249.社宅

 まじかぁ……。うちの両親、正義のヒーローになれるんですけど……。


 父は適合率172%、母は適合率187%なんだよねぇ。俺と五月花めいかの適合率の高さって、この親ありきなんじゃね?


 鎖国前は海外から優秀なホルダーを招き入れて、日本の優秀な血と掛け合わせていたらしいからな。どこかで、その血がうちの家系にも入ったのかも。


「なれるが、年齢的に無理」


「年齢的に無理とはなんだ! 父さんはまだまだ現役バリバリだぞ! なあ、母さん!」


「もう! お父さんったら!」


 顔を赤くして父さんの肩をばんばん叩く母さん。なにが現役かは聞かないからからな! 親の痴話なんぞ聞きたくないわ!


「ねえ、ねぇ、お兄ちゃん。かりんちゃんもその正義のヒーローに関係するの?」


「かりんは霊獣といって、大きくなれば化生モンスターと戦うことになる……はず。そのために生まれてきた存在だ」


「きゅ~」


 クレシェンテの女性陣にモフモフされているときより、五月花めいかにモフモフされているときのほうが気を許しているように見える。かりんは俺と五月花めいかが血の繋がりがあることをわかっているのかも。


「いつ大きくなるの?」


 かりんを膝の上に乗せてお耳をハムハムする五月花めいか。さすがにかりんも嫌がっているぞ?


「知らん」


 俺が知りたいくらいだ。今のかりんはクレシェンテの癒し係でしかない。


「こんなに可愛いから小さいままでいいのにねぇ。ねぇ、かりんちゃん」


「きゅ~?」


 俺的にはすぐにでも戦ってほしい。


 夕方からは友人に声を掛けて飲み会。ついでに東京のお土産を渡した。俺と同じように大学に通う者、就職した者もいるがあまり変わってなかったな。鑑定もしてみたが残念ながら適合率の高い者はいなかった。


 帰り道ホルダーのマップを見ながら帰ったところ、化生モンスターとホルダーが映っていた。こちらも東京とそう変わりがないようだ。こちらのホルダーとも交流をもってみたいが、如何せん時間がない。今回は諦めるしかない。


 家から多賀城までなら車で三十分くらいで着く。そんな近くに大物がいると思うと、うちって意外と危険なのかも。マンションの周りを徘徊していた十等呪位を三体ほど狩っておいた。焼け石に水かもな。


 翌日は五月花めいかと泉中央駅前のデパート巡りをしてお土産を買う。仙台駅で買うのとあまり変わらない。所詮、どこにでもあるお土産用のお菓子などだ。


 昼飯は久しぶりに母さんのカレーを要望。ヒレカツも揚げてくれカツカレーとなった。外で食べるカレーと違う旨さがあり、俺の口に合うんだよなぁ。これがおふくろの味ってやつなのかもな。


 昼飯も食ったので帰ろうとしたら、俺ではなくかりんとの別れを惜しんでいる家族がいる……。


 それでも、俺の家族か! さっさと帰るぞ! かりん!


 仙台駅でずんだシェークを二つ買って新幹線に乗る。帰りもガラガラだ。かりんにずんだシェークを飲ませてもこれなら問題ない。久しぶりに飲むずんだシェークは美味かった。


 新幹線の出発メロディーが流れる。宮城では有名な曲だ。あぁ、仙台また来る日まで達者でな~。


 月曜は構内で友人巡りをしてお土産を渡していく。生どら、月のお菓子、絵巻、えだまめのお餅、お茶屋の饅頭、笹の形のかまぼこetc.。好きな物、もってけぇー!


 クレシェンテの中央テーブルにもこれでもかと並べる。こっちにはお高い牛タン関係や金華さばの缶詰、そして宮城の地酒も置いてある。好きな物、もってけぇー!


 そうそう、瑞葵にはいくつか宮城ご当地ヒーローの公式パンフレットをお土産に買ってきた。大変喜んでくれている。


「アニキは宮城出身なんすね」


「杜の都だね~」


「俺、修学旅行で行ったことあります」


 東京や北海道の中学の修学旅行は仙台や松島に来ることが多いから、そう驚くことでもない。


 狩りに出る前に上の階の大会議室に全員が集められる。そして、月山さんから説明がなされる


 この階の工事はほとんど終わったので、今日から元の階の工事も始まっているそうだ。なので、パソコンなどは土、日を使って一時的に上の階に移したそうだ。明日からは元の階は工事のため立ち入り禁止になる。


「それから、雪乃のグループの持つマンションの一部をクレシェンテの社宅にすることが決まりました。場所は新大久保です。使用料は家賃の二割、残りはクレシェンテで負担します」


 ワンルームからファミリータイプまで揃っている。新大久保なら歩いてでもクレシェンテに来れる距離だ。


「数に限りがありますので抽選になります。明後日までに決めてください。ですが、今後も部屋を増やす予定でいますので、今回抽選に外れても次回がありますので安心するように」


「お願いします!」


 すぐに手を挙げる。俺は即決だ。引っ越そうと思っていたからな。


「風速くんは駄目です」


「な、なぜ……」


 なんで俺だけ駄目なんですか! 月山さん!


「ご当主と相談した結果、クレシェンテのトップに相応な場所を用意することが決まりました。場所は追って知らせます」


 俺が払えるくらいの普通のマンションがいいのですけど……。


 取りあえず、狩りに出かけますか。


 さっと狩りを終えて戻ってくる。健志たちも七等呪位一体ではレベルが上がらなくなっている。健志たち二軍を六等呪位に挑戦させるべきか悩む。


 隼人たち三軍がもう少し育てばレイドを組ませて六等呪位と戦わせてもいいのかもな。


 ステ値を書かせて錬成用のドロップアイテムを回収し解散させた。


「それで、どこに住めばいいんですか?」


「ここから近いタワーマンションよ」


 タ、タワマンかい!


 月山さん、ノートPCからその物件を見せてくれる。


 広すぎるだろう!


 3LDKなのはまだいい。だがしかし! リビング80㎡ってなによ! 四十五畳以上だぞ! メインベッドルームが27㎡(十五畳)、寂しくて寝れんわ!


 勘弁してくれ……。






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