250.錬成要員ゲット

 広い、無駄に広い。俺的には寝室の広さのワンルームでもいい。いや、五月花めいかが一緒に住むから二部屋は欲しいかも。


「誰が掃除するんですか……。これを掃除してたら一日がかりですよ?」


「なに言っているのよ。家事代行サービスか家政婦を雇うに決まっているでしょう!」


「いやいや、もっとこじんまりとした物件はありません?」


「はぁ……。いい。瑞樹さんや麗華さんにしても、これから風速くんがお付き合いしていくお嬢さんたちは良家の出よ。狭い部屋に呼べるわけがない! とご当主が仰っていられたわ。諦めるのね」


 呼ばねぇーし! 四十二階なんかに住みたくねぇーし!


「となると、一戸建てになるわよ? この辺でそれなりの大きさの家を買うとなると一億どころか十億超えるけど?」


「無理……」


「じゃあ、こちらで我慢しなさい。家賃はほぼかからないし、家政婦もこちらで手配するんだから手間はかからないわ」


 そういう問題ではないのだが……。


「それから、すぐに引っ越しをしてもらいます。来月から忙しくなるから、体が空いているうちに行います。今住んでいる部屋についてはこちらで話を付けるから、不動産屋を教えてね」


 来月までってあと一週間もないような気がしますが?


「引っ越し業者を頼もうと思うけど、どうする?」


「ホルダーがあるので必要ないです。それほど荷物もないし……」


 メインベッドルームだけで今住んでる部屋より大きいんだぞ? 引っ越し業者を頼むほどじゃないし、恥ずかしい思いをするだけだ。


「はぁ……。引っ越しの際に一度確認する必要がありそうね。必要最低限の家具や家電もこちらで用意したほうがいいかしら?」


 正直、頼みたくない。その必要最低限というのは一般庶民の目線ではないだろうから……。


 ということで、今週の木曜の午後が講義が休みになっていて、丸々空いていることから引っ越しに当てることにした。


 憂鬱な気分を引きずった水曜の午後、麗華からスマホに連絡が入る。


 蒼羽先輩が麗華に再度接触してきたそうだ。いつものジャズ喫茶で待ち合わせすることにした。


 いつもと違い、髪も整え身綺麗な格好をした蒼羽先輩がいる。瑞葵や麗華とまではいかないが、十分に美人の枠に入る容姿だ。いつもこうしていればいいのにな。


「それで、話とは?」


「ホルダーというものになりたい」


「その覚悟ができたと?」


「好きな研究を続けてもいいという条件なら」


 なるほど、そうきたか。まあ、別に構わない。そんな時間があるかは知らないけどな。


「いいだろう。ようこそ、非日常の世界へ。クレシェンテは蒼羽先輩を歓迎する」


「いいのか? 恢斗」


 呆気なく承諾された蒼羽先輩はポカンとした表情になっている。麗華もそんな簡単に決めていいのか? って感じだ。


「一度この世界に入れば、簡単には抜け出せないことは説明している。その覚悟ができていると言っているんだ、断る理由はない」


 それにこれ以上ない錬成要員としての人材だ、逃す手はない。


 善は急げ、このままクレシェンテに蒼羽先輩を連行していく。


「ちょ、ちょっと、僕をどこに連れていく気だぁ!」


「うちの事務所だ。正式な契約を結んでもらう」


「あ、あ~れ~」


 面倒なのでタクシーを捕まえて中に蒼羽先輩を放り込み、クレシェンテに直行。


「風速くん。あなたねぇ……」


「言いたいことはわかりますが急ぎなんです。今週末に副顧問の面接があるでしょう? この蒼羽先輩はその錬成に携わってもらうホルダーになります。ついでに、自衛隊の訓練生と一緒にレベル上げをしようと思います」


「はぁ……。じゃあ、話はある程度済んでいるのね?」


「はい。なので契約の件をお願いします。蒼羽先輩は四年なんで来年卒業です。それまでは仮契約って感じですかね」


 卒業したら正式に契約を交わすことになる。誓紙には名前を書いて縛るので問題ない。


「あの、あの、何がなんだか……」


「風速くん。大丈夫なのこの子?」


「気にせず進めてください。それと、誓紙に名前を書かせるのも忘れないでくださいね」


 待機室に行くと隼人たちがいた。


「アニキ。あのマブイ女もこれっすか?」


 小指を立てるな。


「違うぞ。今度、新しくホルダーに加わる人だ」


「「「「「うぇーい!」」」」」


 三軍には女性がいないから喜んでいるようだな。だが、残念。


「言っとくが、狩り要員じゃないからな。錬成に携わってもらう人材だ」


「でも、フリーなんすよね?」


「知らん。口説くのは自由だが、残念美人だからな。後で後悔しても知らないぞ」


「「「「「うぇーい!」」」」」


 聞いていないな、こいつら。本当に俺は知らないからな。


 そうこうしていると、瑞葵と麗華もやって来た。


「マッドサイエンティストを雇ったと聞きましたわ。大丈夫ですの?」


「狩り要員として期待していない。錬成に注力してくれれば問題ない。マッドサイエンティストの本領を発揮してくれることだろう」


「爆弾を抱えたような気がするのだが? 恢斗」


 それは、俺も否定はしない。だが、デメリットよりメリットのほうが上回っている……はず。


「どうせ、錬成要員は必要だった。研究好きで、そのうえホルダーとしての才能も高い。これ以上の人材はそうはいない。おそらく錬成は一朝一夕で成果がでるものじゃない。苦とも思わず長く地道に研究を続けられる人材が得られたんだ。喜ぶべきだろう?」


「そ、そうなのか?」


「マッドサイエンティストですわよ?」


「なら、二人が錬成をやるか?」


「か、歓迎会の準備が必要ですわ!」


「そ、そうだな。新たな仲間が加わるのは喜ばしいことだな!」


 逃げたな。


「今週末の副顧問の面接に加わってもらおうと思う。科学者目線で見れる人間がいれば、少しは役に立つんじゃないか? それに、メインになるのは蒼羽先輩だからな。それと、約束どおり、俺は一切口を出さないからな」


「我々と違う目線で見られるというのはありだな」


「そうですわね。錬成に関してはお任せすることになりそうですから」


 よし、二人の同意は得られた。


 蒼羽先輩には頑張っていただこう。





猫(ΦωΦ) Ψ(ΦωΦ) Ψ(ΦωΦ) Ψ(ΦωΦ) Ψ(ΦωΦ) Ψ猫


ブラックマーケット・∞(インフィニティ)~世界の理から外れた男の二拠点生活~

https://kakuyomu.jp/works/16817330667341551839


百話達成しましたにゃ!

よかったら読んでくださいにゃ(ΦωΦ) Ψ






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