251.ギャップ
月山さんと蒼羽先輩の契約の話も無事済んだようで、誓紙にも名前を書いたようだ。
狩りに出る前に大会議室に全員集める。
「今日から新しくクレシェンテに加わる
「レベル上げはどうするんですか? アニキ」
「来週から来る自衛隊の訓練生と一緒に鍛える」
訓練生は五人だからな一枠余っている。そこを使わせてもらおう。
「錬成だけで、狩りはしないということでしょうか? アニキ」
「本人が狩りをしたいと望むなら、その限りではない」
三軍連中はニヤニヤだな。狩りでいい所を見せようとでも思っているのだろう。
「はいは~い! 錬成ってこの事務所でやるんですか~?」
「まだ決まっていない。今週の土曜にその話をする打ち合わせを行う」
三軍連中が一気に意気消沈したな。専用の場所が必要なのかは俺も知らない。話を聞いてみないことにはなんとも言えん。
「歓迎会は金曜でいいっすか? アニキ」
「蒼羽先輩の予定もあるだろうから追って指示する。俺としては訓練生と一緒にやるのがいいと思っている」
ブーイングが上がる。たんに飲み会をしたいだけじゃね? それとも合コン感覚か?
この後、蒼羽先輩と面談をするので今日の狩りには付いて行かない。俺が付いて行かなくても瑞葵と麗華で十分だし、三軍ももう独り立ちしても問題なくなっている。サポート要員が足りないので一緒に狩りを行っているだけだ。
全員が狩りに出発したので、日勤組と夜勤組、水島顧問に蒼羽先輩を錬成要員として改めて紹介する。
「僕は正義の味方の手助けをできるならと志願した。よろしく頼むよ」
「人間性としてはあれだが、これでもうちの大学の才女として名を馳せている人物です。みなさんには彼女から抜け落ちている、女性としての成長も含めてのサポートをお願いします」
「き、君は酷いことをはっきりと言うね……」
事実だからな。俺は間違ったことは一言も言っていない。うちの女性陣は苦笑いだ。
挨拶も済んだので会議室に移る。蒼羽先輩、ずっとお姉さま方にモフモフされているかりんを目で追っている。興味があるのか? 実験動物的目線ではないよな?
「さて、ではホルダーになってもらおう」
「そんな簡単になれるのかい?」
蒼羽先輩のテーブルの上に俺の持つ未登録ホルダーを並べる。麗華と昌輝に渡している分はないけど、これだけあればひとつくらい気に入ったものがあるだろう。
「まだ触らないように。一つだけ気に入ったものを選んでくれ」
並んだホルダーの一点を見つめている。まさか、それを選ぶのか!?
「これがいいな」
まじかよ! まさかの黄色いウエストポーチにピンクのウサギの人形が付いたものを指差しやがった!
「いいのか? 一生ものだぞ?」
「か、可愛くて、僕の感性にビビッときた。問題あるかい?」
ないが、あまりにもギャップがありすぎて驚いた。誤魔化しているようだが、可愛いもの好きのようだ。これがギャップ萌えってやつなのか!
「いや、いいならいいんだ。それを手に取ってくれ」
手に取った瞬間、ビクッと体を震わせたので登録が始まったのだろう。少しして虚空を見つめ始めたのでステータスを見ているのだろうな。
「見えたか?」
「見えているね」
「スキルがあると思うが何がある?」
「スキル? これのことかな? 先読みとあるね。ん? 一瞬、先のことが見える? 凄いな、急に頭に浮かんできたよ」
ほう。先読みねぇ。良さそうなスキルだな。
「最後にクレシェンテに所属したから、これからは
「な、なぜ!?」
「このクレシェンテで先輩なのは俺だからだ!」
「……」
なんだ、そのジト目は? 文句あるのか?
この後、基本的なホルダーの使い方を教えて今日は解散。学祭の協力の件は麗華と話してもらうことにした。次回は土曜の午後にクレシェンテに来るように伝える。
まだ、誰も戻ってこないので仕事をしよう。そう、水島顧問がやっと終えたホルダーに関しての資料を俺が精査してクレシェンテ独自の教本としてまとめる仕事だ。
資料はすべてクレシェンテの女性陣が文書作製ソフトに落としてくれている。しかし、すべてが使えるわけではない。クレシェンテの方針にそぐわない内容も多くある。要するに、間違った認識などだ。
それをあえて、ホルダー管理対策室やほかの組織に教える気はない。聞かれれば答えることもあるだろうが、聞いてくることはまずないだろう。
そういういらないものを削除しつつ、今までに学んだことや気づいたことを追記していく。魔法の相殺や形態変化などの応用技について。技能はすべてアシストでありベーシック状態で、それを如何にアレンジして自分のものにするかが大事であるかなどだ。
ちなみに、俺の知らないこともいくつか書かれていた。その一つが、スキルは稀に進化するというもの。これはプチが取れるということではなく、上位スキルに変化するということだ。残念ながら、その方法は不明。だが、面白いな。
それと、防具に関してだ。
七等呪位に関しても新事実があった。七等呪位はホルダー以外狙わないということ。水島顧問が七等呪位狩りの時に、赤星さんがいても何も言わないのこのことを知っていたからだ。もし仮に置いて逃げても問題ないということだ。
謎が少し解消された。
スキルの発現訓練方法も少し載っているがほとんど俺の知るものだ。ほかの組織もこんなものなのだろうか? まあ、いい。
こうして、出来上がった資料をまとめて本にするのが俺の役目。
そして、それがクレシェンテに所属するホルダーの教本となる。
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