、適合率は低いが才能はずば抜けているんじゃないのか?
「プチ剣術じゃなくて剣術か?」
「はい。剣術Lv1と出ていて下に一刀流とあり、小技、奥義と続いています。小さい頃から一刀流の剣術道場に通っていたせいでしょうか?」
「わからん。が、あり得る話ではある」
一刀流ということは伊藤一刀斎か。戦国時代の剣豪だな。
ということは、刀と武者鎧でいいだろう。ちょうど昨日のドロップ品がその系統の武器防具だ。
武器防具を渡してホルダーの使い方を簡単に教える。詳しくは後日だ。
「今日から試験的に俺たちのチームに入れる」
「試験的にですの?」
「ああ、試験的にだ。取りあえず、身体強化と投擲、プチBP回復を覚えさせる」
「早乙女さんは私たちより年上だがなんと呼べばいいんだい? 恢斗」
たしかに。どうする? こういうところが年が離れていると面倒だ。
「少しの間だがチームメイトになるんだ。
「いいのですか?」
春塚家から派遣されてきたとはいえ、神薙家と雪乃家のご令嬢だからな、名前を呼び捨てにするのは気が引けるのかもな。
「構わん」
「仕方ないですわね」
瑞葵はちょっと不満な顔を見せたが承諾してくれた。麗華は気にしていないようだな。
チームが四人になったので
訓練生と一佳のほうも水島顧問からの訓示が終わったようなので移動する。
ラタトスク 六等呪位 世界樹ユグドラシルの梢に住んでいる栗鼠。道徳的に中立を保つが、極度の悪戯好き。
デカイ赤いリスだ。愛嬌のある顔をしている。だが、俺は知っている。こいつは悪い意味で有名な奴だ。こいつの悪戯のせいで世界樹ユグドラシルが崩壊して、
ちなみに、
撮影機器を設置して全員に情報を伝える。
「前回同様、訓練生は筋トレ、投擲訓練、素振り、
「承知した」
「では、始めよう」
バトルフィールドを展開。数名から悲鳴のような声が上がる。これは慣れるしかない。
訓練生、一佳、悠斗が筋トレを始める。一佳が恨めしそうに俺を見てくるが無視。もやしな自分を恨むがいい。学祭が終わったらフィットネスクラブ送りだな。
悠斗が率先して声を出し、訓練生たちに駄目出しをしながら筋トレを行っている。麗華より厳しいな。そして筋トレの動きがキレッキレだ。訓練生たちも鍛えてきてはいるのだろうが、全然違う。さすが元エリート。
瑞葵たちの戦闘も始まっている。モフモフな毛に邪魔されて上手く攻撃が本体に通らないようだ。
それにラタトスクは攻撃を受ける度に悲し気な表情と小さな悲鳴を上げるせいで、可愛いもの好きの瑞葵の表情が優れない。
だが、俺は見ている。瑞葵の見ていないところで、ニタ~っと歪んだ笑いをしているラタトスクを。相手の心の隙を突く精神攻撃。最低だなと思う反面、俺もそういう攻撃が嫌いではないので参考になる。
瑞葵にはあえて言わない。自分で乗り越えることであり、なにより気づけよと言ってやりたい。周りが見えていないということだからな。
ラタトスクに武器での攻撃はあまり効いていない。あの毛には斬撃耐性や打撃耐性があるみたいだな。代わりに魔法攻撃は普通に効いているように見える。
そんなラタトスクも多勢に無勢で一度距離を取り、種のようなものを辺りにばら撒く。芽が出たと思ったら花が咲き、そこから甲冑を着けて戦士たちが現れる。その数十五体。
なかなか、演出が凝っているなぁ。
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