255.パーティーですか?
冷蔵庫もでけぇな。元々、使っていた冷蔵庫の四倍くらいはある。中身はスカスカだ。明日、東雲さんが買い物をしてきてくれることになっている。
ワインセラーも搬入され設置されているので、お酒の手配も頼んでおいた。日本酒を入れてもいいタイプのようなので、ワインだけでなく日本酒もお願いしておく。
夕飯は俺の冷蔵庫の残り物で作ってくれた焼うどんをみんなで食べ、月山さんと東雲さんと打ち合わせに入る。
東雲さんと契約を交わし、契約書にお互いサインする。東雲さんへの給料は給料から天引きされる、家賃もね。さすがにすべてを神薙家持ちにするのは嫌だ。なので、ほかの社員と同じ待遇でお願いした。
月山さんに言われて作っておいた、部屋の維持管理してもらうための新しい口座のカード、部屋の合鍵、認証コードの書いた紙を渡す。これで、俺がいなくても部屋に入れるし、買い物もしてもらえる。
基本はお任せ。触ってほしくない場所、食事での好き嫌いなどを聞かれて答えていく。この部屋でパーティーなどを開くときは別途ご相談になる。やらないと思うけど。
東雲さんとは別に、年二回ハウスクリーニングが入ることになる。これだけデカイ部屋だと、専門の業者を呼ばないと駄目らしい。
かりんを抱っこしてニコニコとモフモフしている東雲さんから、かりんは常時部屋にいるのかと問われたので、基本俺と一緒と答えたら残念そうな顔をしていた。この人もモフラーか? それとも、魔性の毛玉に魅入られたか?
来年からは妹もここで暮らすことも伝えておいたが、家ごとの契約なので問題ないと言われた。妹の件は実際にこちらに移り住んでから再度話し合いを持つことになった。
そして、月山さんから爆弾発言が投下された。
「来週、土曜にここでパーティーを開きます。これは決定事項です」
「まじ?」
「まじです。パーティーと言っても内輪でのものですから、気を使わなくて結構です。準備は東雲さんとこちらで準備するので、風速くんの手を煩わせることはありません」
神薙ご当主、瑞葵姉妹に雪乃家祖父、麗華三姉妹だそうだ。見合いじゃないよね? 顔見せ感が透けて見えるのですけど……。
「明日、スーツを仕立てるのに寸法取りをするわ。自衛隊の件もあるから、できるだけ早く事務所に来てね。来る前に電話をちょうだい」
「あいあい……」
今日はこれにて解散。
ベッド、デカすぎて落ち着いて寝られなかった……。かりんは大きなベッドに喜び、はしゃぎ回ったあとすぐに爆睡していた。大物だ。
月曜、一佳になるべく早く事務所に来るようにメールをしておく。今日から自衛隊の訓練生と一緒に狩りに参加してもらう。連絡しておかないとバックレる可能性がある。単位はほとんど取り終わっているだろうし、卒論作成ももう終わりに近いから暇なはずなのだ。
なのにだ、やはり学祭の準備が忙しいとふざけた返信がきた。四年なんだから、後輩に任せろよ!
仕方ないので、雪乃グループのバックアップを縮小するぞ! とメールを送ったら、必ず参上します! と返信がきた。面倒くせぇー。
月山さんに連絡を入れてクレシェンテに移動。上の階の工事は完了し、下の階はもう少しかかりそうだが業務に支障はないそうなので今日から使用している。だいぶ広々となったな。
件の訓練生と教官は上の階に既に来ていて、午後のフィットネスクラブを二軍と三軍と一緒にこなしてきている。今は水島顧問が対応してくれているそうだ。
着いて早々にスーツの寸法取り。このためにわざわざ職人さんを呼んでいる。フルオーダーメイドかよ……。
寸法取りが終わり、ノートPCを使ってスーツの生地や色を選択して出来上がりの確認。モーニングとタキシード一着ずつ、セミフォーマルスーツとビジネススーツを二着ずつ作ることになった。
やっと解放され上の階に上がり訓練生と教官、水島顧問を会議室に集める。
「
全員の顔が引きつっているな。一条さんが本当か? って水島顧問をみるが、水島顧問は苦笑いで頷いてみせた。
元々、階級社会で生きているんだ、年齢は関係ないと思うんだが?
「それで、こいつらはレベル1と聞いているが、何等呪位を倒してレベルを上げたんだ?」
「十等呪位を倒してレベルを上げた」
一条さんが答えた。
「レベルの無駄遣いだな。ダークホルダーでさえ、最初の二回は七等呪位を倒すのにな」
「なぜ、無駄遣いになる?」
「あとでうちで作った教本を見せる。それを見ればわかる。言っとくが閲覧は許可するが、持ち出しは禁止だからな」
教本を製本するか迷ったが、月山さんと相談して製本しないことに決めた。本にすると持ち出される危険性があるからだ。すべて、サーバーで管理して、閲覧許可出さないと見れないようにして、閲覧履歴も残るようにしている。
「今日から二か月うちで訓練するわけだが、二週間、実質十日間で七等呪位を倒せるまでにする。それ以降はレベル上げのための時間となる」
「本気か?」
「本気だ。実績としてうちの二チームがそのスケジュールで独り立ちしている」
また、水島顧問を見て確認している。もちろん、水島顧問は頷く。
「何か質問があれば答えるが?」
「自衛隊とこのクレシェンテでの戦い方の違いを聞かせてほしい」
一条さんと一緒に来たサポーターの教官だな。
「自衛隊は強者のワントップに役割を持った四人、一人のサポーターのチーム構成だよな?」
「それは中位ランク以上のチームだ。最初はワントップを作らず、五人での役割分担を指導している」
なるほど、そこから強者となるものを選別していくのか。
「うちは役割は作るがトップは作らない。言わば、全員がトップとなるように育てる。トップが崩れてお終いは馬鹿のやることだ。それと、サポーターも入れない」
鍋島さんも一条さんも俺の歯に衣着せぬ言い方に顔を引きつらせているな。俺から言わせれば、おいおいって感じだ。なんで、わざわざ言葉を飾って話す必要がある?
本当のことだから、間違っていることは間違っているとはっきりと認識して帰ってもらわなければならない。
そうしなければ、せっかくここに来たのに何も変わらないで終わってしまう。
それは無駄な時間でしかない。
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