256.訓練生

 鍋島さんは存在否定された気分だろう。だがそこは、見解の相違ってやつだ。


「サ、サポーターを入れない……その理由は?」


 はっきりと言われ動揺しているようだな。


「無駄だから」


「無駄? それで助かる命があると思うが?」


「ホルダーが余っている自衛隊ならそれでいいだろうが、俺ならそのサポーターを集めてチームを作らせ、下位の化生モンスターを狩らせる」


 適合率が低いのはわかるが、それでも下位の化生モンスターなら倒せるだろう? もったいないと思わないのだろうか?


「サポーターの抜けた穴はどうする?」


 一条さんも参戦してきた。


「サポーターを入れるより使役化生モンスターを入れるほうがいい。五人のホルダー編成なら一人二体の使役化生モンスターが使える。回復役にも戦力にもなる。最悪、捨て駒にして逃げることも可能になる。うちでは必ず一人一体、使役化生モンスターを持たせている」


「この者たちにも使役化生モンスターを持たせると?」


「そうだな。せっかくだ、一体ずつ進呈しよう。だが、まずはそれに頼らない戦い方を学んでもらう」


「五体も無償で寄こすというのか……本気か?」


 健志たちが頑張ったおかげでカードがだいぶ余っている。この二週間でも七等呪位からそれなりにカードが出ている。特殊アイテムでも数体レア使役化生モンスターが出ているしな。使わない使役化生モンスターのカードをオークションに出そうかって話も出ているくらいだ。


 それに、たかだか使役化生モンスターのカードをやるだけで、クレシェンテの凄さをわからせることができるし、実際に使えばサポートの不要さを実感できるはず。まったく損はない。


「サポーターを一人抜くだけで、使役化生モンスターのチームが二チームも加わるんだぞ? どっちが安全マージンが高いかは言うまでもないだろう」


使役化生モンスターのカードを揃えるまでにどれだけの労力、時間を要すると思っているんだ!」


「だから、何度も言っている。あんたたちが今までやってきたことが間違っていると。黙って二か月間見ていろ。それで理解できないようなら、病院を紹介してやる」


 雪乃製薬グループのな。脳外科ってあるのか知らんが。


「「……」」


 クレシェンテのホルダー育成方法を確認しに来たんだろう? なら、黙って二か月間見ていればいい。それで、結果が出る。今までのやり方が間違っているとな。


「訓練生からは質問はないのか?」


「教官殿はどのくらい強いのでしょうか?」


 手元の資料を見る。


 島津真尋しまづまひろ Lv1 ホルダー10651 適合率138 22歳


 このチームのリーダーで防衛大出身者はこいつだな。見るからにお堅そうな性格に見える細マッチョだ。


 残りのメンバーは資料によるとこうだ。


 毛利岳人もうりがくと Lv1 ホルダーランク11081 適合率132 24歳


 宇喜多泰生うきたたいせい Lv1 ホルダーランク11277 適合率128 18歳


 黒田千夏くろだちなつ Lv1 ホルダーランク11128 適合率131 21歳


 細川詩織ほそかわしおり Lv1 ホルダーランク11195 適合率130 18歳


 ランクバトルができれば一目瞭然なのだが、まだこいつらはランクバトルができない。


「弱いと思うか? それとも、俺が教官で不服か? この後、見れるからそこで判断しろ。それで俺の強さに納得できないなら、三日後に戦ってやる」


「三日後に戦うとは?」


 毛利岳人もうりがくと24歳、こいつが一番年上だな。自衛官らしい背が高くがたいがいい。


「七等呪位以上を二体狩ると、ランクバトルというものが行えるようになる。そこで俺とタイマンで戦える」


「怪我とかはしないのか?」


 黒田千夏くろだちなつ21歳、ボーイッシュな感じで刈り上げショートの髪型だ。


「しない。BPがなくなった時点で終了になる」


「デメリットはないのでしょうか?」


 宇喜多泰生うきたたいせい18歳、幼さの残る顔立ちで体格も痩せ型の中背。こいつ自衛官で大丈夫か? って感じの奴だ。


「ない。逆にホルダーランクの高い者に勝てばランクが上がり、良いアイテムとポイントが手に入る」


「ゲームみたいですね」


 細川詩織ほそかわしおり18歳、中肉中背の言っちゃ悪いがそこら辺にいるJKって感じ。ショートでポニテにしている。


「質問があればいつでも質問してくれ。最後にこのチームにうちの新人ホルダーを加えて訓練を開始する。日中に会っている者たちもいるが、これから会う者もいるので、場所を変えて自己紹介してもらう」


「日中に会っていないホルダーがいるのはなぜでしょうか?」


「俺とまだ会っていない三人は大学生だからだ。もう一人、高校生がいるが、正式に所属するのは高校卒業後なので会うことはないだろう」


「大学生なのか……」


「まじかよ……」


「「「「……」」」」


 一条さん以外は知らなかったようで驚いているが、どこに驚く要素があるのかわからない。


 ほかのメンバーとの顔合わせは水島顧問に任せよう。


 この後、新しい職員との顔合わせが残っている。


 時間はギリギリだ。










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