227.ゾンビ集団三軍


「柊、アンクーシャを使え。天使エンジェルはけん制」


 俺は加速を使い瘴気の木人ミアズムウッディを蹴り飛ばす。


 昴を鑑定すると毒、麻痺、眩暈の複合状態になっている。これはなかなか厄介だ。柊がアンクーシャで隼人を復活させ、アンクーシャを隼人に渡して幸彦を回復させる。


 俺もプチ異常回復を使い昴を回復させBPもついでに回復させる。翼も幸彦にアンクーシャで回復してもらったようだ。


「映像を見て教えていただろう。ただ攻撃するのではなく、相手の動きもちゃんと見ろ。大技を出す時はたいてい何かしらのモーションをすることが多い。ゲームと同じだ」


 全員、ハッとした顔を見せ、思い出したか頷き返す。完全に忘れていたな、こいつら……。


 今ので、昴以外はアンクーシャが使えなくなったので、昴に持たせる。


「よし、そのことを踏まえて再開しろ」


 その後も何度も瘴気の木人ミアズムウッディの毒の息を喰らってもがき苦しみ、回復させてを繰り返し戦わせる。


「君は鬼か!?」


「そうか? こんなところで躓いていたら、この先やっていけないぞ。それに、あいつらも少しは頭を使い始めたから、動きがよくなってきている。言葉で理解する者もいれば、実際に実戦で体で学ばないと駄目な奴もいる。こいつらは後者だ」


 言って理解するような者なら、最初から頭を使い考えて戦っている。それができていない以上、体で学ぶ人間ということだ。人間、体で覚えたことは、そう忘れないからな。


「幼稚園のお遊戯会じゃないんだ、手取り足取りでなんかやってられるか。ここは言わば、命を懸けた戦場だぞ。死と生の狭間にいるという緊張感を途切れさせた時点で……」


 遠野さんに首を親指で引くモーションを見せる。


「今は俺がいるからそんなことはないが、いつまでもこいつらの引率をしているわけにはいかない。なるべく早く自立してもらわないと困る」


「君は、厳しいな……」


 現実を知らないから、そんな無責任な言葉が出てくる。


「厳しい? 笑わせる。遠野さん、あんたはクレシェンテ以外の組織の育て方を知っているのか? 言っとくが、うちくらい至れり尽くせりな育て方をしている組織なんてないからな」


「……」


 さて、おしゃべりはここまでだ、そろそろ三軍は限界に近い頃だろう。


 瘴気の木人ミアズムウッディに近寄っていき、隙を突いて内股でぶん投げ地面に叩きつける。足で口を押さえつけ指示を出す。


「押さえつけているから止めを刺せ」


 わらわらとゾンビのように寄ってきて、ボコ殴りが始まる。ジタバタと暴れ回る瘴気の木人ミアズムウッディ。こいつ意外と体力あるな。それでも、ボコ殴りに晒され黒い霧に変わっていく。


 三軍、全員地面にへばり付いて動かない。ただの屍のようだ。


「撤収準備をします」


「あ、あぁ……」


 俺と遠野さんで撮影機材を片付け終わり、三軍に帰るぞと声を掛ける。虚ろな目をしたゾンビどもが動き出す。


「どっかで飯を食っていくがなに食いたい?」


「「「「「ラーメン!」」」」」


 ビシッと整列して片手を上げ答える。立ち直り早ぇな!


 こういう時、赤星さんがいないのが困る。スマホで探そう。


 車に乗り込み検索。帰り道の九段下に塩ラーメンが評判なラーメンマイスターの店を発見。面倒なので独断と偏見で決定。反論は許さない。


 駐車場が無いようなので、近くのコインパーキングに停め入店。外観も内観もラーメン屋っぽくないな。元は違うお店だったのか?


 食券を最初に買うパターンのようだ。特製の貝だし塩ラーメンと炙りチャーシュー丼、餃子を頼む。大盛はないようで代わりに替え玉がある。


 まじ、半端なくスープが美味い。白蛤を使っているそうだが、凄いの一言。たまらず、替え玉を注文。結局、もう一度替え玉を注文した。追いスープがあればベストだったのにな。正直、炙りチャーシュー丼と餃子はいらなかった。ここはラーメンを食べる店だ! ちゃんと残さず食べたけどな。


 ほかのメンバーからも文句が出ないどころか、絶賛していたので当たりの店だった。


 クレシェンテの事務所に戻ると健志たちがまだいた。ちょうどいいので三軍を交えて話をしよう。


 かりんが足元に寄ってきたので、頭を撫でてやると嬉しそうに目を細め、TPを吸い始める。って結局、吸うんかい!


 ちょっとぐったりとして、会議室に移動し話を進める。


使役化生モンスターのカードの件はどうする?」


「……装備品の性能はどのくらい違うんすか? アニキ」


 陸の質問はごもっとも。まだ見せていなかったからな。手元のPCを操作して、サーバーから俺の作成したデータを呼び出す。もちろん、パスワードでロックされているので、パスワードを知らない者は見ることができないようにしている。


 モニターに映すと、感嘆の声が上がる。


「まじっすか!? こんなに違うの! アニキ!」


 魔術師系の装備はまだ無いが、そのうち出てくる。それでも、前衛の装備だけでも、七等呪位から出るものより倍くらい性能が違う。合成すれば大幅にパワーアップする。


「それにしても、ドロップする数が多いですね」


 朱珠さんや、そりゃそうだろうさ。瑞葵と麗華は二軍と同じくらいのドロップ率だが、俺のドロップ率は四倍を超えているんだぞ。


「これがハイランクキラーの恐ろしいところだ。この称号を育てない奴は馬鹿を見ることになる」


「最初に苦労しろってそういうことなんですね~」


 そういうことだ。葵くん。


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