260.訓練後ミーティング

 瑞葵と麗華の飲みっぷり、食いっぷりを見て馬鹿らしくなったのか、自衛隊組も遠慮なく注文を始めて飲み食いを始めた。さすが自衛隊員だけあって、男女問わず食う。遠慮なく喰う。


 今日は人数も多いことから、レシートが2mを超えた。値段もファミレスで払う金額じゃない。まあ、カードで払うからいいのだけど。


 ついでに、かりんの夕食と事務所へのお土産もテイクアウトしている。


 事務所に戻ると、まだ春塚さんと倉木さんが残っていた。


「そういえば、瑞葵と麗華は春塚さんとは知り合いか?」


「当然ですわ。家族ぐるみのお付き合いですもの」


華澄かすみとは小さい頃からの付き合いだぞ。恢斗」


 幼馴染って感じか?


「まさか、瑞葵と麗華が恋のライバルになるなんて思ってもいなかったわ」


「はぁ~? この駄犬がですの? 笑ってしまいますわ!」


「まあ、そうなのかな? ごにょごにょ……」


「あら、瑞葵は不参戦でいいのね?」


「むっ……」


 さ、さあ、会議室に行こうかな。二軍と三軍はまだ帰ってきていない。明日でもいいか。


「ハ、ハーレム野郎か!?」


 はいはい、一佳は紙にステ値書いて、瑞葵にでもドロップ品を渡したら帰っていいぞ。


 星野さんにかりんと夜食のお土産を渡して会議室に移動。


 会議室には訓練生組と水島顧問、早乙女さん、なぜか今宮さんがいる。瑞葵と麗華は不参加、俺に任せて帰るようだ。毎度毎度……まあいい。


「まず、話をする前にこちらのデータを見てもらおう」


 ディスプレイに三軍のレベル成長のデータを出す。これは水島顧問にも見せたことがないデータだ。もちろんクレシェンテの極秘ファイルなので許可がないと見れないし、印刷もできないようにしている。


 なぜ三軍なのかは同じくらいの適合率だからだ。俺たちのでは参考にならないし、見せたくない。


「これは九月からうちに所属した三軍のデータだ。訓練生はこの三軍とほぼ同じ訓練をしてもらう。これを見れば二週間後の自分がどのくらいになっているかわかるだろう」


「おいおい、適合率の上昇がおかしいだろう! これは正しいデータなのか!」


 一条さんだけでなく、水島顧問も驚いているな。


「正しい。二軍のデータも同じような上昇率になっている」


「すいませ~ん。適合率って何かなぁ……なんて質問していいかな? なんて?」


 全員に睨まれ、尻つぼみになる今宮さん。


「適合率というのはホルダーの強さの指標みたいなものだ。ある一定値を超えると、強さに補正が入る。その最初の超えるべき数値が150%だ」


「高ければ高いほど補正が入って強くなるってこと?」


「それだけじゃない。レベルが上がるとステータス値を任意で上昇させられるポイントが入る。適合率が一定値を超えると入ってくるポイントも増える」


「ん? ってことは、同じレベルでも適合率が違うと入ってくるポイントが違う?」


「そういうことだ。訓練生は今日レベルが一上がっている。この中で適合率が上がった者は挙手しろ。どうせ後でステータス値を書かせるから気にせず挙げろ」


 三人が手を挙げた。


「し、信じられん……」


 ここにちゃんとしたデータがある。訓練生も認めている。どこが信じられないんだ?


「さて、質問を受けよう」


「……風速くんのチームの適合率が知りたい」


 さっそく一条さんか。馬鹿な質問をしてきたな。


「教えるわけがないだろう。俺と瑞葵、麗華はクレシェンテのエースだぞ。まあ、鑑定持ちなら見れるようだがな」


「そうか、残念だ。鑑定持ちでもレベル10にならなければ見れないぞ」


 ということは、椿さんは鑑定のレベルがカンストしているってことか。伊達に長年ホルダーを続けていたわけではないということだ。


「なぜ、六等呪位と戦わせた。危険とは思わなかったのか?」


 またまた、一条さん。ほかの人が質問できないだろう!


「どこに危険があったのかがわからい。それはまあいいとして、七等呪位でもよかったのだが、面倒だから六等呪位で訓練させた。三軍の時も同様だ」


「面倒とはどういう意味だ。人の命が懸っているんだぞ?」


「七等呪位でも結局やることは同じだ。その場合、人数制限で訓練生と俺たちとで二度戦う必要が出てくる。やることが同じなら、レイド戦ができ、余っている枠を使うほうが効率がいいからだ」


 ある程度強くなれば七等呪位と戦わせるつもりだが、六等呪位戦でも七等呪位クラスが出てくるからなぁ。訓練ルームが使えるようになるまでは六等呪位でいくか。


「六等呪位に新人を当てることが非常識だと言っている!」


「あんたたちはここに何をしに来ていると思っているんだ? あんたたちが今までやってきたことが、間違いであったと理解するための被験者として来ているんだ。このひよっこどもを強くしてやると言っているんだぞ? 納得できないなら帰れ。ホルダー管理対策室の顔を潰すことになるだろうけどな」


「くっ……」


 人選間違っているんじゃね? なんでこの人が送られてきたんだ?


「……だが、死人が出たらどうする気だ?」


「ホルダーになった時点で覚悟はできているんだろう? 殉職で二階級特進じゃねの?」



「「「「「!?」」」」」


「ふ、ふざけるな!」


 別にふざけてはいないんだがな。


「お前たちはそんな半端な覚悟でホルダーになったのか? そうなら辞めたほうがいい。後で水島顧問に話を聞け。教えてくれるかは知らないけどな」


「「「「「……」」」」」


 俺たちはあえて聞かないが、自衛隊同士傷の舐め合いをすればいい。その相手として水島顧問はうってつけだ。うちの連中には必要ない。そうならないように鍛えているし、おそらく聞かせてもへぇ~だから? って感じになる奴が多い。


「それとだ、何度も言っているが、どこに危険があった? 筋トレさせていただけだぞ? 危険といったら、早乙女さんと今宮さんがあそこにいたことも危険ということだ。二人は危険を感じたか?」


「恐怖は感じましたが、戦いを見ている限り余裕がありそうに見えていました。ですので、それほど危険とは感じていませんでした」


「確かにあれにはビビった。けど、戦闘自体は余裕があったように見えたなぁ」


 素人……まあ、ホルダー素人ってことでいいか。実際は自衛隊で厳しい訓練をしてきているだろうけど。


 その素人でさえ危険とは感じていなかったんだぞ?


 過剰反応だと思うのは俺だけか?










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る