216.実はブラックだった……

 世間は熱帯夜だというのに、ミニ雪だるまのおかげで快適に寝ることができる。いや、最弱でも寝るには寒いくらいなので毛布をかぶって寝ている。


 部屋のエアコン代わりにいいし、外に出る時に携帯扇風機代わりになる。夏の必需品だな。


 朝食は行きつけになったジャズ喫茶でモーニングを頼む。美味しいコーヒーにトーストとスクランブルエッグにサラダ付き。ジャズを聴きながらの至福の時間を過ごす。


 いつもの美味しいモーニングのお礼に、マスターにこないだ見つけたジャズのレコードを渡した。どうやら、すぐに廃版になったレコードなのだそうで泣いて喜んでいた。


 朝食を食べ終えコーヒーを楽しんだ後、事務所に向かったがまだ誰も出社していない。まずは聖獣の卵の様子をっと。あれ? 隣にあった聖結界の石がなくなっている。


 誰か持って帰ったのか? 空気清浄機の機能があるから使いたい気持ちはわかるけど、黙って持って帰るのはいけないことだ。後で確認しよう。


 卵に手を沿えるとTPがぐんぐん吸われていく。これはまたヤバいやつだ。お願いだから少しだけTP残して~って思ったら、TP10を残したところで吸われるのが止まった。


 もしかして、通じた? そうかそうか、ぎりぎりまでなら吸ってもいいぞ、そして大きくなれよ~。卵だけど。


 自分の個室で資料整理を行う。俺の知っている魔法や技の内容と使用TPを落としていく。ほかのメンバーたちにも協力を要請しているので、そのうちちゃんとまとめたものを渡すつもりだ。


 技のほうはまだ相殺できるかの検証ができていないが、資料的には有用なので書き出している。


 これがないと魔法を相殺する場合の、基本的なTP量がわからないから重要な資料となる。


 それよりだ、水島顧問の資料整理の進捗はどうなっているんだ? クレシェンテもホルダーが増えたから、早いところちゃんと確認したいのだが……。月山さんにせっついてもらおう。


 そうこうしていると、日中勤務のみなさんが出社してくる。三軍も来始めたな。少しだけ、月山さんと打ち合わせをして会社のクレジットカードを借り、スポーツ用品量販店に向かう。


 三軍には一時金として、この後三十万が振り込みされるそうだが、今はまだ金欠状態。なので、会社のクレジットカードで買い物。使ったお金は給料から天引きされる。


 しかし、こいつらの私服って……センスねぇな。背中に髑髏の黒と金色のジャージ、ヒョウ柄、白とオレンジのジャケット、全身真っ黒に金のアクセサリーがじゃらじゃら……。ジーパン、白のTシャツ、紺のジャケットの柊以外には近寄りたくない。というより、同類には見られたくない。


 もう、服装は今更どうしようもない。まずは、髪を切らせるか、ヤンキー頭だったから整髪料がない状態だと落ち武者みたいだ。柊以外な。


 新宿だと理容室を探すよりメンズ美容室を探したほうが早い。道すがらスマホで調べて大きな店に予約を入れ向かう。四人同時にやってもらうためだ。


 俺と柊は店で淹れてくれたコーヒーを飲みながら待つ。その間に柊と世間話などをして柊のことを聞いてみる。


 柊は四人家族で上に姉がいるそうだ。高校卒業後、デザインの専門学校に通い卒業。フリーのイラストレーターをしていたみたいだ。将来は作画作家や漫画家になりたかったらしい。


 今後、経験する非現実なホルダー社会を漫画にすればいいんじゃね? って言ったら、問題ないですかね? って返された。どうなんだろう? 今度、沢木管理官に聞いてみるか?


 四十分ほどで、ヤンキー四人組のカットシャンプーが終わった。まあ、落ち武者よりは見れるようになったな。ヤンキーからチーマーにチェンジしたって感じだ。服装はダサいままだが。


 スポーツ用品量販店で一通り買い揃える。今まではこういうことを経験したことがないからか、はしゃぎまくっていた。正直、恥ずかしい。


 もうすぐ、昼時なので何が食いたいか聞くと、ピザと返ってきた。ジャンクフードが似合いすぎの連中だ。ピザ、嫌いじゃないぞ?


 事務所に電話して食べるか聞くと、食べると回答。持ち帰り半額のピザ屋に向かい、別種類のLサイズ六枚とサイドメニューをこれでもかと買ったら、1.5Lペットボトルのコーラ四本をおまけしてくれた。ラッキーだ。


「か、買ってきたわね……」


 確かに、俺も買いすぎた気はする。が、ヤンキー四人組が食うと言って聞かなかった。まあ、日中勤務組三人に水島顧問、俺と三軍で十人いる。なんとか食えるか?


 わいわいがやがやと楽しくランチをしていると、瑞葵と麗華、二軍連中もやってきて、ピザを食べ始める。お前ら昼飯は食ってきたんじゃないの? この後、フィットネスクラブに行って運動するのに大丈夫なのか?


 目を逸らしたな、こいつら。まあ、いいけど。


 新しいサポート要員の男性は十五時くらいに来るそうだ。ちょうどフィットネスクラブが終わった頃になる。


 フィットネスクラブに着き、三軍の会員証を作り渡すと大はしゃぎ。はしゃいでいられるのも今の内だ。すぐにここへ来たことを後悔する羽目になる。


 案の定、ヤンキー四人組がトレーニング途中に逃げ出そうとしたので、各々、ギブと言うまで締め技を喰らわせてやった。逃げることは許されないのだ。


 トレーニング終了後にヨガをやるが、俺はヨガが合わないのでパスしてプールで泳ぐことにした。二軍からブーイングが飛んできたが無視。お前たちは精神修行も兼ねているからちゃんとやれ! 俺は体力増強に主軸を置く。


 ちなみに三軍はブーイングを行う余力もないくらいへばっている。


 すべて終了後、全員がヘトヘト状態で事務所に戻り、各自待機室や空いている会議室で夜の狩りまで体力回復に努める。瑞葵と麗華は専用の個室があるからそちらで休むようだ。って、新しいサポート要員との打ち合わせには出ないんかい! 特に麗華は所長だろう!


「すまない。さすがに疲れた。恢斗に任せる」


「よろ~、ですわ」


 くっ、こいつらぁ。俺だって疲れているんだぞ!


 クレシェンテはホワイトな会社だったはずだろう!


 どう考えてもブラックすぎるぞ!





猫(ΦωΦ) Ψ(ΦωΦ) Ψ(ΦωΦ) Ψ(ΦωΦ) Ψ(ΦωΦ) Ψ猫


秋の夜長の読書に最適な長編現代ファンタジー。

月読様の子孫が現代で頑張るお話。

お供は猫又と埴輪!?


スメラミクニラビリンス~月読命に加護をもらいましたがうさぎ師匠には敵いません~



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