234.訓練生受け入れの打ち合わせ

 今日もお昼は重役弁当。ここのお弁当は日替わりなのだがハズレがない。量も多くて俺は満足。女性陣が食べきれない分はかりんへの貢ぎ物となり、かりんからは感謝のペロペロがあるのでwin-winの関係。


 そうこうしていると、瑞葵と麗華がやって来る。


「お父様が恢斗を呼んでましてよ」


「おじい様が恢斗と食事がしたいと言っているが、いつがいい?」


 おうおう、俺は人気者だ。相手は男だけどな。


「神薙ご当主は急ぎか?」


「急ぎみたいですわ」


「じゃあ、明日行くからアポを頼む」


「わかりましたわ」


 神薙当主の呼び出しはなんだろうな? 面倒事じゃないことを願おう。


「で、麗華の祖父はなんでだ?」


「前にも言ったろう。癌治療のお礼がしたいそうだ。恢斗」


「別に気にしなくてもいいんだがな」


 これも神薙当主との契約の一部だから気にすることないのにな。


「好きなものを好きなだけご馳走すると言っていたぞ?」


「お寿司でお願いします! かりんを連れて行ってもいい所なら尚良し!」


「きゅ~!」


 かりんが空気を読んで、麗華に飛び付き可愛らしくおねだり。


「むふぅ~♡ お、おっほん、伝えておこう。いつがいい?」


「そうだなぁ。今週の土、日は休む予定だからその時で」


「了解した」


 なんでもご馳走してくれるというのだから満漢全席にも挑戦してみたいが、あれって三日三晩続ける宴会らしいからな。ちょっと無理だよなぁ。時間さえあれば雪乃家の人間だからやれなくはないと思うのだが。


 二軍、三軍が来たのでフィットネスクラブに行き筋トレ。正直、キツイ。インストラクターの人から、ここを乗り越えれば逆にそのキツさが快楽へと変わりますよと言われた。ランナーズハイみたいなものか?


 筋トレ後の水泳は気持ちがいい。全身運動にもなるし、疲れたらプカプカ浮いていればリラックスできる。


 事務所に戻ると水島顧問と月山さんに会議室に連れ込まれる。今日は本当に人気ものだな、俺。


「十月から来る隊員が決まった」


 水島顧問が訓練生のリストを渡してくる。


 ホルダーの名前は書かれていないが、年齢と性別、レベル、適合率が書かれている。全員レベル1でハイランクキラーは無し。レベル1分だけ損しているな。適合率は全員130%後半。


 意外とまともなホルダーを寄こすようだ。人数は訓練生のホルダーが五人と研修の教官が二人。今回はサポーターは来ないようだ。


「一条ってあの一条か?」


「あの一条だ」


「なんで?」


「一条は守護を引退した」


 はぁ~? それって俺のせいか? 


「君のせいではない。一条は元々守護として限界を感じていたようだ。そこに君とのランク戦で敗れたことで、引退する決意を固めたようだ」


 それって、俺のせいじゃねぇ? 知らんけど。


「そうか、別にどうでもいいけどな」


「風速くん! そのせいでホルダー管理対策室は大騒ぎなのよ! うちにもチクチクと嫌味を言ってくるのですからね!」


 知らんがな。辞めたきゃ辞めればいい。俺には関係ない。


「期間は予定どおり二か月。スケジュールは、平日午後から基礎体力作り、夜から化生モンスター討伐。土、日は休みでいいのだな?」


「俺の予定次第だから多少のスケジュールの変更は見ておいてくれ」


「本当に大丈夫なの? 二か月で」


「実質、二か月もいりませんよ。二週間くらいあれば七等呪位を狩れるようにします。もちろん、俺が付きっきりで、という条件がありますけどね。残りはサービスで強くしてやるって感じです」


 二軍もそこまでしてやってないし、三軍もそこまでしてやらない。七等呪位を狩れるようにしてやり、後は各々研鑽して強くなってもらう。まあ、二軍にも六等呪位狩りは経験させるつもりではいるけど。


 一条さんと一緒に来るもう一人の教官はサポーターのほうの教官らしい。一応、ホルダーということだ。


 期間中は事務所に一番近いマンスリーマンションを借りて住む。既に部屋は手配済みらしい。家具などすべて付いているのに、ホテルに泊まる値段の三分の一の値段で借りられる、得だ。


「それよりこの二人、未成年だが大丈夫だよな?」


「問題ない」


 何が問題ないのかよくわからない。水島顧問はわかっているのか?


「うちに来るということは間違いなく、ほかのホルダー連中より頭ひとつどころか、突出して強くなるんだぞ? こいつら全員、ホルダーの幹部候補生になるんじゃないのか? 防衛大出身者じゃなくてもいいのか?」


「……」


 水島顧問、目を泳がせている。言われて気づいたようだな。


 二人ほど十八歳と書かれている。明らかに高卒だ。残り三人は二十代前半だ。聞くと一人だけ防衛大卒者がいるそうだ。その人がこのチームのリーダーとなるみたいだ。


 高卒が幹部候補生になれるのか? まあ、俺には関係ないからいいか。


 今回来るのは男性隊員三人に女性隊員二人の構成。


「基礎教育訓練は済んでいる。ホルダーになることへの誓約書も書いている」


「馬鹿な奴らではないんだよな?」


「ホルダー管理対策室もそんな者を送ってこない……とは思う」


「馬鹿なら一度心をへし折るからな」


「ほどほどにな……」


 こちらの指示に従うなら問題ない。


 お客さんだし、俺も鬼じゃないからな普通に接してやる。


 普通にな。




猫(ΦωΦ) Ψ(ΦωΦ) Ψ(ΦωΦ) Ψ(ΦωΦ) Ψ(ΦωΦ) Ψ猫


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